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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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事後報告サプライズ

そして翌朝。


「さあて、じゃおじちゃんのお店に行きましょうかフレドちゃ」

「よう、姉ちゃんおはよう。」

「へ?」


トモキに向けたオモシロ顔のまま、ディナは俺の声に固まった。

見開いた目がこっちに向くと、更に面白い面相になる。


「…トラン?」

「迎えに来たぜ。」

「いや何で…と言うか…」


目が泳いでる。気持ちは分かる。

家の前で俺が待っていたという事も含めて、目の前の光景への理解が

全然追いついていないんだろうな。そりゃ無理もない。


たっぷり十秒後。


「…あなた、免許取ったの?」

「取ったよ。」


そっからか。


「車買ったの?」

「買った。中古だけど。」

「い、いつの間に?」

「まだ何日も経ってないよ。」

「………」


アレコレ必死で考えているディナの腕の中のトモキは、いつも通りの

涼しい顔。その対比がシュールだ。まあそっちは全部知ってるからな。

とは言え、このままだといつまでも話が進まない。


「とりあえず乗ってくれよ。店まで送るから。」

「え?だ、大丈夫?」

「すぐそこだ。心配するな。」


そう即答すると、ディナはようやく助手席のドアを開けて乗り込んだ。

爆弾みたいに抱えている、トモキの窮屈そうな顔がじわじわ来る。


「運転できるんだよね?」

「できなきゃ来ないだろ。」

「まあ…うん…それじゃ、安全運転でよろしく。」

「了解しました。」


さすがに俺も、もう運転にもかなり慣れた。

と言うか、今の時点で慣れてないと困るって話だよ。



さあ、とりあえず店に行こうか。


================================


ディナの家から店まで、自動車ならほんの数分で着ける。

物珍しそうなディナに、あれこれと話す間はなかった。あっという間に

店の前に到着。


「んじゃ、先に入っててくれ。俺はこいつを繋いでくるから。」

「繋ぐって…」

「いいからいいから。」


急き立てて、強引に二人を下ろす。なおも訝しげなディナは、それでも

言われた通り入口に向かう。それを見届け、俺は小さく息をついた。


さて、ここからが本題だ。



どっちに転ぶだろうな。


================================

================================


チリリン!


「おはようございまあす!」

「!?」


見事に四人の声が揃った。

気もそぞろな態でに店に入ってきたディナお義姉さん、ビックリ顔。

そりゃそうだろうね。トラン含めて連続サプライズだから。


「ちょ、何!?」

「お待ちしてました。」

「いやあの…どういう状況?ってかこの人たち…誰?」

「うちの新人です。」

「え!?」


見開かれた目が、あたしとポーニーの隣に立つ二人の女性を凝視する。

もちろん、モリエナとランドレだ。ちなみに今日の日を迎えるに至り、

「〝さん〝はもういりません」と、ランドレ自身がはっきりと告げた。


そう、新しい店員なんですよ。


「えっとその…どういう…」


チリリン!


「まあ、色々あってな。」


遅れて入ってきたトランが、どこか面白そうな表情でそう言い放つ。

ああ、お義姉さんのリアクションをちょっと楽しんでる感じだな。

感心しないけどまあいいや。正直、あたしもちょっと楽しんでるし。


「今日からしばらく、彼女たち三人でこの店を回していってもらう。」

「ええっ!?」

「あ、それと後見人としてあっちのあの人も参加する。」

「はあ!?」


矢継ぎ早過ぎる情報に、お義姉さん完全にパンク気味。そりゃそうだ。

そんな中、座っていたペイズドさんがゆっくり立ち上がって挨拶する。


「突然で申し訳ありません。」

「え!?いやあの………あれ?」


混乱していたお義姉さんが、そこでふとペイズドさんの顔を見据えた。


「…確か前にどこかでお会いした…と言うか、見覚えが……………」

「爆弾騒ぎの時の人だよ。」

「ああっそうだ思い出した!!」


トモキを抱えたままリアクションを繰り返すお義姉さん。危ないなあ。

もちろんトモキが泣き出すなんて事ないんだけど。

とは言え、トランが予想した通り、お義姉さんはきっちり憶えていた。

まあ職業柄、こういう事件に関する記憶は確かだろうからね。

憶えているというのは好都合だ。


「色々と縁があったんだよ。んで、手伝ってもらう事になった。」

「つまり通いで?」

「いや、住み込みで。」

「えっ!?」


何度目だろう、目を見開くの。


「住み込みって、ここで!?」

「そう。」

「どこにそんなスペースがあるっていうのよ!あなたたち二人が…」

「俺たちはしばらく留守にする。」

「へっ!?」


「そういう事なんです。」


ついに絶句したお義姉さんに、次はあたしから宣言する。


「今日から、移動店舗であちこちを回りながら商売する事にしました。

で、この本店は四人に任せます。」

「ちょ、ちょっと待ってよ。そんな話を急にされても…」

「信用できる人たちです。なので、フレドちゃんも引き続きこちらで

お預かり出来ます。ご心配なく。」

「えええぇぇー…」


もう頭の処理能力を超えてしまっているらしく、お義姉さんはまともな

返答も出来ずオロオロするばかり。心中、すっごくお察し致します。


何もかも事後報告みたいになって、誠に申し訳ございません。だけど、

やっぱり途中で伝えるという訳にはいかなかったんです。何と言っても

かなり馬鹿げた話だから。そして、反対されるのも目に見えてたから。


馬鹿げているからこそ、可能な限り現実的な問題は先に片付けました。

かなり規格外な援助はあったけど、それでも堅実な準備を重ねました。

反論の余地を封じるみたいな方法になってすみません。だけどあたしは

己のミスを挽回してトモキを、いやフレドをちゃんと元に戻したい。

説明できないのは歯痒い限りです。こればかりは本当にすみません。


さあて。



出発前に、全力の説得タイムだ。

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