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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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ミロスの予見

本気で言ってるの?


残念ながらね。


それって、予知か何か?


自分では分からない。

けど、そういうものかも知れない…という確信はある。


だったら…


何をすべきだと思う?


分からない。

だけど…

…………………………

出来るだけの事をしておけばいい。


ただ、それだけの話よ。


ありがと、タカネ。

でもね。


なに?


…この事は、あたしとあなただけの秘密にして欲しい。

タマキにも言わないで。


は!?

ちょっと待ってよ。

つまり、純にも言うなって事?


そう。


母親なのよ?

自分の子供の運命なのよ!?


無茶を言ってるのは分かってる。

言うべきだって事もね。


じゃあ、どうしてよ。


確実と言えないから…っていうのも確かにある。

いくら何でも根拠が乏しいからね。


だけど、あなた自身は確信を持っているんでしょ?


ええ。

いつになるかは全く判らないけど、トモキはタマキと同じ運命を辿る。

その予見は、疑う気になれない。


だったら!


ねえ、タカネ。

もしそれが本当だとして、これからどうすべきだと思う?

いつになるか判らない「その日」に怯えて、彼にベッタリつきっきりで

守り続けるの?


…それは…


あなたなら、それも可能でしょう。

かつて、タクミをずっと守り続けたあなたならね。

だけど、同じ事をトモキにまでするのは何か違うんじゃない?


どう違うのよ。


あなたとタクミは、間違いなく己の意志であたしたちの世界に来た。

何があるかも分からない新世界に、2863年という歳月をかけてね。

正気の沙汰じゃないと今も思うし、実際かなりハードだったでしょ?


まあ、確かに。

…その拓美は、今この瞬間も宇宙を旅してるわけだからね。


そう。

言っちゃ何だけど、あなたたち二人は普通とは程遠い存在だった。

そういう存在だからこそ、あなたが彼女を守るのは必然で当然だった。

だけど、トモキは違う。

この世界に生まれたタクミと同じ、当たり前の子供でしかないのよ。

あなたという存在がいつも傍にいる環境は、とても健全とは言えない。

いくらこっちのタクミの従兄弟だと言っても、彼はタクミじゃない。


だから何も言うなっての?


そうよ。

それがもし「運命」と呼ぶべき事象だとすれば、受け入れるのも選択。

少なくとも、今この時点でタマキや純に言うべきじゃないと思ってる。

本人を含めて、いつ来るか知れない運命に怯えるのは不幸だから。


…………………………


言いたい事は分かるけどさ。

じゃあ、さっきの質問は何よ。

何をすべきだと思うかを、どうしてあたしに問うたの?

運命を受け入れるべきと思うなら、あたしにも黙ってるはずでしょ。

どうして、あたしだけに?


あなたしかいないからよ。

かつてあなたとタクミは、タマキの死の運命を力ずくで覆してくれた。

シュニーホの仲間の力を結集して、この世界まで一緒に来てくれた。

あたしが殺してしまったタマキを、奇跡を超える力で救ってくれた。


それはあなたも同じでしょ。

元いた世界を捨ててまで、あなたは環の命を選んだ。拓美もあたしも、

その意気に応えたってだけの話よ。それにあたしたちは、自分自身を

増やす事だって出来たんだし。


そうよね。

向こうの世界にも、あなたと拓美は存在している。ずいぶん経つけど、

未だにその事実は完全に理解してはいないと思う。こんな事を言うと、

ラノベ作家失格なんだけどね。


でもね。

「あなたしかいない」というのは、あの時の経験あってこその話よ。

もう、あの時のタクミはいない。

だったら、頼れるのはあなただけ。

お願い、タカネ。


どういうお願い?


あの時と同じよ。

この子の、トモキの運命を、あの時と同じように後から覆して欲しい。

無茶な願いなのは分かってるけど。

あなたなら可能だと信じてるから。


…………………………


はぁ。

しょうがないなあ本当に。

ま、やるだけやってみるけど。



期待しないでよ?



================================

================================


「つまりその…ミロスさんって方の予言を信じて、プログラムに変えた

自分自身をフレドに憶えさせたって事なんですか。」

「そういう事。」

「どうやって?」

「まあ、そこは深く訊かないで。」

『ええぇ…』


最後に言葉を濁したタカネさんに、フレドは不安げな声を上げる。

うん、気持ちは痛いほど分かるぞ。


あれから俺たちは、タカネさんから事のあらましを聞いていた。

とりあえず危険な存在ではなさそうだし、ローナもそれでいいらしい。

と言うか、彼女が一番興味津々だ。


かいつまんだ説明ではあったけど、それでもその内容は壮大過ぎた。

でも、彼女がここにいる理由自体は至って単純明快だ。


フレドこと荒野友樹君を、どうにかして救う。

「救う」というのがどういう結末を意味しているのかは、今は不明だ。

正直な話、プログラムとしての自分が現出したのも奇跡に近いらしい。


そりゃそうだ。


そもそも、俺たちが生きるこの世界に「プログラム」は存在しない。

もっと未来になれば開発されるかも知れないし、あるいは誰かの天恵が

それを「異界の知」としてもたらす事もあり得なくはない。とは言え、

どっちもすぐには無理だ。と言うか多分、フレドの存命中は無理だ。


ここにローナがいたという事実と、彼女が異世界のテクノロジーである

ノートパソコンを常に愛用している事実。それがこの奇跡を呼んだ。

そもそも、ネミルが不用意な天恵の宣告をしなければ、こんな事態には

絶対にならなかったのである。


「とんでもねえな、実際。」


思わずそう呟いてしまった。けど、不思議なほど負の感情はなかった。


ネミルが何もしなければ。

ディナがネミルに、余計な事を依頼しなければ。

少なくとも、友樹君もタカネさんもここに来る事はなかった。


だけど。


どっちが良かったのかについては、今の時点で明確な答えなど出ない。

いや、もはや可能性の世界に関してあれこれ推測しても意味がない。

「死に戻り」の起こした出来事が、記憶の中にしかないのと同じだ。

だったらもう、俺たちのすべき事ははっきりしている。


フレド、もとい友樹君を救う。


きっかけはまるっきり違うものの、タカネさんの目的もほぼ同じだ。

確かにネミルのミスが招いた事ではある。だが、結末はまだまだ遠い。



だったら前向きに行こうぜ。

「フレド・カーラルの中の人」以降のエピソード展開は、当方の前々作

「骨身を惜しまず、挑め新世界!!」とのクロスオーバーになります。


タカネを始めとするキャラクターはこちらの作品に登場しますので、

よろしければ併せてお読み下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 他の方々もご覧になっている事から一読者の立場ならではの(?)コメントを残します。 当話の前半部分および前話のエピソード242、これだけじゃ異世界についてあまりピンと来ないかもですが、今回出…
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