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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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そして得た答えとは

考えてみれば、これが初めてか。

店を開いてそこそこ経ったけれど、それだけにちょっと感慨がある。

ある意味、ホッとしてる。


もちろん、平穏なのが一番だけど。

それでも爺ちゃんから受け継いで、あんな指輪まで託されたんだ。

ネミルが神託師として誰かの天恵を見るってのは、悪い事じゃない。

それも込みで、俺はこいつと一緒に生きていきたいんだから。


大丈夫。

どんな結果になったとしても、この親子ならきっと受け入れられる。

受け入れた上で、きっとまた新しい生き方を一緒に探せるはずだ。

…だからお前は、自分の力を信じて神託師の務めを果たせ。


ネミルの瞳の光が収束し、見覚えのある小さな一点になった。おそらく

今の時点で天恵は文字となっているはずだ。今日までに二度見たけど、

やっぱり何か不思議な感じがする。この瞬間、ネミルだけが天恵を…


何だその顔。

驚いてるのか笑いを堪えてるのか、とにかく変な顔をしてる。…正直、

あんまり場に似つかわしくないぞ。一体全体、どんな天恵を見てんだ?

セルバスさんもロナンさんも微妙な顔になってる。唯一人、当人である

シュリオさんだけが平然とネミルの天恵宣告を待っていた。


しばしの沈黙ののち。


「シュリオ・ガンナーさん。」


前の時より明るい口調で、ネミルが告げた。


「あなたの天恵は【騎士】です。」


…え?


================================


疑問もツッコミも何も、挟む間などなかった。


キュイィン!!


憶えのある高い音と共に光が満ち、シュリオさんの目の前に白い文字が

輝きを放って浮かび上がる。それは紛れもなく「騎士」と読めた。


「えっ」

「ちょ、騎士って…!?」


シュバッ!!


言い放たれた天恵は、戸惑う者たちを待ってなどくれない。形の崩れた

文字は、まるでシュリオさんの体に吸い込まれるかのようにぶつかり、

パッと散った。いつもながら、実に最後は呆気ない。呆気ないからこそ

誰も沈黙を破れない。気まずいとは少し違う、独特の間だった。


そして。


「…僕の天恵が、騎士?」


沈黙を破ったのは、さっきまでとは別人のようなシュリオさんだった。


「僕…って、あなたまさか。」

「シュリオ兄ちゃん?」


「母さん。それにロナン…ええと、どこまでが本当だっけ?」


何だ何だ。どういう状況なんだよ。

天恵の宣告を受けた事が、どうして洗脳を解いたみたいになってんだ?

正気に戻ったって言うのなら、俺の天恵を感知した話はどうなった?


「…まあ、いいじゃない!」


その言葉と共に笑い、セルバスさんはシュリオさんを抱きしめた。

ロナンさんも、負けじと反対側から抱き着く。


俺とネミルは、顔を見合わすばかりだった。



最後まで、本当にどうなってんだ。


================================


「じゃあ、お世話になりました。」

「ごちそうさまでしたー!」

「ご面倒をおかけしました。」


すでに夕方になっていた。

完全に憑きものが落ちてしまった、シュリオさんが深々と頭を下げる。

散々振り回されたけど、それはもう言いっこなしだ。俺もネミルも、

笑顔で答える。


「いえいえ。また機会があったら、是非ご来店ください。」

「ありがとう。」

「今度は違うケーキ食べに来ます。よろしくね!」


神妙に頷くシュリオさんとは対照的に、ロナンさんは元気一杯だった。

何だかんだ言っても、従者としての日々は楽しかったんだろうな。


何度か振り返りつつ、ガンナー家のお騒がせ親子は去っていった。

厄介なものを残して。


「…さて、どうするかなこれ。」

「店に飾る?」


振り返って見るのは、シュリオさんが着込んでいたあの鎧。

すっかり正気に戻ったらしい彼は、もはやそんな大層なものを着るなど

考えられない…といった態だった。いや、それで置いていくってか!?


「家伝の品じゃないんですか?」

「いえいえ。きちんと専門の職人に頼んで作らせたものです。ちょっと

高かったけど、もう使う機会も多分ないでしょうし。」

「………………」

「邪魔なら処分して頂いても一向にかまいません。費用も持ちます。」

「…はあ。」


正直、置いていかれたらものすごく困る。使い道なんか何ひとつない。

いい加減にしてくれ!と言いたい。

だけど、俺もネミルも言わないまま三人を見送った。それでよかった。


正気を取り戻したシュリオさんは、想像したとおりの人物だった。

散々振り回されはしたけど、何だか面白かったのもまた事実だ。なら、

このくらいの事は呑み込もう。


「しばらく飾っとこう。もし何ならトーリヌスさんに引き取ってもらう

選択もアリだろうし。」

「そうだね。」


ネミルも食い下がらなかった。

とんだ置き土産だけど、今日ここで成した事を思えば些細な事だ。

何と言うか、けっこうインパクトのある飾りになるかも知れないな。


ま、いいか。


================================


「シュリオさん、これから何をする事になるんだろうね。」

「さあな。見当もつかない。」


後片付けをしながら、俺とネミルはそんな事を語り合う。


最後まで、予想外の連続だった。

まさかシュリオさんの天恵が本当に「騎士」だったとは。ぶっちゃけ、

こっちがペテンにかけられたような気さえする結末だ。

でもまあ、悪くはない。悪くはないけど、これから先の事は余計に、

俺たちなんかに分かるわけがない。


「まあ、あの人たちなら大丈夫。」

「だね。」


…少なくとも、俺たちの出す答えはこんな感じでいいはずだろう。

それよりもっと気になる事がある。


「結局、そのペテン師の言った事は正しかったって話だよな。」

「信じられないけど、そんな偶然はさすがに起こらないよね。」


当然だ。

たまたま告げたデタラメな天恵が、実は真実だった…などという偶然、

起こってたまるか。…だとすれば、そのペテン師は何らかの方法を使い

シュリオさんの天恵を見たって事になる。だけど神託師じゃないから、

告げても天恵の宣告を受けた事にはならなかった。ややこしいけれど、

それが実際に起きた事なんだろう。

虚偽宣告じゃなかったから、罪状は軽くなるのか。面倒臭いな本当に。


誰なんだよ、そんな中途半端な事をするペテン師ってのは。

ややこしい事態を作るんじゃねえと文句を言いたくなる。いや、むしろ

もう二度と関わりを持ちたくない。頼むからここには来るなよ本当に。


「ま、今日はとっとと閉めよう。」

「おなか空いたぁ…!」


やれやれ、実に大変な一日だった。

鍵をかける前にちょっと外に出て、二人で並んで空を仰いだ。

気の早い一番星が、小さく瞬くのが見える。



明日も晴れそうだった。

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