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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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魔核の可能性

「これが限界か、ウルスケス?」

「ええ。」

「なるほどな…」


さすがにマッケナー先生は、不満と不信を隠し切れていなかった。

もちろん、あたしが生成した魔核が小さ過ぎるのが最大の理由だろう。

まだ詳しく聞いてないけど、先生の目的を果たすのに、この大きさでは

足りないんだろうと思う。サイズで言えば、レンネに渡した餞別よりも

二回りほど小さいからなあ。


また、あたしが口にしてる「限界」を全面的には信じてない…ってのも

態度で判る。出し惜しみしてるのにそこそこ勘付いているんだろうと。

正直、あたしはそこまで上手な嘘をつける自信がない。最初からない。

分かってて見逃されてるんだろう、というのも十分に自覚している。


だから何?


嘘をついてるのは事実だし、それで先生に迷惑がかかっているってのも

まあ事実なんだろうなと思う。早くもっと大きな魔核を生成してくれと

言いたげな表情は、あたしに対する先生のお決まりになりつつある。

だけど、それはお互いさまだろう。

先生も他の人たちも認めてたけど、あたしに声がかかったのは最初から

天恵の内容を知られていたからだ。見方を変えればプライバシー侵害。

なに勝手に覗き見てんだと、文句を言う資格はあたしにもあるはずだ。


今さらそれを声高に責める気なんかない。お互いさまなんだから。

だけど少なくとも、あたしは自分の天恵をもっと深く知っておきたい。

自分だけに授けられた力とすれば、それはごく当たり前の権利だろう。

知った上で、納得した上での話なら協力は惜しまないつもりだ。



だから、もうちょっと待ってて。


================================


魔鎧屍兵、だっけ。

マッケナー先生が作った異界の知の結晶。概要だけは既に聞いている。

どんな兵士にも軍隊にも勝るという駆動兵器。何だか浪漫溢れる話だ。

いい歳して何言ってんだとも思ったけど、冗談とかではないらしい。


そしてその中枢部に、あたしの生成する魔核が絶対に必要なんだとか。

実物を見せてくれと言ってみたら、完成してからでないとと断られた。

まあそれは分かるし無理もないか。だからあたしが協力しない限りは、

その魔鎧屍兵ってのは完成しない。他は全て出来てるらしいんだけど。


求められるサイズは、今すぐにでも生成できる。いたって簡単な話だ。

だけどあたしはどうしても、先生や教団の人たちが求めるのとは別の

価値が欲しかった。自分の天恵を、他人に全て定義されてしまうのは

どうしても嫌だったのである。



天恵に呪われるって、もしかするとこういう事なのかも知れないな。


================================


あたしはまだまだ子供だけど、学園では奨学金を取れる実力者だった。

たとえ専門外であっても、そこそこ理論立てて検証する事はできる。


魔鎧屍兵の起動に必須という事は、何かしらのエネルギーの結晶だ。

名前からすると魔力か何かだろう。魔力って概念自体、数千年以上前に

衰退してしまっているらしいけど。あたしは時代遅れって事なのかな。


古代の歴史書や石板などを見ると、確かに魔獣は存在していたらしい。

今の時代ではもう完全に滅びたか、いたとしても幻レベルなんだろう。

その力の結晶だとすれば、何かしら他の使い方があるはずだ。かつて、

同じ天恵を得た人もそう考え、検証したのではないかと考えてみた。


ハッキリ言って、マッケナー先生のやっている事は少しチート気味だ。

異界の知をどうやって得たのかは、直接訊いても答えてくれなかった。

だけど多分、教団幹部の誰かしらがそういう力を持ってるんだと思う。

だからこそ、魔鎧屍兵に必要なのがあたしの魔核だと確信してるんだ。

別にそれを責める気はない。けど、探究者としてはどうなのかと思う。

少なくともあたしは、そんな感じの近道やズルをしたいとは思わない。

未知の天恵を得たなら、自分なりのやり方で深く知りたいと思うだけ。


だから、自分でできる範囲の検証をやってみる事にする。



そう、生物実験だ。


================================


結晶とは言っても、魔核はそれほど硬い代物じゃない。叩けば割れる。

おそらく、嚙み砕ける動物なんかは肉食・草食を問わずいるだろう。

ならばもう、実際にやってみるのが一番の近道だ。


現状、あたしはこの街から遠出する許可をもらっていない。その一方、

街の中ならほぼ自由に行動できる。お金も支給され、買い物もできる。

ここでなら、初期段階の検証くらいすぐに出来るはずだ。


方法はいたって簡単。

粉末状にまで砕いた魔核を、穀類や骨粉に混ぜて動物に食べさせる。

そして起こる変化を観察する。まあ何も起こらない可能性もあるけど、

それならそれで納得できるだろう。あたしは別に劇的な結果が欲しいと

切望してるわけじゃない。ただ単に自分の天恵を知りたいってだけだ。

ついこの間まで学校で勉強していた身なんだから、こういった探究心は

大目に見て欲しい。


さあてと。



まずは、ネズミあたりでやるか。

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