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機神冒険活劇<カリュプス プロヴォカーレ> 第二部 巨獣たちの楽園編  作者: 九傷


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第31話 シャルの推理①



 龍の国は、世界地図上の最東端に位置する小さな島国だ。

 距離的には今俺達がいるメリダ王国とそう遠くはないが、島国であるため国を出るには海を渡る必要がある。

 つまり、トールが本当に龍の国出身なのであれば、何らかの方法で海を渡ってきたということだ。

 ……しかし、そんな真似はただの民間人にできることではない。


 大陸のように地続きであれば民間人でも自力で国境を越えることは不可能じゃないが、島国の場合は必ず飛行機や船などを利用する必要がある。

 近年は海外旅行も一般的になりつつあるが、未だに一部の国では資産や身分など、ある程度条件が揃わなければ国外に出ることは難しい。


 しかも龍の国は、10年ほど前まで国交を閉ざしていた――つまり鎖国(・・)していたのである。

 現在は開国こそしているが、国交には未だ厳しい制限があるため民間人の出入国は許されていないハズだ。

 となると――



「……亡命か」



 出国を禁じられている状況で、それでもこうして国外で生活しているのであれば、亡命以外は考えられない。

 犯罪組織やスパイなどが、なんらかの手段で国外に渡り潜伏しているという可能性もなくはないが、だとしたら今のこの状況はあまりにもお粗末過ぎる。

 トールの年齢や生活、そして開拓者として正式に登録されていることからも、その可能性は限りなく低いだろう。



「厳密には、亡命してきたのはミカド・トウセン。恐らく、トールの父親よ」


「っ!? な、何故それを!?」



 スミヤが驚愕の表情を浮かべると同時に、トールの体が強張る。

 しかし、それが行動となる前に素早く銃口を向け、動きを制した。



「動くな」


「ちょ、ちょっと!? いきなり銃を抜くとか物騒よ!?」


「制圧用のテーザー銃だ。それよりも、言葉には気を付けろシャル。最悪、死んでいたぞ?」


「……そ、そうね。興奮し過ぎて、ちょっと話の順序を間違えたわ。注意する」



 話の内容については聞いていないが、万が一の場合シャルの身を守るという取り決めは事前にしていた。

 ただ、万が一と言っていたように、シャルとしてはそんなことにはならないという算段だったのだろう。

 つまり口封じが必要な状況にするつもりはなかったのだろうが、どうやら興が乗り過ぎて話の順序を間違えたらしい。

 なんとも危なっかしいことだ……



「え~っと、まず勘違いしないで欲しいのだけど、別に私はトール達の情報を吹聴したり売ったりするつもりはないわ。というか、私はあくまでも公開情報から推理しただけだから確証を得ているワケじゃないし、そもそも機密情報でも何でもないんだから情報としての価値なんて無いに等しいのよ」



 そうは言うが、誰しもがシャルのように断片的な情報から答えを導き出せるワケではない。

 スミヤやトールからすれば、秘密を暴かれたような気になっても無理はないだろう。



「要するに、少し調べれば誰でも得られる情報ってこと。それはつまり、今トールが無事な時点で追手(・・)なんかの心配はないってことでもある」


「……シャルロットさん、貴女という方は、一体どこまで――」


「言ったでしょ? ただの推理よ」


「……シャル、ただの推理と言うが俺達とシャルとでは前提となる知識に差があるんだ。簡単にで構わんからその推理に至った解説をしてくれ」



 正直誰もができる推理とは思わないが、仮にそうだとしても前提となる情報がなければ同じ答えにはたどり着けない。

 計算などで過程をすっ飛ばして答えを教えられるようなものなので、説明するのであればもう少し情報を開示して欲しい。



「もちろんそのつもりだけど、私も情報を得た順序がバラバラだからどこから説明すべきが迷っているのよね……」


「理解できるかはわからないが、ひとまず順番に説明してくれ。警戒されている状態では得られる回答も得られないぞ」


「……そうだったわね」



 尋問については俺に一日の長があるため、シャルには事前に簡単なセオリーを説明済みである。

 その際になるべく警戒心を与えないよう伝えていたのだが、先ほど話の順序を間違えた際に一緒に頭からトんでいたようだ。



「多分トールも気付いていたと思うけど、私達は最初からアンタのことを怪しんでいたわ。得体の知れないデウスマキナに、異様なほど優れた操縦技術――こんなの怪しむなって言う方が無理な話よ」



 直接的に大蜘蛛の正体と結びつけられるワケではないが、トールの存在はこの村の中で明らかに浮き出ていた。

 トールも怪しまれていたことには気付いていたからこそ操縦が下手なように演じていたようだが、その演技はあまりにも稚拙だった。

 恐らく、この依頼を受けた他の開拓者も警戒自体はしていたハズである。



「ただ、ネットや書籍で調べても【土蜘蛛】の情報は一切出てこなかった。私が調べても見つからないんだから、まず間違いなく他の開拓者もお手上げだったでしょうね」



 ついつい忘れがちになるが、シャルはれっきとした貴族の令嬢である。

 貴族には独自の情報網があるらしいが、その情報網を駆使しても見つからなかったのであれば、確かに普通の方法で情報を得るのは難しいだろう。



「でも逆に言えば、ここまで情報が見つからないこと自体が異常なのよ。それを踏まえると自然と候補は絞り込まれる」


「……なるほど、それで龍の国か」


「そういうこと」



 龍の国は鎖国されていたこともあり、国の情報が極端に少ない。

 開国されてからも断片的な情報しか入ってこないため、どこまで文明が進んでるかすらもあまり知られていないくらいだ。

 しかし、その断片的な情報の中には未踏領域が存在することが含まれている。


 そして未踏領域があるということは――、デウスマキナが存在する可能性が高いということだ。




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