二話: 椿の花に埋もれて
しばらく更新しなかった上に短いです。
すみません・・・
「名前は何が良いかしら」
外に待たせてあった車に乗り込むなり、カメリアと名乗ったわたしの新しい飼い主は
そう言った。
わたしは、さっき買われた人間。名前はまだない。
カメリアは相当なお嬢様らしく、言葉も基本的に丁寧。この運転手もクルンスト家専用の
運転手の一人だそうだ。
「なにか私に関係のある名前が良いわ」
カメリアはかなり上機嫌。自分専用の人間がいるということよりも新しい「友達」が
できたことがひたすらうれしいみたいだ。そういう子は学校でいじめられやすいよ?
「{カメリア}に関係する言葉・・・」
つぶやくと、
「ええ。何が良いかしら?」と体をこっちに向けてにっこり笑った。
「{カメリア}・・・{カメリア}って・・・確か・・・」
考えていると、カメリアのほうも何かいろいろと言葉をつぶやいている。
「花の名前が良いわ・・・」
その言葉で思い出した。
「{カメリア}・・・椿か!」
わたしのいきなりの大声で一瞬びっくりした顔をしたあと、カメリアは首をかしげた。
「どうしたの?」
「『ツバキ』がいいよ」
「『ツバキ』?」
「日本語でカメリアのこと。これなら、あんたに関係ある名前だろ?」
カメリアは微笑んで、ツバキ、と繰り返す。
「いい名前ね。よろしく、ツバキ」
名前を、呼ばれた。
わたしは今まで飼い主に奴隷として扱われ、名前なんてろくに呼ばれなかった。
呼んだとしても愛情のこもっていない呼び方だった。
それを、カメリアは・・・いや、カメリアお嬢様はあっさりと呼ぶ。
それが嬉しくて、
「よろしくお願いします」
と頭を下げた。