仲間(仮)
街に戻ると、辺りは静まり返っていた。
さつきまでの騒がしさが嘘のようだ。
(怪我人はどこにいったんだ?)
街の中心まで歩いていくと、人が溜まっている場所を見つけた。
そこは広場のような場所で、道が石畳なのに対し、広場は芝生になっているようだった。
ざっと見た感じ、200人近くの人がいた。
近くの建物の陰に移動して、聞き耳をたてる。
「さっきの人死んだんじゃ……」
「出る方法考えないと……」
「人のステータス見れねえじゃん……」
「ただのドッキリかなんかだろ……」
なんとも頭の悪そうな会話ばかりが聞こえる。
というか、ゲーマーってみんな陰キャなんじゃないの?
なんで知らない人と話せる関係になってんの?
「裏切り者が」
思わず声が出てしまった。
もちろん自分にしか聞こえない声量で。
すると、後ろから声をかけられた。
「すみません。少しいいですか?」
振り向くと、そこには男と女の子がいた。
男の方は、黒髪で高身長、いわゆる爽やかイケメンだ。
女の子の方は、男とは対象的で、白髪で低身長、妹みたいな可愛さがある子だ。
少し間を置いてから、男が話しだす。
「どうやってモンスターを倒したんですか?」
背筋が凍るような緊張が走る。
尾行でもしていなければ分からないはずだが、このゲームが始まってから、そんな余裕は無かったはずだ。
すると、男は慌てて説明を始める。
「見ていたとかそういうのではなく、ユニークスキルで分かるだけです。」
「ユニークスキル?」
「ええ。僕のユニークスキルは『プロビデンスの目』といって、人の倒したモンスターとプレイヤーの数がわかるんです。」
それなら聞いてみたいことがある。
「俺の他にモンスター倒してた人っていましたか?」
すると、男は辺りを見渡し、
「あなた以外はいないみたいです。」
と、返答した。
案外使えそうなスキルだな。
戦闘では使えないけど。
「でも、ユニークスキルの事、俺に話してもよかったんですか?」
無いとは思うが、信用させて罠にはめるようなやつかもしれないからな。
イケメンだし。
「あなたから話を聞くのに、自分の話をしないのはフェアじゃないと思ったので。」
まだ話すとか言ってないんだけどね。
だが、仕方がないので狼を倒したときのことを話す。
俺の武勇伝を聞き終え、少しの沈黙の後に、
「少しいいかな。」
と、言われて、男に連れられて、路地の中に入る。
女の子はついてこない。
(何かされそうになったら殺るか)
そんな物騒なことを考えていると、男が口を開く。
「僕達とパーティーを組んでくれませんか?」
「・・・え?」
いきなり過ぎて、変な声を出してしまった。
「僕達とパーティーを組んで、一緒にモンスターを倒してください!」
男は必死に訴えてくる。
返答に悩んでいると、男は話しだした。
「僕とさっきの子、実は兄妹なんです。それで、なんとしても守ってあげたくて……。」
なんとなく察してたけど、兄妹だったんだな。
てかこいつ、もしかしてシスコンか?
「それなら別にいいですよ。」
仲間が多いに超したことはないだろう。
囮にも使えるしな。
使わんけど。
「ありがとうございます。では、戻って自己紹介でもしましょう。」
こうして、仲間(仮)が出来た。