②
「実家に帰るのも久々ね、ロイド」
「そうですね、三年と三か月、それと十三日ぶりほどでしょうか」
「ああ、そんなに長い期間あの家にいたのね私は」
思えばこうしてロイドと普通に話をするのも随分と久しぶりだ。
あの家にいた時は重要な役割に従事してもらっていたせいで、事務的なやり取りしかしていなかったし。
「存分に羽根を伸ばしていいわよ、ロイド」
「私に飛行機能は搭載されておりませんが」
「あはは、そうね」
少し無骨な言い回しを残したロイドとの会話はとても楽しいもので。
巷では指示に従順な新型の物ほど人気だと聞いているが、私から言わせれば勿体ない。
(しかし、随分と機械の数も減ったわね)
この国を語る上で欠かせないもの。
それが魔法文明と機械技術だ。
元々は魔力を持って生まれてくる人間の比率が少なく、この国で主流として扱われていたのは機械技術だった。
しかし年月が経つに連れ、魔力を持つ人間も増えていき。
それにより研究が進められた結果、今では魔法文明の方が主流となっている。
そんな今となっても機械技術を使っているのは、私のように魔力の弱い家系か一部の好事家、又は昔からずっと使い続けている人たちくらいなものだ。
(確かに魔法の方が便利な場面は多いと思うけど)
整備は不要で、基本的に出力も安定。
人物の調子や力量に結果が左右される点も、見ようによっては利点となり得る。
(だけどやっぱり私は、機械の方が好きかな)
旧式コンロで焼かれた屋台のウィンナーを齧りながら、ロイドの方を横目で見る。
火の通りがまばらなウィンナーも、これはこれで味があって。
魔力のあまりない家系に生まれたことも要因の一つかもしれないが、そうでなくても同じことを思っていただろうという自信もある。
「とにもかくにも、まずはお父様に報告しなきゃね」
ガシャンガシャンと小気味よい足音を立てるロイドに足並みを揃えながら、私は三年と三か月、それと十三日ぶりの実家へと足を進めた。