一話 死 ③
今思えば、自分が疎まれた原因は私自身にあったのだろう。両親がいなくなり、卒業式の日までのあたしの変わりようは多くの同級生や先生を驚かせたと思う。
あたしは短絡的で衝動的だ。思ったことをすぐに口に出して、人を泣かせたり、先生に文句を言ったことが多々あった。その度にあたしと、そして両親が学校に呼び出され担任や校長からの指導を受けた。あたしは身勝手だったのだ。
だからこそ、両親に成長した姿を見せたいと強く思ったからこそ、真面目にするという行動に出られたのだ。
しかし、時はすでに遅かった。もう取り返しのつかなかった。あたしに残したあの手紙の内容は詭弁であり、本当はあのまま穏便に家を去る━━つまりあたしを捨てる━━ための策の一つだったのだと思うようになった。
でもあたしは傲慢だった。捨てられた原因は自分だ。しかし、親の顔を思い出すと、どうしようもない悲しみと同時に、沸き立つような憎悪を感じるようになった。
あたしの後悔と憎悪のことを、編や紡は気づいているだろう。でも二人には両親がいる。さらにはもともとあたしが持ったことがない兄弟姉妹もいる。玉蟲愛守香という人間が抱えるこの感情は、二人が経験したとは思えない。
だからこそあの二人はあたしに言えることは殆どなかったのだろう。
それを攻める気など無いし、あたしが攻める権利などあるとは思えない。
それでも、例えあたしに何が言ったところで、紡と編はあたしの家族ではない。今までも、そしてこれからも。二人が、あたしの中にぽっかりと空いた《家族》という領域を埋めようと、《友だち》という領域の密度が限りなく増えていくだけだ。両者は全く別のもの。
あたしにできた傷は癒えることはないのだろう。あたしは自分の家族になり得るものを求めていた。それはあの二人ではない。
午後七時ごろ。あたしは私服に着替えてブランドもののバッグに貴重品を入れて、家を出た。木枯らしが吹く。体が冷やされるが、あたしの心は少し暖かかくなった。