5、ツッコミが追いつかない
何かノリでキャラに好き放題させたくなったのでやりたい放題させてみました。
「…さて、作戦は以上だ。文句はあるか?」
「空様、直前まで暴走気味な発想してたのにいざ本当の作戦を立案すると唐突に真面目な発想しますね…」
アレは小粋なジョークという物だ、と空はティファのジト目を一笑に付した。
…あんな物騒なジョークがあってたまるか、と僕は内心突っ込みを入れる。あの目は絶対やる気だった。雨が止めなかったら絶対躊躇なしで発射ボタン押してたよ、こいつ。
「別に構わないけどさ、私と彼の負担大きくない?この中で一番適任なのは認めるけど。」
「仕方ないだろう。現状で推測できる相手が狙う条件にあっているのは君達だけなのだから。報酬も上乗せすると言ったし、私に取れる最大限の安全策まで張ってある。
足りないのなら上を脅してもっと上等なのを分捕ってくるしかなくなるのだが…」
別にやっても一向に構わないけどな、と面白そうに言う。
絶対そうなった時の脅し方考えてるよ、この顔は。君、随分愉快な方向に突き抜けて進化しに行ってない?
「わかったわかった。手持ちでどうにかする。他は?」
他の面子の装備を確認する。二人とも持ち歩く物の取捨選択と格闘している。
…メアに関してはやたら物々しいマークの付いた段ボールを何十個も出してどれにするか悩んでいる。
今君がポーチに入れたの放射性物質のマークの段ボールから出したよね、何と戦う気なの?
「ティファはそもそも義手が超技術の産物だから特に気にする事はない。メアは基本的に罠とか裏工作メインだから、ステルス方向に特化している。どこかの裸蛇とかそんな感じが一番近いな。」
「その蛇は少なくとも放射性物質を財布みたいな感覚でポーチに入れて持ち歩きません。まあ必要と判断したなら必要なんでしょうけど、私は一切責任を負わないよ。」
突っ込みを入れながら保身に走っていく雨に僕は苦笑した。
「雨ー、君が今更保身しても変わらないからねー。僕は高見の見物しとくよー。」
雨が無言で私を睨みつけた。はは、そんな事したら周りに変な目で―
(お前も同罪だよっ!!)
…あのさ、視線で言葉を音声ありで伝えるのやめて。目で殺す技の応用を無駄遣いしないで。
「ああ、そうだ。私の飼い犬、もとい君の元仲間君もここに呼んであるから。入っていいぞー。」
今思い出したかのようにいきなり空が爆弾をぶち込んできた。雨もいきなりすぎて扉の方をつい向いちゃってた。
丁寧にノックをしてから入って来た『飼い犬』君は雨を見て固まっていた。雨も珍しい事に驚きを表情に出してフリーズしていた。
気まずい沈黙が部屋の中を満たす。暫くの沈黙を破って先に口を開いたのは雨だった。
「…あー、久しぶりね、相棒。ちょっと日常を楽しみに来たよ。」
雨がめっちゃ視線を逸らしてる。『飼い犬』はどうやら昔はそれなりに付き合いのあった人らしい。
「…鬼子母神様ぁ!?なんでのんびり学園生活満喫しようとしてるんですか!?しかもよりにもよってここで!」
…雨があそこまで表情を出す相手も珍しい。当時はそれなりの信頼を置いていたんだろう。
ギギギ、と首を回す音が聞こえる気がした。
「空?コイツに何をしたのか教えてもらっても良いかなぁ?」
「私は悪くないぞ!?よくわからんが『ゲームでたまに見るんですけど、Sなお嬢様に踏まれるってどんな気持ちなのか気になったのでSな感じで踏んでもらってもいいですか?』とお願いされたから罵倒して踏んだだけだ!」
「そうです鬼子母神様!彼女は私の言う事を忠実に聞いて下さっただけです!どうか気を静めて下さい!」
「そういやアンタそういう奴だったね!ならしょうがない!
…ってなるかボケェ!生徒会長に何させてんのこの変態!私には『執事』やっといて今度は『悪役令嬢に虐げられる可哀想な執事』!?アンタは一体何を目指してるの!?」
「何っ!?私という女が居ながら他の女も誑かしていたのか!?あの時に私には君しかいないと言っていたじゃないか、あれは嘘だったのか!?」
「ちょっと、何よそれ!私にはその言葉言ってくれなかったじゃない!まさか、私とは遊びだったのね!信じられない!そしてアンタは人の男を取るんじゃないわよこの女狐がぁ!」
「何と暴力的な女だ…!これでは愛想を尽かされて当然という物だ!」
「言わせておけばいけしゃあしゃあと…!」
「や、やめろ!私の為に争うな!」
「「そもそもお前の浮気が原因だろう!?」」
…一つ分かった。
どっかの方面で突き抜けた人間達のノリに一般人はついて行けない。一般人組はもれなく目の前で始まった騒動を呆然と見ているしかなかった。
っていうか君達、絶対ふざけてるよね。主に空がボケた辺りから。作戦会議をいきなりドロドロの浮気告発現場にしないで欲しい。
よく見てみると雨は空に対してはじゃれてるけど『飼い犬』に対しては滅茶苦茶殺意を向けてるね。それを平然と流せる彼も彼だけど、手を抜いてるとはいえ彼女に対応して掴み合いを演じられるくらいには生徒会長もそれなりに強い人だったんだね。
それはそうと、君はいつどこでそのネタを覚えたんだい。僕は君にそういう教育をした覚えはないよ。
…最終的に、メアがスタングレネードを三人にぶち込んでこの漫才を強制終了させた。このせいで三人が凡そ1時間に渡り正座させられてメアに説教されたのは別の話である。
雨にこの手のネタ(オタクネタやドラマネタ)を仕込んだのは『飼い犬』君です。
雨も彼を『相棒』と固有の名称で呼ぶくらいには大事にしてました。彼がいなかったら依良に会う前に心を壊している可能性が高いです。