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第43話 図南と拓光

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 2020.12.27 17:53

 書き直しをしています。

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 翌日、拓光と待ち合わせをしていた図南は公園へと続く大通りを歩いていた。

 待ち合わせまでまだ時間があったため、道行く人たちを眺めながらゆっくりと歩いていると、突然、妖艶な美女が話しかけてきた。



「騎士様、この先の宿屋までエスコートして下さらない」


「すまない。友人と待ち合わせをしているので他をあたってくれ」


「あら、つれないのね」


「意地悪を言っているわけじゃないんだ。本当に友人と待ち合わせをしていて、貴女を送って行く時間がないだけなんだ」


「あたしの胸元にあんなに熱い視線を送っていたのに?」


「え! いや、それは誤解だ」


 誤解でも何でもなかった。

 胸元が大きく開いたデザインの服から半ば零れ落ちている胸元に視線が釘付けだったのは間違いない。


 しかも、胸元だけではなかった。

 腰のあたりまで深いスリットの入ったスカートはその魅惑的な脚も顕わにしている。


 当然、図南の視線は脚と胸元を何度も往復していた。


「胸元だけじゃなく、脚にも熱い視線をか・ん・じ・た・わ」


 図南の耳元でささやくと熱い吐息を吹きかけた。


「もし、そう思えたなら謝る。だけど、本当に胸元や脚をいやらしい気持ちで見ていたわけじゃないんだ」


 口ではいやらしい気持ちがあったことを認めていないが、慌てふためくさまがすべてを物語っていた。


「あらー、相変わらずごまかすのが下手なのね」


「どこかでお会いしましたか?」


 馬車隊に同行した女性だろうか、と記憶の糸を手繰りながら愛想笑いを返す。


「ぶっははっはは」


 突然、妖艶な美女が笑いだした。

 キョトンとしている図南に腹を抱えて言う。


「俺だ、俺」


「オレオレ詐欺かよ!」


 突然聞き慣れた口調に変わったことで、眼前の美女が拓光の変身した姿であることを察した。

 なおも文句を言う図南を拓光がなだめる。


「騎士様、怒っちゃいやよ」


 身体をくねらせ組んだ両手で胸元を殊更に強調する。

 傍から見れば大人の女性が年若い騎士をからかっているようにしか見えないのだが、実際に胸と脚に視線を奪われ、よこしまなことを想像していた図南としては周囲の注目を集めたくなかった。


「ここは人目に付く。場所を変えよう」


「そう焦るなって」


 妖艶な美女がニヤニヤ笑いを浮かべて図南を見る。


「だいたい、頼みがあるって言ったのはお前だろ。それ以上続ける様なら俺は帰るからな」


「ごめん、ごめん。これも敵に正体を知られないための一環なんだ」


 敵という単語に図南の口元が引き締まる。


「ヤバイ状況なのか?」


「俺がヤバいというよりも、ニーナちゃん母娘がヤバい」


 馬車隊で出会った若い母親と幼い少女――、神聖魔法で彼が救った若い母親と彼女に縋って泣きながらお礼を言った幼い少女が図南の脳裏に浮かんだ。


「たしか、親父さんがこのカッセル市で店を構えてるんだっけ?」


 テレジア、ニーナ母娘よりも先にこのカッセル市に来て店を出しているのだと聞いたのを思い出していた。


「ああ、それなんだが、人目につかないところで話したい」


 拓光が歩きだすと図南が無言で後に続いた。


 ◇


 数分ほど歩いて案内されたのは大通りに面した女性向けの服屋だった。


「すみません、奥を使わせてもらいますね」


 女性に変身している拓光が頼むと女性店員が無言で首肯しゅこうして、先にたって奥へと誘う。


 通されたのは小さな応接間だった。

 女性店員が退室すると図南が拓光を問いただす。


「おい、これはどういうことだよ。お前とこの店、どんな関係があるんだ?」


「色々とあったんだ」


「いろいろね」


「詳しいことは落ち着いたら話すよ」


 拓光は図南の詮索を適当にながし、「そんなことよりも」と言って本題に入った。


「ニーナちゃんのお父さんというか、テレジアさんの旦那さんは先月暴漢に襲われて死亡していた話はしたよな?」


「その件の続報か?」


 図南が申し訳なさそうに続ける。


「騎士団内部を探ってみると言ったが、実はまだ何もできていないんだ」


「昨日の今日じゃ無理ないだろ」


 気に病む必要はないと笑う。

 自分の進捗が知りたいのでないとしたら拓光の方で何らかの進展があったのだろう、と図南が拓光を促す。


「じゃあ、そっちの話を聞かせてもらおうか」


「図南が捕らえた盗賊がいただろ? あいつら全員をロルカが犯罪奴隷として引き取った」


「そんなことができるのか?」


 犯罪奴隷の扱いがどういうものかは知らないが、これだけ大きな都市だ競合相手がいて当然である。

 その競合相手がよく黙っているものだといぶかしんだ。


「普通、犯罪奴隷は複数の奴隷商へ分散して引き渡す。それはこのカッセル市も変わらない。でも、結局は巡り巡ってロルカのところに集まるんだとさ」


「表面上は分散して引き渡されているが、実際にはロルカが牛耳っているってことか」


「競合はこの何年かの間に不幸な事故に遭って命を落とすか、別の都市へと逃げ出したそうだ」


 一介の奴隷商人が単独でできることでないのは明白である。

 そしてこのカッセル市を治めているのは神殿だ。


「少なくとも衛兵はグルだな。そして、おそらく神殿も、だ……」


「間違いないだろうな。問題は神殿のどの程度の人たちが関与しているかだ。幾ら神殿長が味方とはいっても着任したばかりじゃ無理はできないんじゃないのか?」


「無理はしないだろうな。でも、目障りな連中を隙あらば排斥しようとは考えている」


「強かだな-」


「動かぬ証拠さえ掴めば、動いてくれる可能性は大きいと言うことだ」


「少しは希望が持てるか」


「ただ、俺のほうも神殿である程度の地位をもらったとは言っても実績皆無の小僧に変わりはない。あまりことを急がれても歩調を合わせられないぞ」


「つれないな」


「まさか、もう何かしでかしたんじゃないだろうな?」


 心配顔で図南が拓光に詰め寄る。


「ロルカのヤツ、この都市の裏組織とも繋がりがあるんだけど……」 


「だけど?」


 言い難そうにしている拓光を睨んで促す。


「今夜、裏組織の賭場とばに誘われているんだよね」


「早まったことをするなよ」


 拓光の行動力に舌を巻く。


「俺は武闘派じゃないからな。変身能力があるんだ、こいつを利用して情報を集めるさ」


「荒事が発生しそうなら事前に連絡をくれ」


「二人で殴られにいくか」


 中学時代、虐められている同級生を助けるために図南と拓光の二人で虐めている連中に突っかかっていっては返り討ちにされていたのを思い出して言う。


「あの頃とは違うさ。俺もお前も力がある」


「まだ使いこなせていないけどな」


「そうでもないだろ? わずか二、三日でこんな上等な店の応接室を顔パスで借りるなんて、そうそうできる芸当じゃない」


 能力そのものに頼っている自分よりも、能力を活用している拓光の方が凄いことなのだと言った。


「持ち上げるなよ。さっき、裏組織の賭場に誘われているっていっただろ? この店、あたしを誘ってくれた助平野郎がオーナーなのよ」


「色仕掛けか?」


「姫プレイの延長だな」


「本当、慎重にやれよ」


 図南が半ば呆れて拓光に釘をさすが、美女に化けた拓光の方は意に介する様子もない。


「賭場はここよ。開始は深夜、日付の変わるころ」


 美女の姿をした拓光がメモを図南に渡した。

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