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第4話 戦闘ののち

本日、二話更新いたします

「矢が刺さってるじゃないの!」


「大丈夫なのか!」


 戦闘を終えた図南のもとへ駆け寄った紗良と拓光が、図南の左肩に突き刺さった矢を見て声を上げた。


「問題ない」


 痛みに顔を歪めながらそう言うと、激痛に耐えて左肩の矢を引き抜く。


「痛ーッ」


「問題、おおありじゃない!」


 うずくまる図南に紗良が泣きそうな顔でピシャリッと言った。


「もう大丈夫だ」


「いいから傷口を見せて!」


 ハンカチで傷口を縛ろうとする紗良を図南が仕草で制して言う。


「ともかく、この場を離れるのが先決だ。安全な場所に移動しよう。傷の手当はそれからでも大丈夫だ」


「根拠のないこと言わないの」


 どこが安全かなど誰にも分からない。それでも戦闘が行われ、魔物の死体が転がるこの場所が安全でないことは想像できた。

 まして得体の知れない魔物が放った矢が突き刺さったのだ。『大丈夫』、なとどいう言葉を信じられるわけがなかった。


「オークの死体に他の魔物が寄ってくるかもしれない。先に移動だけでもしておきたい」


「せめて、消毒と止血だけでもしましょう」


 嘆願するように紗良が言った。


「闇雲の言う通りだ。矢に毒でも塗ってあったらどうするつもりだ?」


「不知火さんも不安を煽るような発言は控えてください」


「ごめん」


「二人とも落ち着いてくれ」


 図南は二人の間に入ると、これ以上紗良を不安にさせないためにも、先に治療を施すことにした。


「攻撃魔法が使えたんだ、回復魔法だって使えるかもしれないだろ」


 図南はその場で解毒、治癒、回復の魔法を自身にかける。

 すると、傷口がみるみる塞がり、瞬く間に矢が刺さった痕跡すら見当たらなくなった。


「嘘……」


「スゲー、傷口があっという間に塞がった……」


「元通りだな……」


 紗良と拓光が茫然とする傍らで、図南が平静を装う。

 回復魔法が使えるかもしれないと口にはしたが、彼自身、これほど短時間で完治するとは考えてもいなかった。


「痛みはない?」


 安心したのだろう、紗良の口調が穏やかなものに変わった。


「どこに矢を受けたのか、俺も分からないくらいだ」


 左肩を大きく回して見せる図南に紗良が微笑み返したが、


「良かった」


 その笑顔に涙が溢れた。


「問題ないって言っただろ」


「心配したんだから」


 ばつが悪そうに視線を逸らす図南の右手を紗良が両手で包んだ。


「えっと。あの、心配かけてごめん」


 紗良の行動に図南の方がドギマギとする。


「無茶はしないでね」


「そうだな。もう少し慎重に行動するよ」


 包み込んだ自分の右手を紗良が愛おしそうに見つめていることに気付いくが、図南もどうしていいものか分からずに虚空に視線をさまよわせるのが精一杯だった。


「そろそろ俺のことを思いだしてもらってもいいかな?」


 二人きりの世界を拓光が壊す。


「お、おう! そうだな」


 慌てて引こうとした右手を紗良の小さな両手がしっかりと握りしめていた。反射的に紗良の顔を見るのと紗良が図南の顔を見上げ動作が重なる。


 不意に二人の目が合った。

 慌てて手を離した紗良が、今度は掴んでいた両手を隠すように背に回すと、取り繕うようにして言う。


「不知火さんのことも思いだしたことだし、そろそろ移動しましょうか」


 頬を染めた二人が互いに視線を合わせないようにして歩き出した。


 ◇


 紗良の千里眼、拓光の索敵、図南の感覚強化を駆使して魔物や猛獣を避けて移動すること二時間余。

 周囲の景色が原生林から普通の森の風景へと変わったところで小休止していた。


「――――ここまでの道中、移動しながらゲームで取得したスキルを幾つか試したが、当面使いそうなスキルだけでも、もう少し検証をしておきたいんだけどどうだろう?」


「賛成」


「俺も賛成だ。出来ることと出来ないことくらいは知っておきたいもんな」


 図南の提案に紗良が即座に賛成し、拓光がそれに続いた。


「理解してもらえたところで、早速検証開始と行こうか」


 図南はそう言うと、続いて自身の半透明のボードに書かれている内容を一つ一つ声を出して読み上げていった。


【名 前】 宵闇図南

【H P】 999,999,999

【M P】 999,999,999

【加 護】 乾坤一擲(常時発動:なし 任意発動:消費魔力分攻撃力UP & HPの10%を消費して貫通 ※どちらも近接攻撃限定)

【加 護】 不撓不屈(常時発動:HPとMPを自動回復 ※10%/時 任意発動:HPとMPを全回復 ※リキャストタイム 24時間)

【スキル】 

神聖魔法  10/10(最大値)

無属性魔法 10/10(最大値)

重力魔法  10/10(最大値)

付与魔法  10/10(最大値)

幻影魔法  10/10(最大値)

解析    10/10(最大値)

身体強化  10/10(最大値)(※MP 2/分)

感覚強化  10/10(最大値)(※MP 2/分)

集中    10/10(最大値)(命中率+30% ※MP1/分)

加速    10/10(最大値)(速 度+30% ※MP1/分)、

火魔法    1/10


「キャラクターの能力がそのまま反映されているのは概ね間違いなさそうだが……、記憶にない火魔法だけがショボいな」


 図南のつぶやき通り、取得した覚えのない火魔法だけが初期値だった。


「おおー! よく分からないけど、図南、凄ーい」


「突っ込みどころ満載なんだが、取り敢えず一つだけいいかな?」


 歓声を上げて拍手をする紗良を横目に拓光が聞いた。


「何だ?」


「その死にそうにないHPと無尽蔵とも思えるMPは何だ?」


「デバッグキャラだから死んだらダメだろ? 魔法やスキルも使い放題じゃないと不都合があるからな」


「もう、それだけで十分にチートじゃね?」


「じゃあ、納得したこところで、次は拓光のステータス確認に移ろうか」


 拓光の反応を見なかったことにして話を進めようとする図南だったが、その提案に耳を貸さずに拓光がさらに質問した。


「加護が二つあるのとスキルが十一個あるのは何でだ?」


「デバッグキャラということでテストプレー用のキャラの倍の数の加護とスキルが所持できる。つまり、加護が二個とスキルが十個だな。ところが、だ。何故かキャラメイクのときには取得した覚えのない『火魔法』が入ってた。ここが不思議なところだ」


「いや、どうでもいいだろ、そこは」


 腑に落ちないといった様子の図南を一蹴した。

 その傍らで紗良が手を上げて発言する。


「はい! あたしも十一個目と十二個目のスキルがあったの。『水魔法』と『風魔法』!」


「紗良もか」


 図南と紗良の視線が拓光に注がれた。

 改めて半透明のボードを確認した拓光が言う。


「俺も六個目のスキルがあった。『土魔法』だ」


「取得した覚えのないスキルがあるっていうのも気持ち悪いな」


「図南、ストレージ機能も使えるみたいだよ」


 紗良が少し興奮した様子で虚空を見つめていた。


「ストレージは確かに標準機能だけど……」


 ストレージ機能――、ゲームによってはアイテムボックスなどとも呼ばれる機能で、所有物を異空間に収納しておく機能だ。


「収納できた」


 拓光が近くにあった岩を収納できたことを告げると、即座に図南も足元にある倒木の収納を試みる。

 瞬時に足元の倒木が消え、半透明のボードにあるストレージの項目に倒木が表示された。


「これで異世界での生活が各段に楽になるな」


「虫はダメっぽいぞ」


 と拓光。


 拓光に倣って図南も生きている虫をストレージに収納しようと試みたができなかった。生きている虫や動物、魔物などもゲーム内では収納できない。

 図南がゲーム内のルールがこの異世界でも適応されるのだと結論付けた。


「じゃ、ストレージの検証はこのくらいにして、加護とスキルの検証をしましょう」


 紗良の提案に高揚した様子の図南が即答する。


「OK! それじゃあ、早速、魔法の確認から行こうか!」

3月28日 朝の更新で総合日間100位に入れました。

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就職浪人、心機一転異世界で成り上がる ~現代の製品を自在に取り寄せるスキルがあるので異世界では楽勝です~

◆あらすじ
就職に失敗した天涯孤独の大学生・朝倉大地は、愛猫のニケとともに異世界に迷い込んだ。
半ば絶望にかられた大地だったが、異世界と現代社会のどちらの製品も自由に取り寄せることができる「トレード」スキルを手に入れる。
日本に帰っても待っているのは退屈で未来に希望を持てない毎日。
ならば、このチート能力を使って異世界でのし上がろうと決心する。
現代知識と現代の製品を頼りに、愛猫のニケとともに異世界を自由気ままに旅するなか、彼は周囲から次第に頼られる存在となっていく。
― 新着の感想 ―
[一言] スキル枠がゲームキャラのスキルで埋まって、スキルの種が受け取れなかった? スキルの種に管理者が干渉できるようにする効果があった?
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