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第30話 もしかして、選択をあやまったか?

 就任式が終わると図南と紗良はそのまま神殿の主だった人物を紹介された。

 二人の副神殿長――、バルテン大司教とドレッセル大司教のフューラー大司教に敵対する二人に始まり、各部門を束ねる司教たちに次々と挨拶をする。


 各部門の責任者の紹介が進むほどに図南と紗良の背に流れる冷汗の量が増していた。

 神聖バール皇国と言う名前から神聖教会や神殿が相当な権力を持っているであろうことは図南も紗良も想像していた。


 だが、責任者の紹介が進むにつれ、自分たちの予想が甘かったことを思い知る。


(冗談じゃないぞ。もしかして、俺たち、とんでもないことを引き受けたんじゃないのか……?)


 図南と紗良の二人は、神殿の役割を医療と教育、市場に出回るポーション類の流通管理を行う程度に考えていた。配下に抱える神聖騎士団にしても軍隊と警察組織、検察、裁判所を兼ねる程度と受け止めていた。

 それだけでも絶大な権力である。


 ところが実際には彼らの想像の遥か上を行っていた。

 神聖バール皇国において、教皇とは国王に相当し、地方を束ねる神殿の神殿長は領主に相当する。


 まして、このカッセル市は皇国最大の商業都市であり、首都に次ぐ規模を誇る大都市だ。

 フューラー大司教は、まさに次期国王候補にして肥沃な領地を任された領主ということになる。


 当然、そんな領地の財務部門が神殿と騎士団の予算のやりくりをするだけということはない。

 一地方の税収から公共事業への予算の割り振りと言ったことを、当たり前のように行っていた。


 次々と部門の説明と自己紹介が進む。

 図南と紗良は司教たちの自己紹介が進むのを、どこか別世界の出来事のようなことのように眺めていた。


 そして二人の男女が残った。

 妖艶な雰囲気を漂わせた美女が優雅に立ち上がる。就任式の最中に図南の目がクギ付けになった美女である。


「医療部門の責任者を務めさせて頂いています、クラリッサ・コールです。医療部門の主たる仕事は――――」


 ルース地方にある百三十の診療所と各ギルドと連携してのポーションの開発や製造、流通を担っていることをさらりと触れ、淡々と部門の説明を続けた。


「――――、基礎教育を終えた者たちのなかから有望な素養のある者に医療の専門的な教育を施すのも我々の仕事となっております」


 クラリッサはまだ三十歳前にもかかわらず医療部の責任者を任されている才女であり、図南と紗良が配属される診療所の所長も兼ねている。


「コール司教は君たち二人の上司でもある」


 フューラー大司教が改めて告げた。


「とても素晴らしい神聖魔法の術者だそうね。お二人には期待をしています」


「ご期待に応えられるよう精一杯頑張ります」


「ご指導よろしくお願いいたします」


 図南と紗良のコール司教への挨拶が終わると、最後の一人となった神聖騎士団の制服を着た男が立ち上る。

 きびきびとした動作で立ち上がったのは四十歳前後で、身長は百九十センチメートルを超える筋骨隆々たる大男であった。


「ルース地方の騎士団の団長を任されているクラウス・バーレです。よろしくお願いいたします、司教様」


 騎士団長の階級は四級神官であり、役職は助祭相当となるため、他の司教たちとは異なり非常に短い紹介となった。

 あまりの簡潔さに図南が呆気に取られているとフューラー大司教が語り掛ける。


「トナン君、彼が君のもう一人の上司となる」


「よろしくお願いいたします」


 図南が会釈をした。

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◆あらすじ
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