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第21話 襲撃(3)

 黒ずくめの襲撃者たちが図南を包囲するように一斉に動き出した。


「二十人か……」


 まだ戦うことのできる襲撃者の大半がこの場に集まっていることに、図南は胸を撫でおろす。


「これは好都合だ」


 問題は自分の覚悟と気力だけだ、と己に言い聞かせる。


 図南は身体強化と感覚強化が発動していることを改めて確認すると、再び加速と集中を発動させた。

 黒ずくめの襲撃者の一人が手で合図をすると図南を囲む襲撃者たちが無言で動いた。


 包囲網が縮まる。

 手で合図をした襲撃者の背後が森であることを見て取った図南が、無造作に左手を突きだす。


 刹那、魔力の弾丸が生まれ、次々と生み出された魔弾がマシンガンの様に連射される。

 その大半は森の中に吸い込まれていったが、そのうちの一発が合図を出した男の腹を撃ち抜いた。


「ガフッ!」


 鈍い音に続いて、黒ずくめの男が血飛沫を舞い上げて後方に弾き飛ばされる。

 撃ちだされた魔弾の速度と連射を目の当たりにした襲撃者たちに戦慄が走った。


「攻撃力はあるが、貫通力も高い! 乱戦で容易く使えるような攻撃魔法じゃないぞ!」


 それでも、魔弾の特性を見抜いた者が声を張り上げる。


「間合いを詰めろ!」


「接近戦に持ち込め!」


 図南にとって願ってもない指示が飛んだ。


「接近戦か、望むところだ!」


 たとえまともに当たらない攻撃魔法でも、使い方次第で自分に有利な展開を作りだせるのだ、と図南がほくそ笑む。

 襲撃者たちが一斉に図南に向かって斬り掛かった。


「魔刃!」


 長剣に魔力の刃をまとわせる。


 振り下ろされる斬撃も、迫る突きも意に介さず、左足を軸に独楽のように回転する。魔力をまとった剣が水平に旋回した。

 切り掛かった者たちが腰の辺りで両断される。


 だが下半身を失って、なお、剣を突きだす者がいた。

 その者の放った一撃が図南の右胸を貫いた。


「痛ー!」


 激痛に声が上がる。


(治療は出来ても、痛みはどうしようもないな……)


 一瞬、図南の動きが止まった。


 そこへ半歩遅れてきた襲撃者が図南へ長剣を振り下ろす。

 長剣は図南の右腕を捉えた。


 血飛沫が舞う。

 襲撃者は己の放った斬撃に確かな手ごたえを感じた。


「仕留めた!」


 振り下ろされた長剣は図南の右腕を通過して右肩口を切り裂いた。

 だが次の瞬間、男は、図南の無傷の右腕とその手に握られた長剣が己に迫るのを目の当たりにする。


 男の目が大きく見開かれた。


「斬ったはず――グア!」


 男は最後まで言葉を紡げずに悲鳴を上げる。

 長剣を握った男の両腕が血飛沫を上げて地面に転がった。


「残念だったな」


「なぜ……」


「俺は神聖魔法が使えるからな」


 男が到底納得できないような一言を残して残る襲撃者に向かう。


(残り十人!)


「加速!」


 そこからは数秒の出来事だった。


 図南の繰りだす魔刃の一撃を防げる者はいなかった。武器や盾で防ぐことのできないその理不尽な斬撃は確実に敵を仕留めていく。


 数秒の出来事だった。

 辺りには剣や盾ごと斬られた者たちが呻き声を上げて横たわる。


 図南の戦いを目撃した者たちは敵味方の別なく、眼前で起きた出来事を信じれずにいた。

 いや、大半の者は何が起きたのかさえ理解できていない。


 自分たちの常識を覆す戦いが繰り広げられたことだけは理解していた。

 その圧倒的な戦闘力に対する畏怖の感情が湧き上がってくる。


 戦闘の音が遠くで響くなか、図南がラルスを振り返った。


「ラルスさん、あとは任せてもいいでしょうか? 俺はフューラー大司教の無事を確認しに行きます」


 本当は紗良の無事を確認したいのだが、正直にそんなことを言えば色々と問題になりそうなことくらいは図南もわきまえている。


「はい……」


 ラルスは半ば放心した状態で返事をした。


 図南はラルスに会釈をすると即座にフューラー大司教の天幕——、紗良がいるはずの場所へと向かって走りだす。

 残された者たちが図南の後姿を目で追うが、それは瞬く間に闇のなかへと消えてしまった。

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就職浪人、心機一転異世界で成り上がる ~現代の製品を自在に取り寄せるスキルがあるので異世界では楽勝です~

◆あらすじ
就職に失敗した天涯孤独の大学生・朝倉大地は、愛猫のニケとともに異世界に迷い込んだ。
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