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法律から考えてみる

「今回は予告通り法律方面から攻めたいと思います」

「後輩君、大丈夫」


 先輩が不安げな表情で僕を覗き込んでくる。

 先輩にこんな顔をさせてはいけないと、僕はふんと鼻息荒く気合いを入れ直す。


「大丈夫です。では、不倫ですが法律的に不倫ってどんな罪でしょう?」

「えっと……奥さんがいるのに他の人を好きになっちゃうこと?」


 小首を傾げて答える先輩。すごくかわ……きりがないのでもうやらない。

 そんな先輩にドヤ顔で


「ぶぶ~。正解は不倫は罪ではありません」

「え? でも、法律で決められたダメなことだよ」

「はい。不倫は不法行為ですが罪ではありません。」

「え? どういうこと」


 首を何度も傾げながら混乱中の先輩。

 と言う訳で解説を始める。


「まず、法律的に話すと罪は刑法に違反した行為をさしています。ちなみに不倫は結婚に関する民法に違反した不法行為になります」

「何それ! それひっかけ問題じゃない」

 

 ぶうと頬を膨らませる先輩。美人系なのにこういうカワイイところがあるから揶揄うことを止められない。僕はにやつきそうになるのを懸命に堪えて真剣な表情を作る。


「いえ。これ、今回のポイントです。試験に出そうなくらい大事なポイントなんです」

「そうなの?」

「はい。刑法ってどんなものかわかりますか?」

「えっと、殺人とか強盗とかの悪いことについての法律?」

「正解です。それでは民法は?」

「民法?」


 ひとさし指を唇に当てうんうん考えている。僕はそんな先輩の姿を愛でながら回答を待った。


「う~ん、わかるのよ。なんとなくわかるんだけど言葉で説明できない」

「そうですね。普通の人には馴染みがないかもしれませんね。かくいう僕も説明できなかったので少し調べてきました。

「そうなの?」


 ガッカリと肩を落としていた先輩が目をキラキラさせて立ち直った。

 そんな先輩にほのぼのしながら解説を始める。


「私法の一般法について定めた法律らしいです」

「えっと……どういうこと?」

「わかりません」

「もう、それじゃ説明になってないじゃない」


 僕に残念な物でも見るような目を向ける先輩。こういうのも悪くはないが僕の好感度を下げる訳にはいかないので解説を続ける。


「法律関係って小難しい言葉ばっかりでわかりにくいんですよね。あれはきっと政府の陰謀ですね」

「そうね。分かってるじゃない後輩君」


 目をキラキラと輝かせる先輩を見てこの人ホントはチョロインなんじゃないかと思いながら話を続ける。


「まあ、それは置いておいて民法についてですが、ざっくりと言うと個人や企業間で結ぶ約束や権利や義務についてのあれこれをまとめた法律です」

「うわ。本当にざっくりした」

「だって言葉が難しいし曖昧なんですよ。まあ、民法はみんなが不平等にならないように国があらかじめ作ったルールって考えておいてください」

「まあ、わかんないけど分かった」


 納得していないのか少し不満顔だけど、それは僕も同じなのでスルーしておく。


「じゃあ、本題、不倫ですが実はこれやってはいけないと法律のどこにも書いてないんです」

「え? そうなの? みんな悪いことだって言ってるよ」

「そうなんですよね。みんながそう思ってるってところがポイントなんです。『公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反しない慣習については、法令の規定により認められたもの及び法令に規定のない事項につき、成文による法令(形式的意義における法律)と同一の効力(法源たる慣習法としての効力)が認められることになる』とあるんです」

「えっとなに?」

「ホント、法律って難しいですよね。ようは公序良俗に反しない限り、昔からの一般常識は法律と一緒の意味がありますよって意味です」

「そうなんだ」


 なんかごまかされてないかなあと疑いの目が向けられている。

 まあ、実際、僕も法律関係の本を読んでいると騙されているような気になるのだからしょうがない。 

 まあ、そこは別の話なんで僕はごほんと咳払いして本題に戻ることにした。


「つまり、昔から結婚相手以外と深い仲になるのはいけないことだよね。そんな常識いちいち法律に書かなくてもいいよねって考えてください」

「まあ、それなら納得できるかも」


 全然、納得してる顔には見えないけどそんなことは口に出さない。


「と言う訳で配偶者としての貞操義務の不履行を不貞行為と言います。この不貞行為は離婚事由になると民法770条に書いてあります」

「えっと、離婚の理由になるってことはやっちゃいけないってことじゃないの?」

「この法律はあくまで離婚事由についていってるだけで不貞行為が違法だとは言ってないんですよ。多分、この法律は不倫したのになんで不倫はいけないんだ不倫は男の甲斐性だなんていう人がいたから、法律で離婚の理由になるんだよって決めたのかもしれませんね」

「何それ。時代錯誤も甚だしいじゃん」

「だって、この法律そういう時代に出来た物ですもん。それに昔は姦通罪なんてあったんですよ」

「姦通罪?」

「はい。妻が旦那以外と性交渉したら妻及びその相手は二年以下の懲役って法律です」

「そんな法律があったの? いまもあればいいのにそしたら不倫なんてできないでしょ」

「できますよ」

「え? どういうこと?」


 先輩が頭に?マークを浮かべている。絶賛混乱中だ。


「ポイントは妻が旦那以外とってところです」

「ああ、何それ!」

「昔から浮気はダメって文化はあったんですけど、それで罰せられるのは妻だけだったんですよ」

「なにそれ! そんなの男女差別じゃない」

「そうです。だから、廃止されたんです」

「ちょっと待って? それって妻だけじゃなくて旦那にも適用すればよかったんじゃないの?」

「そうですね。ただ、当時の偉い人は浮気して刑務所に行くのが嫌だったんじゃないですか。それで廃止したんですね」

「なんか男の人って汚い」


 軽蔑の眼差しがグサグサ突き刺さってうれし――居た堪れない。

 と言う訳で先輩をなだめにかかる。


「まあまあ落ち着いて。本音はそうかもしれませんけど、元々罪が重すぎるって話があったんですよ。あと姦通罪があったから不貞行為が違法だって条文が書かれなかったのかもしれませんね。って、もうこんな時間だ。続きは次回に!」

「ああ、後輩君。逃げるのね」

「それではバイバイ!」


 僕はその場から逃げ出すのだった。

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