不倫報道のメリットを考えてみた
「はい。めでたく第二話です」
「どうしたの。後輩君、さっきから変だよ」
「さっきって昨日のことですよ」
「え? え? 何言ってるの? まだ一分も経ってないよ」
困惑気味に目を白黒させる、先輩。話についてこれていないみたいで絶賛混乱中です。
そんな先輩にはこれ
「もう、先輩ノリが悪いなあ」
「そんなことないもん。ノリの良さはこの学校一だって有名なんだよ。そんなこと言う人の方がノリが悪いんだからね」
なぜかは知らないけど先輩ノリが悪いと天然と言われることが嫌いなんだよなぁ。
慌ててなんかよくわからないことを言ってくる先輩を微笑ましく見ながらそんなことを考えていた。
って、違う。本題だ。
「予告通り。不倫報道のメリットについて考えてみましょう」
「そうだったわね。でも、不倫報道にメリットなんてあるの? デメリットならいっぱい出てくるけど?」
小首を傾げて唇に指を添えてる、先輩。なんだかこれが基本姿勢になったんじゃないかってくらい頻発している。
うん。カワイイは正義だ。
って、先輩のことはどうでも良いか
「そうですね。僕もメリットなんてないと思います。なら得する人って考えてみてはどうでしょうか?」
「得する人?」
「ええ、まず一番得する人って誰だと思います?」
「政府の人。何か重大事件を隠蔽するため――」
「それはもういいです!」
食い気味にツッコんでおいた。この手の話になると長くなるので早めに潰して置く。先輩に陰謀、UFO、オカルト話は厳禁だ。
占いとか好きと言うのであれば可愛げがあっていいんだけど……
不満そうに頬を膨らます先輩が非常に可愛いが今は話を前に進める。
「他に何かありませんか?」
「当たり前だけど出版社さん? 話題になれば発行部数が上がって儲かる」
「そうですね。一番はそこでしょう。他には?」
「ワイドショー? 放送するネタが出来るもんね」
「そうですね。最近、独自取材でネタ引っ張ってくるのあんまり見ないんですよね。週刊誌とか新聞をただ読むってお前等仕事してるの? って言いたくなるんですけど」
「ちょっと、後輩君。後輩君。なんか怖いよ」
おっと、いかん、いかん。熱くなってしまった。
先輩が引いてしまってるではないか。まあ、そんな顔も可愛いのだが僕の好感度が落ちるのはいただけない。ここは気を取り直して。
「ごほん。先輩のいう通りワイドショーもその一つかもしれませんね。でっ他には?」
「う~ん。読者さん? 話題を提供されてるわけだし、楽しんでる人もいるよね」
「まあ、そうですね。わざわざお金出して買って読むんだからゴシップ好きって結構いるんですよね」
「買ってまで読むってどうなんだろう。人の不幸がそんなに面白いのかなあ」
本当に買ってまで読もうとする人の気持ちがわからないのか表情を曇らせる、先輩。
かくいう僕は立ち読みで済ました。ちゃんとネット版も見たよ。重要な部分は有料だったのがムカつくけど。
と言うことで僕はセーフ
「まあ、一部にそういう思考の人がいるのは仕方がないですよ。あと二次的な物でそれぞれのスポンサーですね」
「スポンサー?」
「雑誌にも広告記事があるでしょう。表紙の裏とか裏表紙とかにあるじゃないですか」
「ああ、あの幸運のネックレスとか。札束の湯船につかってる広告とか」
「先輩。どんな雑誌呼んでるんですか?」
「まあ、そんなことは良いじゃない。あは、あは、あははははは」
笑って誤魔化そうとする先輩に溜息を吐きながら話を戻す。
「そういうスポンサーですね。雑誌が多く売れれば、その広告を見る人が増える訳ですから、これは得したことになるでしょう?」
「そうね。となるとワイドショーも不倫報道で視聴率が上がればCM見てくれる人が増えて万々歳と言う訳ね」
「まあ、そうなるかはわかりませんが、とりあえずは得する方に入れときましょうか」
「何か歯切れが悪いね」
「そうですね。ワイドショーのスポンサーについては一概に得する人とは言えない気がするんですよ」
「それはどういうことなの?」
「それは――おっと、ここで時間ですね」
「ええ? また?」
「と言う訳で今回はここまで」
「「次回をお楽しみに」」
覚えたのか満面の笑顔で手を振る、先輩。
そして、ドヤ顔で
「どう? わたしノリ悪くないでしょ?」
そんなに気にしていたのかとなんだかカワイイなぁとにんまり微笑む僕でした。