事後報告、そして2人目
「うわぁっ!」
俺がクリスタと話していると、壊れたドアの前にレスターが現れた。
「敵襲?……ではないですね。クリスタ様ですか?」
そう言いながら、レスターはドアを乗り越えて入って来た。
「レスター!まるで私がしょっちゅうドアを壊してるみたいな言い方やめて。」
顔を赤らめながら、クリスタはまた俺に絡みつく。
揺れたツインテールが鼻につき、こそばゆい。
「失礼いたしました。しょっちゅうではなく、一年に2.3度ほどですね。」
クリスタに、悪戯な笑みを浮かべた。
クリスタはベッドをボフンと叩いて、
「レスター、あなたってホントいじわるよねっ!」
と言って部屋を出て行った。
レスターを横切る時、赤かった顔がさらに赤くなったのを俺は見逃さなかった。
「お前、クリスタをからかうのもほどほどにしろよ。」
「クリスタ様は年頃なのに、いつまでも殿下にベタベタですね。」
レスターは鈍感なのか、シスコンの陰に隠れたクリスタの恋心には気づいていない。
「何のようだ?」
「失礼しました。まず、報告ですが先ほどの娘、司教より聖女の可能性があるということで教会の保護下に置かれました。」
「そうか。」
「今のところ、我々の指示に従順に従っています。ただ、教会が崩壊したため一時的に城にて保護をしています。」
「西方教会や東方教会で引き取れないのか?」
レスターは俺の真意を汲み取れないのか、少し怪訝な表情を浮かべた。
「どちらも少し遠く、事情聴取などもあるため城にて保護することになりました。」
ゲームの強制力か。
どうしても俺の近くに置いておくらしい。
「ところで、あの女を召喚したと思われる怪しい男の身元はわかったのか?」
これであの男が反対勢力や他国の人間なら、その男に召喚されたあの女は聖女なんかじゃなく、むしろスパイに疑われるはずだ。
レスターが首を振る。
「それが我々が立ち去った後、何者かによって男の死体は持ち去られたようです。後続隊が駆けつけた時にはもう男の死体はありませんでした。」
くそっ。
まったくもって用意周到だな。
「報告は以上です。私の主観ですが、あの女の子と話した印象は敵とは思えませんでしたよ。怯えながらも、気を強くもって我々に従ってくれました。彼女曰く眠っていて目が覚めたら教会にいたようです。」
異世界から来たとは言っていないのか。
「あ、それと王妃殿下がお呼びです。お支度をお願いします。」
「母上が?」
「はい。殿下を呼ぶように言われました。」
次から次へと休まる暇がないな。
「わかった。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コンコン
「母上、カインです。」
「どうぞ。」
ガチャリ
「失礼します。」
‼︎
あぁ、忘れてた。
もう1人のヒロインは、王妃の侍女だった……。
王妃の横には俺と同じく転生してこの世界にやってきた、3番目のヒロインがいた。