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1人目

「では、改築工事が完了するまでは一時的にドゥーマ教会は封鎖。臨時としてドゥーマ教会の機能は西部と東部の教会に分担させるということで採決してよろしいでしょうか?」


ドゥーマ教会は、ジタリオ国の国教であるドゥーマ教の本部だ。

ドゥーマ教が流布されてから一番始めに作られた教会で、老朽化が激しく、一月ほど前に礼拝堂部分の床が大きく抜けた。


「異論なし、ということで採決させていただきます。」


この会議に出席している13人の宰相たちはうなづき合った。

この会議には国王と俺、13人の宰相とドゥーマ教司教が参加している。

国の政を決める時は、このメンバーで議決を取る。

今回は教会のことが議題になっているため、司教が議長を務めている。


「次に礼拝堂の下に見つかった召喚の間と思われる部屋ですが、いかがいたしましょう。」


「その部屋はつまり封印されていたんだろう?」

口を開いたのは、宰相のなかで一番身体が大きい男だ。身体つきは太ってるわけでなく、鍛えているというのが正しい。

名はクロス侯、主に国の軍事を担当している。


「部屋には古い結界魔法が施されておりまして、我々には破ることができません。」

司教は会議のメンバーの中では若い方で、30〜40代の細身の男だ。

司教は代々、魔法力が高いものが継いでいる。

この世界では、緑色の髪を持つ者が魔法力が高いとされている。


王族の血を引く者は白、魔法力がある者は緑、武芸に秀でた者は青、ドラゴン使いはオレンジの髪色を持つ。

夕日色の髪を持つレスターはドラゴン使いだ。


ドーーーン


突然、大きな爆発音が響いた。

なんだ?敵襲か?


「失礼いたします!」


若い騎士が会議場に入ってきた。


「申し上げます!ドゥーマ教会より真っ白な光が放たれ、教会が爆破されました!」

「なんだと⁈」


会議のメンバーは立ち上がり、窓から教会を覗いた。

会議をしている城から、教会までは遠くない。


確かに窓から見えるのは騎士が報告したとおり、教会はみるも無残に崩れており、教会の中から光が上空に伸びている。


教会の中から黒い人影が出てきた。


「陛下。怪しい奴がいるので、失礼いたします。」


俺は父親である国王にそう言って会議場を飛び出した。

後ろからレスターも付いてくる。


ピィー!

城から出て、レスターは笛を吹いた。


吹いてすぐに、レスターと同じ髪色のドラゴンが飛んできた。


「殿下、こちらへ!」

レスターはドラゴンに跨り、俺に手を差し伸べた。

心は初めてのドラゴンに感動と恐怖を感じていたが、体は慣れたようにレスターの手を取り、ドラゴンに跨った。


風が舞い、勢いよくドラゴンは飛び立つ。

まさしく、先ほどルーベンが象ったドラゴンそのままに。


飛び立ってすぐに、教会から出てきた人影を捉えた。

黒い装束を纏い、街の繁華街に逃げ込もうとしている。


もうすぐ追いつく!

俺は右手を伸ばし、何もない空間から剣を出した。


えっ?

俺、今何したの?


突然、逃げている男の前に丸い空間が現れた。

中はよく見えない。


「マズい!逃げられる!」

レスターは足でドラゴンを蹴り、速度を上げた。


「えっ?」

丸い空間から、黒い光が男に放たれた。

男は驚愕の表情を浮かべ、その場に倒れた。

倒れるのを待たずにその空間は消えてしまった。


バフゥ

ドラゴンは男の横に降り立つ。


すぐに男に駆け寄ったが、男は絶命していた。

「クソッ!」

振り返るが先ほど空間が現れた場所は何もない。


「教会に行こう。」

俺たちはまたドラゴンに乗り、教会に向かった。


俺の記憶が確かなら、この世界には敵になるものはいなかったはず。

宰相同士の小競り合いはあったが、潜在的な国の敵はいなかった。

今のは何なんだ。


ドラゴンは、教会の前に降り立った。

教会からはまだ光が上空に伸びている。


「殿下、気をつけてください。まだあの光の正体が分からないんですから。」


「あぁ。」

そう言いながら、教会に近づく。

なぜかあの光からは嫌なものは感じない。

むしろ、光の元へ行かなければいけない気がする。


手に出した剣を、拳を握ることで消した。


崩れた瓦礫を乗り越えて進むと、中が大きく陥没している。

中を覗き込むと、魔法陣の中に女が倒れていた。

光はその魔法陣から放たれている。


「女の子……?」

レスターが隣から覗き込んでいる。


俺は飛び降り、女の隣に立った。


白い寝衣を着て、長い髪が顔を隠している。


顔を見なくても何となく分かった。

これは王道ヒロインとの出会いだ。



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