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今後の身の振り方

今日はロシアのプーチン宮殿に来ている。もちろん、2ch世界の中だ。


さすがアメリカ帝国に唯一張り合った大国の独裁者が住まう宮殿だ。豪華絢爛ごうかけんらんを通り越して、もはや文化財レベルの建築物だ。


ホワイトハウスも中々だったが、あれは大統領職の任期中にのみ貸し出されるいわば寮舎だ。それに、あそこは築200年を超えていることもあり、少しカビ臭かった。


「ここが一個人の私邸だなんて考えられないな。」


一方で、建物の外観や応接間などはどこぞの王城かと壮麗さに圧倒されたが、あるじの寝室や執務室はまるで質素であった。


「性格なんだろうな。俺もこっちのが落ち着くし。」


ウラジーミル・プーチンは現代のロシア皇帝と言ってもよい人物だ。その経歴は、KGBという秘密警察スパイの出身から独裁者に成り上がったという、ハリウッド映画顔負けのスーパーマンである。


彼は視察中に最新鋭の戦闘機を自分で試乗しパイロット顔負けの背面飛行を披露したとか、デコピンで虎を殺したとか、眼力だけでロシア女性1000人を妊娠させたとか逸話につきない。


「でも、内心は穏やかじゃないのかもね。」


宮殿の窓ガラスはすべて肉厚の防弾ガラスだ。おまけに、すべての窓は光取りの役割に徹しており、開けることは出来ないようになっている。


また、プーチンの執務室に鎮座していたサーベルは刃が潰されていなかった。彼がこのサーベルを手入れしている姿はあまりに似合いすぎて想像に容易かった。


「なんか向こうの景色が歪んで見えるよ。ちょっと気持ち悪くなってきた。」


ぶあつい窓ガラスは、光が屈折して外の景色を歪ませている。もしかしたら、外から中の様子を見えないような仕組みなのかもしれない。


これではまるで籠の鳥だ。守られているのか監禁されているのかわからない。


「寝室がシンプルなのも護身のためかもな。」


部下や侍女に裏切り者が混ざっており、爆弾でも持ち込まれたらひとたまりもない。不審物を察知するために極力物を減らすという考え方なのだろう。


ここまでして権力にしがみつく理由はなんなんだろうね。俺だったら途中でイヤになっちゃうよ。


そうそう、さっき面白いものを机から発見したんだ。プーチンの日記だ。


ロシア語は読めないので、内容はわからなかったが、犬と2人の少女の写真が挟まれていた。


世界最恐の独裁者も、ただの家族思いのパパなのかもしれない。






ひととおり宮殿内を探索したところで、執務室に戻ってきた。


もう夏も目の前に迫ってきているが、ここロシアではジャケットを手放せない。


広大な敷地を有し見上げるような高さの天井をもつこの宮殿は、暖房の効きがとにかく悪かった。


「ココアが手放せねえ。ココアが。」


糖はいわば燃料だ。人間は糖をエネルギー源として体内で熱を発生させ、体温を保つことができる。


「マジかよ。なんてこった。」


今俺はココア片手に、ネット検索をしていた。そう、プーチンの家族についてだ。


そこで衝撃の事実を知らされることになった。


プーチンの娘は今ではもう30を超え結婚もしていた。さきほどの可愛らしい娘の写真は20年も前のものだったのだ。


パパの中では娘っていうのはいつまでも少女なのかもしれない。うん、きっとそうなのだ。


ペットの犬に関してはスルーしよう。決して今、家族関係が悪いわけではないはずだ。奥さんとは離婚したらしいけど、ロシアでは2組に1組は離婚するらしいし珍しいことじゃない。


パパは決して過去に生きているわけじゃない。だってあの皇帝ウラジーミル・プーチンなのだから。






「それにしても、ここは国家機密をあさり放題だな。」


ここというのは2ch世界のことだ。


2ch世界は、俺が最初に扉を開いた時点から独自の時間軸で時を刻んでいる。しかしなが、プーチンの日記のようなプライベートすら自由に手に入れることができるのだ。


もちろん、現実と枝分かれした後の情報を得ることはできないが、それでも直近の情報ならばいくらでも覗き見ることができる。


だからって何かしようというつもりは無いんだけどね。


「さて、そろそろ真剣に考えなきゃな。」


俺は執務テーブルの端に飾ってあったテディベアに話しかけるように呟いた。赤いリボンでおめかしされたベアの後ろ足には『Dear Papa』と刺繍が施されている。


「俺は、何をすべきだろう。俺は何をしたいんだろう。」


俺はここにきて、今後の身の振り方を考えることにした。






「俺は世界を創り変えたい。誰もが幸せに暮らせるような世界に。」


こどもじみた発想に聞こえるが、これが俺の目ざすところだ。俺にはその力がある。


俺は天井を見上げる。


こんな、多数の人々から吸い上げた税金でひとりの人間が贅沢をすることは許されない。


俺のアーツを使えば、世界中の人々全員がこの宮殿レベルの住まいで国王並の贅沢をして過ごすことも可能だ。


贅沢をすることがイコール幸せではないが。


「漠然としたものだけど、みんな楽に暮らせたらそれがベストだよね。」


家族の生活のためとはいえ、やりたくない仕事に人生の半分を費やさなければならないのが現実だ。


もちろん、仕事が好きだという人も少なからずいる。しかし、一生困らないだけのお金を手に入れてなお、今の仕事を続けたいという人はどれほどいるだろうか。


働き世代の死亡原因のトップが自殺というのが、この国の真実を反映しているといえるだろう。


「衣食住そして娯楽の提供。それも十二分な量を供給する。」


日本国憲法第25条にはこのような記述がある




『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』




日本国民はこの理念のもと、必要な者は生活保護費などを受けることが出来るのだが……


俺はこんなものでは満足できない。


「最低限度の生活?そんなもので幸せなハズないじゃん。」


四季に合わせた機能的かつファッショナブルな衣服、のびのびと生活できる十分に広い敷地をもつ住宅、健康的かつ多彩な食生活。


そして幸福な人生に必要不可欠なのが娯楽や趣味、そして生きがいだ。


別に日本の制度を否定しているわけではない。生活保護という制度自体がない国もたくさんあるんだ。


だが、持てるものがさらに肥え太るばかりのこの世界は、どげんかせんといかん。


怠け者が苦労せず贅沢できる世界、これが俺のめざすところだ。


「まずは慎重に。バレないこと、これはマストだ。」


俺自信はバレることは致命傷にはなりえない。核ミサイルで吹き飛ばされようが、睡眠中に寝首をかかれようが、俺に危害を加えることは何者もできない。


しかし、俺の周りの者はそうではない。


俺に向けて核ミサイルが打ち込まれようものなら、家族が巻き込まれてしまうのだ。それだけは避けなければならない。


俺は聖人君子じゃない。自分が不幸になってまで、他人を救おうとは思わない。


そうそう、神様って殺生禁止じゃないらしいよ。意外なことに、聖書の中では悪魔より神様のが人をヤッてるそうだ。


俺も、大切な物を守るためなら、ためらうことはないだろう。


「色々とやるべきことが見えてきたな。いっちょやりますか!」






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