原初の神
平等は格差を生む。
平等は決して幸せなどではない。
なぜ、原初の神は善と悪を作ったのか。悪は必要だったのか?善だけではダメだったのか?
《……神は愛だから。》
イーダ?それはどういう意味だ?
《神は絶対なる善よ。人々を導く希望の標よ》
アウラ?何が言いたいんだ?
《原初の神は、自らをそう肯定した。そしてそれがこの世界の根幹をなすルールとなったわ。》
《光と闇。愛と憎しみ。善と悪。全ての理は表裏一体でなければ存在なしえない。》
つまりは、幸福は不幸があってこそ成り立つ……ということか?
《そうね。人々は楽しいことばかりでは生きていけないように作られたの。幸福があたりまえになると、それをつまらないものだと感じるようになるわ。》
《あなたがいくら貧困を無くしても、人々はさらに豊かさを要求するようになるわ。》
それならば、俺は彼らに豊かさを提供しようじゃないか。
《豊かさに慣れてしまった人々は、贅沢を要求するわ。》
ならば、俺はそうしよう。贅沢を与えよう。
《贅沢に慣れてしまった人々は、承認欲求が高まるわ。そして権力を求めるわ。それは自身が他人よりも優位に立つことで満たされるものよ。》
《そして、彼らは蓄えた財を失うことを恐れるようになるのよ。己の富と権力、そして美を失うことに怯える日々を送ることになるわ。》
そんなものは間違っている。そんなものは本当の幸せではない!
《そうね。そもそも、人々は幸せが何かを知らずに生きているのよ。》
俺は、どうしたらいい?どうしたら皆を幸せにできる?
《あなたはその答えを知っているわ。》
俺は、そうあるべきだと思っている。しかし、それが本当に良いことなのか確信がない。
《誰にも正解はわからないわ。でも、原初の神でさえ完璧でなかったことは火を見るより明らかだわ。》
人々を縛り上げる原初のルールから開放させなさい。
そして、表の反対が表となり得る新しいルールを示すのよ。
あなたは、俺は、わたしは、新たな世界の神となり人々に真の幸福をもたらそう。