0、、、、、名前もない日
「貴方はまた、問題ばかりして。」
ヒス先生の平手打ちが飛んできた。頬が赤くそまり、じんわりと痛んだ。
「こっちに来なさい。」
手を引っ張られる。連れられる先は分かっていた。朝が来たのも分からないほど真っ暗闇の“お仕置き部屋”。
一週間って所だろうか。
「無礼者。」
ヒス先生を睨み付けた。ヒス先生と目線が絡み合う。様々な感情が見え隠れた。怒り?哀しみ?いや…“侮蔑”。
「自分で歩けます。」
手を払いのけ、立ち上がった。ヒールを鳴らし、歩く。音が鳴る度、生徒達から笑い声があがった。
「…エラ。」
その中から心配そうな声が1つ上がった。
“…フェリス。”
心の中で彼女の名を呼んだ。フェリスは前に飛び出そうとして来た。周りに止められ彼女は行く手を阻まれた。私はその様子を横目で見ながら、歩き続ける。心の中でごめんなさい、と謝りながら。
重厚な扉の前についた。先生が少し錆び付いた鍵を鍵穴に通す。
「そこで少しは頭を冷やしていなさい。」
先生の勝ち誇った顔に、私はスカートの端を持ち顔に笑みを称えたまま御辞儀をした。
「ご足労感謝します。」
少し怯えた顔は、光りと供に閉め出された。後に残されたのは、暗闇と静寂。私は窓の鉄格子に手をかけた。ガチャ、無機質な音がする。そこから出る外の空気を吸い独り言の様に呟いた。
「物語のラストは変えられない。…いや、変えてはだめ。」
そう、そうよ。その為に私がすべき事は…。
「その為には…誰よりも気高く、誰よりも悪い、悪役でなくちゃ。そして、最後は…最後は。」
暗闇の中で口角を上げた、私はちゃんと笑えているだろうか。
「私は、死ぬの。そして、全てはハッピーエンド。」