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僕の可愛い娘たち  作者: 881374
終章、夢の続き(エンドレスサマー)。
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終章、本文(丸ごと全部)

  終章エピローグ夢の続き(エンドレスサマー)



「──赤坂あかさか君。お願いがあるの」

 二学期も早二週目に差しかかったある日の放課後。僕は麗しの生徒会長殿から久方ぶりに、二人っきりでの残務処理を仰せつかったのであった。


 ……何かこれって、いかにも嫌な予感がするパターンだよなあ。


 うんざりとするほどに数々の不可思議な出来事に見舞われた夏休みも終わり、ようやく日常を取り戻せたことにホッとしつつも、なぜだか一抹の寂しささえも感じられる九月初め。

 会長やたつ部長を始めとした未来の『娘』の精神体に憑依されていた女性たちは皆、自分の記憶が数十日間にもわたって抜け落ちていることに戸惑ってはいたものの、そのほとんどが夏休み中であったのでそれほど学生生活や教職員業務においては支障はなく、みんなすぐに落ち着きを取り戻していった。

 予想していた通り『娘』であったときの記憶はまったく残っていないようで、僕との間の関係も皆それぞれに以前同様の極普通の交友関係へと戻っていた。

 特に会長なんかはあれだけ人懐っこくじゃれついていたことがあたかも嘘であったかのように、極一般的な他人行儀な様になってしまっていた。

 今もちらちらと彼女の様子をうかがってはみるものの、その姿はまさしく優秀なるやり手の生徒会長そのものでしかなく、あのおちゃめで子供っぽいひと夏だけの『娘』の面影なぞ微塵も感じさせはしなかった。

 ……まあ結局のところ、あれは夢を見ていたようなものだったのかも知れないな。

 そう。もはや記憶の中のみにしか存在しない、僕だけの『娘』たち。

 いつしか僕があの夏の日々の夢から完全に目覚めてしまえば、存在そのものが消え去ってしまいかねない儚き幻。

 だったら永遠に存在させるために、この僕が形にしてやろう。

 彼女たちとのあの夏の日々の思い出のすべてを、一篇の小説に書き留めよう。

 タイトルはそう、『ぼくわいむすめたち』にしよう。

 あの夢の日々(サマードリーム)を、未来へと語り継いでいくために。


「──ところで、赤坂君。夢っていったい何なのでしょうね」


 そのあまりにもこちらの胸中の思考とシンクロした唐突なる少女の言葉に、思わず口の中のものを吹き出しそうになった。

 振り向けば意味深な笑みをたたえながらこちらを見つめている、黒曜石の瞳。

「……え、ええと、会長?」

「一説によれば夢は単なる過去の記憶の再生だけではなく、事によると()()の出来事を垣間見ていることすらあるそうよ」

 み、未来って、まさか⁉

 そのいかにもジャストミートな言葉の連続にもはや頭の中は真っ白となり、ただ固唾を呑んで聞き入るばかりの少年へと向かって、更に驚くべきことを告げてくる深紅の唇。

「……実はね、赤坂君。今からとてもおかしなことを言うようだけど、笑わないで聞いてね。私この前、あなたの娘さんになった夢を見たの」

 ──なっ。それって⁉

「あなたが何らかの文筆業に従事して自宅で仕事をしていて、まだ幼い私が何かとまとわりついていくの。あなたったら仕事の邪魔をされているというのに嫌な顔一つせずに、私のことを心から可愛がってくれるのよ。そしてそのうち私そっくりな女の人が帰ってきて、三人一緒に買い物に行ったり食事をしたりするの。──ねえ、赤坂君。これっていったい何だったのでしょうね」

「な、何だったのって……」

 まさか、「それはきっと予知夢ですよ」、とは言えないしなあ。

 本当に何なんだろ、これって。ひょっとして会長の中に『ヒカリ』の記憶の一部が残っていて、夢として再生してしまったとか?

「ごめんなさいね、急に変なことを言い出したりして。でも、これだけはあなたに伝えたかったの。私その夢の中で、とても幸せだったのよ」

 ……え?

「私もこの人の娘として生まれていたなら、どんなに幸せであっただろうかなんて思ってしまったわ。もちろんそんなことは今さら叶わぬ夢だけど、せめて自分の『娘』が将来こんな幸せな生活を送れるとしたら、さぞかし素晴らしいことでしょうね」

 そう言ってどこか寂しげに目を伏せる、生粋の名家の御令嬢。

 今彼女の心を悩ませているのは、いったい何であろうか。

 家柄のことか、両親のことか、最近つき合い始めた大学生の男のことか、それとも──。

 たしかに僕たちには自分が生まれた環境や親を変えることなんか、けしてできやしない。

 でもそれが、未来なら?

 たとえたわいのないたった一言であったとしても、誰かの未来を大きく変えてしまうことすらもあり得るのではなかろうか。

 そのように、夢の中の自分すらも羨むほどに現実の自分自身をあきらめきっている少女の姿を見ているうちに、つい僕はけして言わぬと決めていたことを口走ってしまっていた。

「──か、会長。これから卒業までの間の高等部在学中はくれぐれも、男性関係のほうには御用心なさってくださいね。特にちょっと年上のいかにも世慣れた口のうまい金持ちのボンボンなんかには!」

 ……あれ? 僕は何を余計なお世話的なことを言い出しているんだ。

 見ろ、会長も呆気にとられてしまっているではないか。

「うふふふふ。おかしな赤坂君。この私がそんな軽い男の方に騙されたりするわけがないじゃない?」

「そ、そうですよね!」

 ……いや。騙される恐れがあるからこそ心配なんですけど。

 するとそのとき少女が唐突に僕のほんの面前へと迫りきて、両手を握りしめたのである。

「か、会長⁉」

「それにね、今私が興味を持っているのはどちらかというと、年下の殿方なの。その人だったらきっと、自分の娘を何よりも可愛がってくれると思えるから」

 目の前に見えるのは、清純さの中にどことなく妖艶さをも秘めながら煌めいている、黒曜石の瞳。

 そ、それって──。

 気がつけばまさにこのときの僕たちは、放課後の密室の中で、年頃の男女二人っきりの状態となっていた。

 そしておもむろにゆっくりと近づいてくる、鮮血のごとく深紅の唇。

 何だこのいかにもな、ギャルゲかラノべそのままの展開は⁉

 あこがれのお嬢様生徒会長が突然自分に好意を示して、あまつさえそのまま迫ってくるなんて。

 そんなことなんか、現実にあり得っこないじゃないか⁉

 やはり今までの騒動のすべては、虚構フィクションか誰かの邪気眼妄想にすぎなかったのか?

 だったら僕は主人公プレイヤーとして、どこかでシナリオ選択を間違ってしまったのだろうか?


 そのときあまりに予想外な事態の展開に完全に混乱をきたしていた僕の脳裏に不意に蘇ってきたのは、今はもういないひと夏だけの『娘』による託宣の言葉であった。


『──そう。お父さんとお母さんが結ばれたのは、本当は今年の九月だったの』

 最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

 初めましてあるいはお久しぶり、881374と申します。

 ちなみに881374は、『ハハ、イミナシ』と読みます。

 もちろんこれは本名ではなくペンネームですが、実は私はかつてニュースにしろドラマにしろテレビに名前が出てくる回数が最も多い、日本で一番有名な某お役所に勤めていた経験があったりするのですが、この881374といういかにも意味不明イミナシな数字の羅列は、その当時の激務の日々の思い出にまつわるものであります。(※あまり詮索すると、怖いおじさんたちにしょっぴかれるかも知れませんので、ご注意を!)

 このたび『第六回ネット小説大賞』応募記念新作長編三シリーズ日替わり連続投稿企画の第二弾作品、『時間SF=ギャルゲ⁉』をキャッチフレーズとするこれぞタイムトラベル物の革命作にしてアンチSF小説の急先鋒『僕の可愛い娘たち』におきましては、今回の最終話の投稿をもちましてめでたく完結いたしました。

 長らくのご愛読、誠にありがとうございます! これもすべて、読者の皆様のご支持ご声援のお陰です!

 連載途中の後書きにおいては、本作──特にその中核を担う『時間SF』の概念については、現在の作者自身の考えとは異なっているなんて記したりもしましたが、そんなことはまったくありませんでした!

 それと申しますのも、今回の最終話の投稿に当たっての推敲の際に気づいたのですが、何とエピローグに来て初めて本来の自分に立ち返ることができた山王生徒会長殿のお言葉として、

「……実はね、赤坂君。私この前、あなたの娘さんになった夢を見たの」

「一説によれば夢は単なる過去の記憶の再生だけではなく、事によると()()の出来事を垣間見ていることすらあるそうよ」

 ──なんていうのがありましたが、実はこれって、現在も連載中の『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』や『夢見るメガミは目覚めない』において、私が思想ベースにしている量子論や集合的無意識論に則れば、山王会長は時間の前後関係や世界の垣根すら超越してありとあらゆる存在の『記憶』が集まってくる、全人類共通のデータベースである集合的無意識に夢を通してアクセスして、可能性の上では『本物の未来人』であり得るヒカリの記憶や知識を脳みそにすり込まれて、目が覚めた後でも『夢の記憶』に引きずられる形で未来人であるヒカリとして行動していたとも言えて、何と現実性リアリティを一切損うことなく、しかも現在における私の主張に則る意味からも、肉体的にはもちろん精神的にも時間や世界間の移動(つまりタイムトラベルや皆さん大好きな異世界転移の類い)を一切行うことなく、まさしく現在の現実世界に本物の未来人(の記憶)が存在していたことにもなり得るのです!

 本作作成中にはあくまでも物理学や心理学特有の理論である量子論や集合的無意識の存在すら知らなかった自分が、どうして本作のような作品を創り上げることができたのか、我ながら不思議なほどです。

 ──そういったこともありまして、とにかく今となってはすべては感無量であり、この作品を投稿し続けて本当によかったと思っております。

 もちろんこの作品で得た成果をこれからの執筆活動に存分に生かしていくことによって、現在連載中の『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』や『ツンデレお嬢様とヤンデレ巫女様と犬の僕』は言うに及ばず、まったく新しい作品づくりにも大いに励んでいく所存ですので、読者の皆様におかれましても、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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