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№009 この物語はパロネタが多分に含まれております 【そらくんのうっきうき魔導刻印講座】

今回もネタ祭り


どうぞ是非、お飲み物なんかを傍らにお気楽にお読みください



「突如見知らぬ世界へ呼び出された高校生5人の男女、現代日本の常識というチートを活用し、彼ら彼女らは異世界に足跡を残してゆくことになる。 そんな中、年下ということで取り残されてしまうひとりの少年。 でもでも負けない! 僕はそれまでに培った技術と戦略できっと異世界を生き抜いて見せるんだから! 次回、魔導学士そら。そらくんの愉快な魔導刻印講座! 次回も、そらくんといっしょに、レリーーース!」



 そして部屋に響く、何処かで耳にした覚えのあるファンファーレ。

 無駄に幼い声音でやり切った烏丸くんに、ボクらは胡乱な目を向けていた。



「…………何してんの?」


「前回までのあらすじと次回予告ごっこですが、何か?」



 BGMをかき鳴らしたのは何処からか用意した星の意匠を象ったオモチャで、それを片手にあっけらかんと応えてくれる後輩がそこにいた。

 ていうか、ほんとに何してんのこの子。



「昔取った杵柄といいますか。元ネタになったアニメがやっていた時期が丁度主人公の子と同年代でしてねぇ、友人らと一緒になって観ていたものでついつい覚えてしまいました。今では俺の持ちネタです」


「突っ込みどころが多すぎて……!」



 特命係の警部殿みたいにアルカイックな微笑でしみじみと語る彼を尻目に、思わず頭を抱え込む。


 確かに烏丸くんの声は男性的というよりは女性的な少年声なので、その挑戦は無謀というほどではない。

 喩えて言うならばコラボCMなんかで、シュパッ! ドーン! 完璧だなッ! と口走っていそうな、そんなCV(声音)だ。


 でもなんだろう、彼のリベラルな人間性を予め知っていると、こう、言いようのない不快感が。



「ちゅーか、キミ、そういうおちゃらけ意外と乗り気なんやな」


「はっはっは。少年期を女子校で過ごしたことに比べれば毛ほどの拒否も抱きませんよ。ノリと勢いで付き合う奴らが大半を占めてましたのでね、こういう道化役を担う程度、そらくんにかかればにべもない! カラオケなんかでもカッコつけるよりは女性曲で距離感縮めるほうに精神傾けてましたしね!」


「言葉の扱い間違ぅとるよ、きっと」



 語調は力強いけど、言い分聞くうちになんだか声が震えているようにも聴こえてくる不思議。

 見た目はエグザ●ルとかケミ●トリーとかバ●プとかで声で耳を孕ませる気満々のチャラい人種(偏見)だが、異性にモテるより周囲に取り残されないように配慮するほうを選んできたと明言するのならば、彼の知る娯楽はボクらの知るモノとはかけ離れているのでは、と弱いツッコミを入れたカイチョーと共にやや憐憫の眼差しを傾けてしまいそうになる。

 A●Bとか歌ったのかなぁ。



「ちなみにどんなのを歌うの?」


「ホライゾンⅡのエンディングとか歌います。GO!」


「おいちょっと待て」



 元気良く片手挙げてテンポの良い発音でサビの辺りを口走る彼に待ったをかけた。

 ●ASRACは怖くない、異世界なので。でも問題はそこ(歌詞)じゃない。


 アニソンかぁ、奥井●美かな。と普通ならば応えているところだが、彼の場合だとやはり違う。

 あの良い歌をキミが口遊むことが酷く不快なんだけど、というかキミの人間性からその歌を歌うのは冒涜以外の何物でもないよね? と思わず笑顔で迫真に詰め寄るボクがいた。

 趣味が似ててハッピーだね? 今はそんな話してるときじゃないでしょ。戦争だ。


 あと今更ながら、世紀末に放映していた例のアニメって(201X年現在)から10年以上前だから、主人公と同年代というと違和感が……うん、やめようこの話!

 思わず思考を止めたが、なんなのだろう、この寒気は。



「おい、そろそろ話を進めたらどうだSS後輩」



 少々怖い口調で声をかけてきたカナちゃんに言葉の意味を即理解したのか、これは白髪ですぅー! 銀髪じゃねーですぅー! と直ぐ様突貫する後輩がそこに。地毛だったのかそれ。ボクらも他人のことは言えない髪色だけど。


 直前まで、ならば茅●実里を歌いますが、それもダメでしょむしろ普通に男性曲に戻しなさいよ、とプチ険悪に言い合いしていたボクらだったのだが、ああしてじゃれつく仕草を見ると微笑ましいものが思わず浮かぶ。

 大型犬にちょっかいをかけに行く黒猫のようでもある、肌の色的に。



「SSってなんや。ショートショート?」


シルバー(S)シット(S)じゃないかな」


「ああ、言い得て妙やな」



 ボクもまた元ネタを知っているので、尋ねてきたカイチョーに答えれば納得されてしまった。

 うん。肌黒いし、女性との絡みがR指定だし、近似値だよね。誰とは言わないけど。




  ◇    ◆    ◇    ◆




「さてさて、はずれガチャしか引いていないのに心待ちにしている人がいらっしゃるので、そろそろ始めましょうかね」


「嫌味か貴様……ッ!」



 無駄に笑顔でからから語る後輩に、こめかみに井形を滲ませるイケメン幼馴染という相方で講座が始まった。

 なんか急に仲良くなったなぁ、あのふたり。



「はずれとは言いましたけども、ぶっちゃけあのガチャって物欲センサー働いてないんですけど」


「え」



 え? そうなの?



「運営してるのは俺ですよ? 本人が欲するモノを引き当てられるような、その辺の配慮はしてありますよ。でないと、こういうサバイバルな日常にぶち当たったときに付与する意味もないでしょうに」


「…………こんなさらっとアニメネタをぶちまける後輩に諭されるなんて……っ」


「いいかげん失礼にもほどがあるでしょう先輩」



 つまり、ガチャが外れたのはカナちゃん自身の危機意識の問題で、烏丸くんがわざとあれらを当てていたってわけでもないってことか。

 というか今なんかネタ挟まれてた? どこ?



「文句を先に吐かれてしまいましたので皆さんに施した『大枠』の説明から始めますが、」



 改めて、お手元の【刻印】をご覧ください、と促されて意識を向ける。


 手の甲にあるそれらは、【Status】【Storage】【System】の3つを立体に浮かばせて、スライドさせて回るように表示箇所が入れ替わる仕組みだ。


 無駄に近未来型高機能な3D画面を手元に用意されているのだが、此処まで滑らかに動く立体投影はどんな液晶でも見た覚えはない。


 技術力の高さには「すごーい!」と称賛するよりも「ええ、なにこれぇ……」とドン引きする程……、造り込まれているのが理解できた(思考停止。



「先に言いますと『それ』も【魔導刻印】と俺が呼ぶモノとほぼ同じです。とはいっても、それぞれ『自分を覗く』『所有物の確保』『自己の管理』という目的に沿っていますので、本来の【刻印】とはカテゴリーは別ですが」


「そうなんか?」


「ええ。本来は『自分の中にある可能性を突出・発現させ表出したモノ』を形として認識させるためのモノが【刻印】であり、皆さんの中に予め流転しているモノを指します。ぶっちゃけ、先ほども言った術式阻害遺伝子なのですが」


「お、おおう?」



 あれ? と、彼の言葉に身を乗り出すボクら。

 というか、それって魔術師になれないそもそもの原因だって、キミが言ってなかったかなぁ!?」


「口に出てますよ。まあそれですがね」



 あっけらかんと言葉を続ける烏丸くんに、疑問符ばかりが頭に浮かぶ。



「魔術、現代魔術は先ほども説明した通り、自身の存在周波数を増幅して現象へと転換する仕組みが主流です。 増幅の方法は色々とありますが、大前提として自らを『純化』させないと始まらないという点があります。 その純化のために昨今の魔術師の方々は修行したり瞑想したり改造したり、と日々研鑽を積んで自分たちまたはその系譜を追い込んでいるのですが、遺伝子に阻害するものが仕組まれている以上、日本人には魔術師へと転向することは不可能なのだということですな」


「……途中みょんな注釈が挟まった気がするけれども……。なんで日本人だけ?」


「土地がそういうものだ、という説もありますが……更に踏み込んだ話になると俺の口からはどうにも。といいますか、本題は別ですので置いといてください。そういうものだ、と」



 長野奥地の言語をナチュラルに使いつつ尋ねれば、なんか、奥歯に物の挟まったような言い方で話を〆られた感がなくもない。


 あるのか、その先が。

 烏丸くんで()()も言い淀むような、何かが。


 ボクたちは聞かなかったことにしつつ、話の続きを無言で促していた。



「さて。 魔術を使えなくなった代わりに、日本人は様々な異能を身に着ける可能性を備えています」


「おいちょっと待て」



 カナちゃんが待ったをかけていた。

 さもありなん。



「異能ってなんだ異能って。そんなの傍目にしたことなんて一度もないぞ」


「そりゃあ表立ってはないでしょ」



 そうして思い出すのは、日々各地で起こっているオカルトに類する事件の数々。

 しかしそれは噂の域を出ず、しかして解決に乗り出すのは政府側、すなわち国主導だと……。



「そもそも、教育政令指定都市が生まれた背景はそこです。 キンジョーちゃん先輩が言い掛けましたが、前提が間違ってるんですよ。 能力開発なんてする必要はなく、能力を抑制する目的のために集められていたのが『俺たち』なんですから」




  ◇    ◆    ◇    ◆




「【Storage】には『自分に』所有権があるモノであれば何であれ収納できますよ。 劣化する心配もなく、収納制限もありません。 そして使用権利も本人に準じますので、荷物の出し入れも本人以外には干渉できません。 ちなみに『入れるモノ』には命の有無や意識の有無も制限がないので、」


「「「待て待て待て待て」」」



 なんか一回暗転したような間の後に、出てきたのは変わらずの説明だったことに、ボクとカイチョーとカナちゃんが合わせたように待ったをかけていた。

 いやほんとに待て、なんか重要そうな話が出て来たけどそっちは放置!?



「なんか重要そうな話が出て来たけどそっちは放置するんかい!? さらっと話し換えられる思うたらそうはいかへんぞ!?」



 カイチョー、言葉が荒い。

 思ったことが被ったが、まあそれはいいとして、しかし話には流れというものもあるので、語りかけたのなら最後まで話して欲しいよ。



「いや、でもこれ長いですよ? もう異能が目覚める前提が日本人にはあって発現した奴らを集めたのが教育政令指令都市で抑制する日常を教育しつつある中で俺が開発したのが【魔導刻印】です、と結末出たのならもう良くないですか?」


「いいわけあるかい!?」



 うおお……! ワンブレスで語ったけどそれ、国にとってかなり機密情報じゃないのか……!?

 ていうか、それがさらっと出てくるってことはもっとやばい話も裏にあるということでは……?



「えぇー……? じゃあ、ひとつだけ。 この国の教育機関は才能や個人を否定はしませんが、根本的な部分での方向性だけは変動させません。 それが大事で、必要だからです。 結果として、俺たちのようなアウトローな異能持ちも住み分け在りきで、こうした様々な開発や発展に貢献しているわけですね」


「それがどないして、ん……? あ」



 ん?

 えーと、教育機関の定めることが、結構ボクらの学ぶ事柄にも反映して、そもそもそれらを先立って言い方が悪いけど実験として指定されているのが教育政令指定都市だよね。


 で、そもそも作られた前提が異能というオカルトじみたモノを持つ子供たちを抑制するための施設だけど、その中で開発された技術が【魔導刻印】……?


 あれ? なんか矛盾してない?



「……。ふぅん、生物無生物問わず、ってことは『自分』も収納できるってことやな」


「ええ、お察しの通りです。ただ干渉できるのは変わらず『自分』ですので、中に入ったら二度と出られなくなりますからご注意を」


「そんな危ないもんさらっと寄越すなや」



 え、ええー!? 何事も無かったかのように話を再開したよ!?


 ていうか怖っ、【Storage】怖っ!?

 ただの収納庫かと思いきやとんだ危険物だ!?



「えーと、中からは干渉できないってこと?」


「できませんね。収納された物は劣化しない、って言ったでしょう? 収納した段階で概念的な凍結が施されますので、中は停滞した状態なのがデフォなんですよ」



 カイチョーが何某かを察して話に触れたくなさそうだったので乗っかってみる。

 こういうのって普通にやべぇ橋を渡ってるんだって、ボク知ってるよ。

 だからカナちゃんも、不満そうな顔してないで話題を変えよう。


 ていうか、普通に凄くないか、この【Storage】って。

 時間干渉とかそういう部分に手掛けてる気がするのは気のせい?



「……。それは、要するに中の時間を停めている、と認識すればいいのか?」


「そういうこともできますけど、それを組み込むとリソースの消費が激しいので別方式です」


「別?」


「情報に圧縮しておけば再顕在化の手間だけで済みますし」



 ボクとカイチョーの思いが届いたのか、カナちゃんもまた話に乗ってくれていた。

 しかし、なんだろう、烏丸くんの説明にやや不穏な点が伺える。



「……情報圧縮?」


「えーと、物質の状態は観測時と非観測時には差異がある、っていう理論を使っているのですけど。なんとかの猫だったかな」



 シュレディンガーやないかい。

 方程式とかではなくて理論補強の段階でしかないけど、それを実行に移しているってガチでどういう理屈が働いているんだ。


 詳しい理屈はわからないが、とりあえずこの刻印(Storage)のことは『にゃんこボックス』と呼んでも過言ではなさそうである。

 長いか。



「あくまで所有物の確保と管理だけですので、中身を書き換えるような干渉性能は有しません。 すでに回し終えているガチャの中身は当然ですが、後からもっと何かを仕入れることも可能です。 続いてガチャの説明に移ります」



 急に運営染みた機械的な言い方に変えたな。

 まあ、いい加減に話を進めるべきか。今回なんか脱線が多いし。



「初回サービスとはいえ宝石を対価にアイテムを放出する仕組みですから、回す側の無意識に則って必要なモノを適度に吐き出します。 ゲームに例えるとはずれもいいところですが、現実に准えれば悪い取引でもないでしょう?」



 言われてみれば、ボクら女子組は着替えや洗顔フォームに洗髪剤といった『長旅で最低限必要なモノ』を拾った上で、【魔導刻印】という『自衛に役立ちそうなモノ』まで引き当てている。

 宝石50個消費と換算するとぼったくりにも聞こえてくるが、緊急の場合と先々を考えれば無駄使いとは言い難い。

 しかし――、



「……それなら最初っから、ネット通販みたいなシステムを採用していれば良かったんじゃぁない……? 日用品を買うのに宝石消費は手痛いよ……」


「俺に何をどう仕入れろというんですか、あーたは」



 烏丸くんならできそうな気がする。

 そんな思いを込めて眺めていれば、胡乱な目つきを変えないままに彼は続けた。



「悪ぃですがね、流石に異世界に来ている以上は手元の何かをやりくりする程度しか及ぶところなんてないでしょうよ。使用に差異の無い日常品を引っ張ってこれただけでも不備がないって思ってくださいよ」



 ちなみに放出されたアイテムを、例えばシャンプーなんかを取り出して見れば、ロゴには日ごろ見慣れた市販品の証が。

 確かに手元にやりくりできる何かがある時点で充分不備もないのだろうけれども、こんな風に既製品を放出するような真似をしている時点で説得力はない。


 そんな意味を込めて胡乱な目を返すボク。

 すると「それは『そういう品』を再現しているだけです」と、尚も言葉を続けられる。



「だから【Storage】で管理する限り、中身は相応に補充されるかと。契約上、対価さえ支払えば必要なモノを必要なだけ補填するのがそれの性質ですから」


「いま契約って言った?」



 何か聞き捨てならない単語が挟まっていたのだが、返ってくるのは「おっと」と口元を押さえ顔を逸らす烏丸くんだけであった。


 閑話休題。



「まあもともとサバイバル時にどれだけ扱えるかの実験も兼ねてますので、モルモットとして是非とも活用してやってください」


「それやと施された当初の理由と反しておらんか?」



 だんだんと説明が雑になってきている気がする。


 実際、カイチョーの言った通り、元は口止め料としての名目が一応はついていたこれらの『異世界転位生活サービスセット』なのに、この後輩とうとうモルモットときっぱりはっきり言いやがった。

 しかし悪びれることもなく、烏丸くんは鼻で笑う。



「俺の手が及んでいますが、正直中身に関しては対処し兼ねます。悪いモノは出ないはずなので、是非ともお使いください」


「おい!? 態度と言動が真逆だぞ!?」



 尚も何かを隠し続けているようにしか見えないのだが、カナちゃんが突っ込んでもアルカイックに言葉を躱して説明を引き続ける。言葉を交わしてくれ。



「それでは小分けに配布された【魔導刻印】の本領について説明します。まずは装備しないと意味がないよ!」



 RPGの村人みたいなことを言う。

 しかし言うことはもっともでもある。

 でも装備と言われても。



「お手元の【Storage】より【Crest】を選択し、タップしてください」



 言われて、再び【Storage】の中身を覗く。

 【Crest:雷汞】を選択し、タブレット初心者のように恐る恐る触れてみた。



「指先に貼り付きますので、自分の身体のお好きな箇所に貼り直してください」


「シールか何か!?」



 思わず叫んだが、実際に自分の指先にそれがあるとなると扱いもまた困るというもので。


 というか、触れたときは文字だったが指先にある状態だと文字通り【刻印】だ。

 大枠の奴とはまた別の形をした、八角形の刺々しい代物に見える。


 ちなみにカイチョーのは雪の結晶のような六角模様で、桃園さんのは花を模しているかのように華麗だ。ボクのもそういうのがいいんだけど。



六花(りっか)雷汞(らいこう)、それに芙蓉(ふよう)ですか。そろいもそろって可能性の塊ですね」


「これって良いモノなの? 特にボクの。なんか控えめに言ってウニみたいなんだけど」



 八角だがそのまま角が辺で繋がっているのではなく、針のように鋭角に突き出された形状なので一度思うともうウニにしか見えない。

 胡乱な目が抑えきれないボクの指先では、触れている感覚を覚えさせない【刻印】がゆらゆらと揺れていた。



「良いモノですよ? 基本的にそれらの刻印はその性質を表す形状で見られるようにしていますが、才能という風に呼ぶのなら形になっている時点で重畳といえます。まったくもって妬ましい」


「唐突に妬まれても」


「例えばキンジョーちゃん先輩の雷汞、これは『起』『結』『発』『散』の4つの意味を内包します。 俺自身の刻印を言いましょうか? 『掌握』、これだけですよ? 意味がひとつしか無い時点で汎用性が足りませんから、かなりスタート地点が違うんですよ」



 いきなり解説が始まっていた。

 いや、教えてくれるのならありがたいけど、せめて一言間を置いて欲しい。



「ていうか、最初に意味の通じる言葉になっているんだったら充分扱えそうにも思えてくるけど……。そもそも、雷汞、って何かの薬品じゃなかったっけ?」


「まあ言葉自体はマイトの雷管なんかに使う白色針状結晶そのものを指しますけれども」



 こちらの疑問にあっさりと答える烏丸くん。

 って、ちょっと待て。



「ほかに意味のある言葉なのに意味を内包している、ってどういうこと? 誰が名付けたのさこれ」


「俺ですが」


「キミかよ!?」



 そういや開発した、って言ってたな!

 なおさら何やってんの!?



「いいんですよ、言葉本来の意味なんて。むしろ混乱させるために付けた記号でしかないんですから、その暗号が通じる相手にだけ通じれば充分なんです」


「誰を相手取ってそんな騙すような真似しとるんや……?」


「強いて挙げるなら研究者ですね。まだ開発途上ですから、下手に解析されて利用法を思いつかれてこちらの畑を荒らされるのは嫌なんですよ」



 同じく胡乱な目をしたカイチョーに疑問という名のツッコミを入れられるも、烏丸くんは変わらず人を食った態度のままだ。

 開発途上だというのなら、なおさら大勢の手を借りて大々的に研究範囲を広げるほうが良いような気もしてくるのだが……?

 と、彼の言に小さな疑問を抱いて問おうとしたところ、



「ちなみに扱い方ですが、お好きなところに貼り付けて意識を傾けるだけで効果は発揮されます。なので舌の上や目の中にくっつけて、ちょいと楽しい邪気眼ごっこもできますよ? 初心者へのおススメは逆利き手首に貼り付け、カードスラッシュの要領で技名を叫ぶことですが」


「デジ●ンテイマーズぅ!?」



 こちらの疑問を一蹴する、変わらずツッコミどころ満載の言動で大体が台無しだった。

 ああもう、次回へ続く!



―こまごまと補足―


~レリーーース!

 皆様ご存知、カードを集めてご町内の平和を守る小学生魔法少女

 最近漸く進学したらしい

 え? 烏丸視聴時との齟齬? さ、再放送を視たんだよ!(目逸らし



~ホライゾン

 けっこうご長寿でファンも盛り沢山かつ、それ文庫本やない鈍器や、と分厚さで名を馳せた大容量ライトノベル

 アニメは一期二期共に笑いも涙も誘わずにはいられない出来栄えで、OP・ED曲を聴くと思わず「涙もろくなったかな」と強がらざるを得なくなるのは私だけかしら



~●ASRAC

 頭文字を伏字にしたことには何の意図もないです



~SS後輩

 元ネタだと先輩

 でもうちの子はさすがにそこまでクズじゃないですよw …ないよね?



~魔術に関する補足

 彼らの来た世界での話でもありますが大前提の一端でもあります

 まだこれで情報小出しなんだよなぁ。本格的にやるとなんか別の小論文みたくなる不思議…



~教育政令指令都市設定

 作中でも烏丸が言った通り、開発ではなく抑制が主題

 裏話をちょこっと加えると、それなりに異能者という分類の、近代・戦時には超能力者と呼ばれていた方々が、先立って紹介された地方を中心に研究目的で集められていました

 そこからなんやかんやが挟まって今に至りますが、その辺りは話がもっと進んでからということで

 本音を言うと早めに消化したいのですが



~ガチャ

 魔導刻印を宝物殿の悪魔・ルキフグスと才能発掘の悪魔・クローセルの契約紋章で緻密に織ったモノが【大枠】と呼ばれる刻印の正体。契約というのはそういうことで、宝石を消費する理由もそういうことです

 多分先々出ないだろうのでこの場で書きました



~デ●モンテイマーズ

 もしくはコード●アス

 なおシリーズの中では作者が一番好きなストーリー。冒頭と合わせて作者の年齢がばれる恐れ。やっばい☆




烏丸がコ●ン化&TSしてクロエ何某を名乗る世界線が他スレッドに存在するらしい…(小声

名前がクロエなんとかになったのは当時の褐色白髪幼女と言えばこれだよね、という話と、クロエ繋がりで丹●さんのCMがあった…という言い訳という土下座をこの場で敢行いたします

ファンの皆様、ホンマすんまっせん…っ!

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