№017 烏丸イソラという登場人物 【=作者じゃありません】
説明回。なので俯瞰視点です
しかし描写も無い回想なので、ジョジョ立ちで恰好付ける烏丸を妄想しながらお読みください
好きなように書けるからこれしゅきぃ…
烏丸イソラは転生者である。
それは仏教的な輪廻転生とはまた別物で、生まれる前にその魂の根幹となった人物が別に存在する、という意味合いを伴ったカテゴリに当たる。
その単語は最近でもそう珍しいモノでもなく、ブラックな社畜だったり未来夢見る受験生だったりクラスカースト底辺を這いずる根暗であったり社会生活に嫌気が差して個人趣味に走るニートであったりする様々な者たちが、トラックだったり神様だったり偶然だったり必然だったり様々な理由で『それまで』とは異なる文化基準の世界へと行き着いたモノ達を指す言葉でもある。
しかして彼の場合、それらとは異なる。
そもそも『人間の本質と根幹が魂である』という思想は明確でも正確でもないという実は信仰寄りの論理があるわけだが、その辺りの問題を主張すると宗教や文化に端を発する議論が始まってしまうし本題でもないから割愛。
そしてそれには別に他人とは違う感を醸し出して優越性を図ろうとかそういった意図は無く、単純に世界(に存在するリソースの割り振り具合を伴った)構成がアンバランスながらも相応の吊り合いに則っているために検算される宇宙法則だという理屈でしかない。
だが納得もしないのだろうから、異を受諾して戴くためにも彼の半生を多少なりとも語ろう。
彼の父親、名を千束 千寿といった。
この人物がイソラという名を、彼自身が嫌うその名を与え、彼が命名した【悪意ある亡霊】の根幹を施した張本人でもある。
しかしそれは子供に親が愛と祝福を以て与えるモノでは全くない、言葉の通りにむしろ真逆の、悪意と呪いをふんだんに込めた『ロクでもないモノ』のひとつでしかなかった。
イソラ(便宜上この名を使う)が通っていた多宝天壌という学園都市は、そもそも成立目的が存在する。
当時以前より『魔法』としてカテゴライズされていた様々な『能力』を備えた子女を日本全国から収集し、教育を施して『ある主上』へと捧げることこそが目的だ。
それはその前身となった千葉にもある学術政令指定都市の存在(そのネームバリューと先進性を魁て開発された新たな学園都市、という名目)があって、その『目的』を尚達成させやすく成立してしまったことからこそ『悲劇』が始まった。
千寿にも居たかつての姉は、件の学園都市に連れ去られて、『主上』へと捧げられた『犠牲者』でもある。
当時以前より『魔法使い』を名乗っていた『主上』らは実のところ全然そんなことは無く、単純に資源の豊富な、国が力づくでも奪うことができない広大な土地を有していた権力者であったことが大きい。
だからこそその資源を笠に着た国家に対するそれなりの発言力はあったのだが、彼らはイソラの手によって悉くが掻っ捌かれて権利を剥奪され、今では件の土地と資源は彼の所有である。
山賊かコイツは。
それはさておいて、当時は現在ほど廃技能の研鑽が行き届いていなかった時代だった、という背景こそあるが、それ以上に国自体も『ある存在』に対抗するための手段を模索していた、という理由もあった。
そのために、当時までには『使い手』は原因不明な『一部』や『魔法使い』である『主上』を除いて女性にしか扱えなかった『魔法とされていた技能』、要するに現在にイソラが【魔導刻印】と名付けたそれを解析する一助として、『主上』らの命に国が逆らうことは許されなかった。
よって、千寿の姉も救われることはなかった。
そんな様々な柵を解消することも目的にあったのだろう。
千寿は魔法と呼ばれる技能の解析と研究に力を入れた。
当然、そのためには検証のために犠牲となる被験者の存在だってあった。
イソラも【悪意ある亡霊】も、あらゆる検証と実験の末に生まれた存在である。
母親の名前は烏丸 千歳。
彼女は多宝天壌に通う、いち学生であった。
半生に悲劇が敷かれているとはいえ、実験と検証を繰り返していた千寿にとって、彼女もまた単なるサンプルのひとつでしかなかった。
学園都市に集められた以上は、彼女たちは被害者であると言える。
だが、『主上』の息がかかった社会に、自らが重ねた『被験者』の数を前にしては、彼女がどうであれ関係は無かった。
そのころの千寿にとっては人間は砂粒よりも無価値で無意味。
数だけあるモノたちを、どう有効活用してやろうか、という観点しか備えてはいなかった。
そうして無理矢理に孕ませられた千歳は、生まれてきた子供を育むことはしなかった。
生み落としてすぐに、拾った煉瓦で頭蓋を潰した。
烏丸イソラの人生は、そこから始まった。
イソラが名付けた【覆水盆に返らずとも】、これは彼が説明した通りに、死んだ者を再構築する術式である。
しかしそれは断じて死者復活ではない。
『死んだ人間は黄泉帰らない』。
これは明確な法則であり、覆してはいけない人理である。
そもそもの発端は、術式の根幹となる【亡霊】が千寿の施した呪詛であることだ。
其処に至るまでの、【被験者】最低50人分の悪意と憎悪の感情の残滓を、子供ひとりに集約した人体実験。
マイナスの方向へ傾いた感情の坩堝は、呼び水となって周囲の感情にも影響を及ぼす。
即ち、方向性を定められた『感情』とは相当数のエネルギーに値する。
故に【五十良】。
出典は『雨月物語』の怨霊であるが、名付けの呪詛だけが怨念の枠ではない。
良いモノと悪いモノとの吊り合いを取り、確立のための枠付けがその名である。
『50以上の犠牲を敷いて良く在れ』。
その『良し』が何に対してのモノなのかは、推して知るべし、だ。
話を戻すと、彼の『復活』は『ほぼ同率の存在』を『再構築』しただけに過ぎず、結果として造り直された『それ』は本人に最もよく似た『他人』に等しくなる。
それは奇しくもキンジョーが語った『GAN●Zや亜人と同じような技術』という表現が最も適しており、同時にイソラ自身が騙った『鏡の門と似たようなモノ』という説明でも間違いではない。
故に、これは死者復活ではない。
単純に『お気に入りの小物が壊れたから同じようなモノを使おう』、という意図とほぼ似たようなモノだ。
先にも語った通り、人間の根幹は魂ではない。
そもそも輪廻転生が推している転生の主体も魂ではないのだが、では意識かと問われるとソレも違う。
意識は脳が発生させるモノであり、同時に物質として常に放出され流転し続けているので人間特有のモノでもない。
というよりは、根幹を追求すること自体が実は間違いなのだがさておいて。
人間は元より、生命と定義されるモノ達が自己を認識すると同時に、意識は主体性を把握する。
要するに、意識の有無と自己の主体が在れば、それは『本人』と呼んでも間違いではない。
イソラは死に瀕した際、自己の主体を複写して自らの領域に同化させていた。
……そもそもが、その『領域』は悪意と憎悪で縒り括られた『怨霊』と呼んで差し支えの無い存在である。
50人分だろうと怨嗟には違いが無く、それを喩えるならば『ホムンクルスに呑まれたキン●リー』と説明するのが最も正しい。
常人なら、そのまま呑まれて消えている。持っていかれる……ッ!
さておき。
彼が最初に発現させて以降ずっとそれ以上に成れない【掌握】の【魔導刻印】が発現していない限り、それは拡散して周囲へ被害を及ぼす。
『領域』の維持は爆発寸前の核を力尽くで抑え込んでいるようなモノであり、その為に『領域』そのものを自身の身体の一部のように扱う必要性があるわけだ。
ちなみにこの効果を利用すると、視覚化されていない稀釈化されたソレは物理的な影響を及ぼせない代わりに、情報知覚だけなら割と何処まででも見通せる。
シャーロットの個人情報を初対面で『掌握した』のも、これが理由であったりする。
千歳がイソラを殺すことは、当然千寿にも予測できていた。
であるならば初めから彼女を囲ってしまえば問題は無かったのだろうが、それができない事情も千寿にはあった。
その『事情』が『主上以上』に嗅ぎつけられたから、ということはさておいて。
予測した上で、希少な実験動物が喪失されないように、千寿は『呪詛の坩堝』の中に意図的に保険を施していた。
それが、自身の記録の複写である。
千寿の下から逃亡し、自らが生み落とした存在が後々に被害を及ぼさないように。
そのような体で、千歳は幼い息子の頭蓋を拾った煉瓦で轢き潰した。
しかし、千寿の保険は正しく作用した。
自らの記録からエネルギーの傾き方を術式として固定し、上記した『再構築』をやってのけたのだ。
以上が、烏丸イソラが転生者である、と語った理屈である。
彼は彼自身の父親の記録を所持している。
それは、つまりは彼自身が千寿の生まれ変わりとほぼ同等だという証明にも成り得るのだ。
喩えるならば『フェ●スレスと勝の関係性』に割と似ている。蛇足だが。
そして、それを殺せないと察することができた千歳にも、呪詛のひとつが掛けられていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
それから、烏丸千歳はイソラを連れ帰った。
その子が何という名を与えられたのかも知ることは無い。
しかし、それを手放すことを許容できない呪詛が千歳には掛けられていた。
それは母の愛などでは当然無く、千寿の施した術式と呼ぶことも無い矯正力だ。
彼女は生む前に、それが何であるかを千寿本人に教えられている。
故に、彼女はそれを手放すことで他者よりも真っ先に自身に起こり得る被害を想定し、手放すことを選択できなかった。
千歳自身も幼かったがゆえに辿った、悲劇の一端である。
余談だが、それは催眠術や隷属化とは別になる。
そもそもが催眠術は本人が否定する事項には手を出せないという前提があるので、何気に使えない技術でもあったりする。
隷属化は手間が掛かりすぎる上に、主人が離れてしまうと『どうなるかわからない』というリスクもある。
サブカルチャーにも抵抗の無かった千寿は「絶対遵守の強制命令権が実在すればいいのに」と愚痴っていたこともあった。
存在していればもっと世の中は上手く、そして酷く巡っていたことだろう。
そうなっていないのだから無いのである。
それが良かったのか悪かったのかは、シンデレラの結婚後を語ることに等しい蛇足なので割愛する。
イソラを連れ帰った先は、連れ去られた時と変わることのない学園都市であった。
実家には戻れない。
そもそも、学園都市は当時それなりの安全地帯でもあり牢獄でもある。
能力を発現させた少女らがそれを制御するために集められ、その名目の為に生まれた土地から追い出される形で学園都市に来た少女らも少なくは無い。
故に出ることを基本的に許可されない少女らの先行きは決定されており、其処は牢獄と言っても差し支えも無かった。
千歳の立場はそういった『戻れない少女ら』とは、また別になる。
だがそれでもイソラの教育に関する問題上、実家へ戻る選択肢は彼女の中には無かった。
その理由は第一に『自身に対する実家の反応の推移という懸念』だが、それ以上に懊悩したのは『イソラに対する反応』だ。
それがプラスに傾くかマイナスに傾くか、想定が出来なかった千歳には、やはり選択肢は潰される。
それはどのようにであれ、『息子に対する教育』に口出しされることを避けたかった為でもあった。
学園都市へひっそりと戻った千歳は、隠れるように生活し続けた。
そうして彼女は、イソラに対して毎日言葉を投げかけ続けた。
『死ね』
『生むんじゃなかった』
『生まれてこなければよかった』
『生きていてもらいたくも無い』
罵倒と舌打ちと汚物を見るような眼差しを綯い交ぜに、毎日毎日、留めることなくそんな言葉を投げかけ続けた。
加えて、彼への餌は用意されない。
近隣から隠すように、鳴き声も漏らさないように、擦り切れた衣服に包んで部屋の隅に置き続けた。
それは自分を不幸へ追い込んだ男の子供であるからという理由もあったが、物理的に殺せなかったからという理由もある。
何度か隙を見ては機会を伺っていたが、結局殺すことが出来なかった千歳は意識的にネグレクトへと手段を推移させていた。
そうした日々を延々と繰り返し、千歳が21、イソラが7つになった頃、ようやく転機は訪れた。
千寿の手によるイソラの回収である。
そうしてなんやかんやがあって千寿は死に、諸共に研究所近辺の山なんかが山頂部四合部ほど削れた。
その一撃、後に【原初の咆哮】とイソラ自身が名付けた領域のエネルギーを物理的に開放して打ち放つそれを、なんとか安全にヒト死にが出ないレベルにまで落とし込んだ物理作用が【銀の鉾】に値する。
ああ見えて、死にはしないようにしてはいるのである。
あとその後、千寿を追い込んでいたけど何気に途中飽きて何年か放置していたら山が削れた被害が出たので回収に働いた『主上以上』がイソラの後見人として学園都市に放り込んだ張本人だったりする。
ついでに言うと烏丸千歳の行方は回収されて以降は不明である。実家には帰っているらしいが。
~千束千寿
二次創作時代の烏丸くんを知っている方々すれば割とお馴染みのクソ親父
若干名前が変更されましたが、やってることは変わりありません
オリ作品なので相応の『理由』が追加されています
(別に許されるというわけでもない)
~学園都市設立と魔法使い
魔法使いまたは『主上』は『元自称』と付けるべき人々。それとは別の『魔力』とやらを扱うわけでもないのに『魔法』使いになってしまっている人々が元の世界には散見している
~烏丸千歳
別にガーリッシュな何某は関係していません
見た目は同姓同名の銀河天使と似通っているとかの専らの噂
~烏丸イソラは憑依転生者たちに期待の眼差しを向けている!
「イソラの此処、空いてますよ?」頭に指を突き付けつつ宣う色黒白髪
なお、身体を乗っ取っても本人のやっている『掌握』を扱い切れずに領域を暴発させるオチが透けて見える
~魂と輪廻転生の関係性
これマジで皆さんが誤解してますが、そもそも輪廻を語る仏教でも転生の主体は魂ではない、って説いてますのでご注意を
神様転生の方も理屈を合わせてどっかで語りたい
~千歳さんの積極的ネグレクト
だからそらはあいをしらない
~千束千寿、死亡確認ッ!
これはガチ。記録を烏丸が持っているだけで、本人はマジで死んでます
~『原初の咆哮』
焼き切って! 銀河の、果てまでーーー!
※香ばしい名付けはこの世界の平常運転です
そんなわけで烏丸に関する説明回です
小説にすると10巻以上、漫画にすると30巻程度続けられそうな半生を5000文字程度に圧縮圧縮ゥ!
やっとここまで書きましたので、あとはそろそろ〆に入られそうです
ではまた明日