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№016 魔王、再降臨 【烏丸イソラ! 復ッ活!】

色々と『酷い』



「説明しよう! 俺は予め用意してあった術式で、僅かな痕跡さえ残っていれば死んだ状態からでも肉体を再構築できるのだ!

 術式名は【覆水(ノット・)盆に返(ハンプティ)らずとも(・ダンプティ)】!

 塀の上から転がり落ちた卵でも、ひっくり返って溢された水だったとしても、新しく用意すればいいじゃない、という合理主義の主張!

 例えるなら鏡の門(ルッキン●ラス)みたいなものだな!」


「いや、それじゃあマイナー過ぎて逆に通じないでしょ。GAN●Zや『亜●』みたいな再生って思えばいいのかな?」


「ああ、うんうん、そんな感じ。……?」



 真っ先に思ったのはプラナリアか何かかおめーは、っていう感想(罵倒)だけど流石にそこまで明け透けに本人に言い放つのは控えられる。


 さておいて、ノッリノリで語っていた烏丸くんは、相槌を打ったボクに怪訝な顔を向けた。

 なんで?



「……俺が言うのもなんですが、キンジョーちゃん先輩、ひとひとり蘇ったのに平然とし過ぎじゃありません?」


「えー? んー、いやぁ、なんていうか……」



 広間でまともに対応できているのはボク程度。

 それくらいの相槌も入って無くちゃ、ちょいとテンション高めに蘇った彼だけでは寒くなるのでは、と老婆心を働かせたのだが。



「キミならそれくらいできるんじゃないかな、って頭の片隅で思ってた。実際にやられるとかなり驚いてるけどね」


「なんとゆーフルフラット。まあステで超人一歩手前の精神数値18出た時点で察してはいましたが……」


「おい待て誰が超平坦(フルフラット)だ」



 言葉の後半は呟きレベルだったので聞き取り難かったが、きっと陰口にちまいない。


 今はこうして制服だからわかりづらいかもしれないけどなぁ!

 少しはあるわぁ!

 くびれだってあるわぁ!


 思わず詰め寄りツッコミを入れていた

 ヒトがキモチ控えめに、本人目の前にして流石に罵倒するのは辞めているというのに!



「そ、ソラさまぁああああ!」


「おっと」



 そんなツッコミ要員のボクを気に掛けることなく、泣きながらシャーロットさんが色黒の白髪後輩に抱き着いた。

 あぁん、と美少女に押し退けられて、艶めかしい悲鳴を虚空へ吐き出すボク。

 少々、悲しいキモチに包まれる。


 しかしプラナリアみたいな復活性披露したばかりだっていうのに、姫様は結構図太く受け入れてるなぁ。

 これも即落ち2コマのチカラだろうか。


 あと今気づいたけど、烏丸くん全裸のままだ。

 まあ被害は妥当に丸焼きだったし、プラナリア繋がりの人為変態おっぱいさんみたいに衣服までは再生できないのだろう。きっと。

 こちらが喩えた別ネタだとそれも可能っぽいけれども、鏡の門(ルッキ●グラス)を喩えに出しているのだしそれなりに納得だ。


 ……しかし、件の全裸に今ボクも詰め寄っていたわけか。

 幼女が全裸に縋りつく姿も色々とアレだけど、偶には周りからどう見られているか、という点も考慮した方が良いかもしれない。



「こっ、殺せえええええ! 奴を生かして逃がすなああああああああ!!」



 なので、こんな風に狼狽から恐慌に駆られてドシリアスな殺害命令を王様が下すのも仕方がない。


 兵士の皆様もかなり状況についていけてない様子だったが、流石は訓練された軍人なのか。

 激オコな王様に命じられるままに、矢を番え始めた方々が結構いた。

 あれっ、何気にピンチじゃね?



「烏丸くん、急いでお義父さんに謝って! 娘さんを傷物にしちゃってごめんなさい、って!」


「いや、そういう話じゃないだろう、アレは」



 以外に冷静なカナちゃんに否定される。

 わかっちゃいたけど少しは付き合ってくれてもいいじゃない。

 シリアスさんなんてお呼びじゃないんだよ?

 キリッとした顔つきで、お前は守るよ宣言しちゃったカナちゃんには悪いけどさぁ。


 そんな胡乱な思考に晒されるのも、全部復活した烏丸くんってやつのせいなんだ。

 『ボクは悪くない』。


 そんなわけで、引き続き剣を構えて盾になろうと前へ出ようとするカナちゃんの袖を、ちいさく掴む。

 守られるだけなんてお断り、そう口にしようとしたところで、するりと前へ出てきたのは烏丸くんだった。


 ……あれ? 服、ズボンだけだけど、履いてる。

 何処から出したの、キミ。



「話は夢で聞いていた」



 Z戦士かキミは。


 ちらりと彼が居たはずの後ろを見れば、カサンドラさんにシャーロットさんは預けられて。

 にやりと口の端を吊り上げて微笑む烏丸くんは、悠々と前へ進みながら言葉を続ける。



「全部とは言いませんが、今回の『負け』は間違いなく俺の失敗です。

 なので、尻拭いは自分でつけますよ。

 後は任せて、見学でもドーゾ」



 (コブシ)(てのひら)にパシンと合わせる。

 その動作に多分、意味は無い。

 とりあえず、すっごいやる気なのは両方に伝わった。


 わぁ、王様がさらに狼狽えてらぁ。



「やあやあ皆様、よくもやってくれやがりましたなぁ。いいぞ、やればできるんじゃないか」



 なんか……、なんか超楽しそうなんですけど、あの子?



「俺たちの居た世界に、撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ、なんて言葉があるんだが、」



 近づいてゆく。

 向こう側からすれば近づいてくる彼に、明らかに怯えた顔を晒し続けているのは全員だ。


 王様はもちろんのこと、弩を構える兵士も、居合わせた文官も、あと忘れちゃならないパッションピンクも。

 今にも逃げ出したい顔つきで、後ずさりしている者しかいやしない。



「――皆様は、どっちだ?」



 その言葉が引き金となった。



「ぅ、うてぇえええええええ!!!」



 裏返った声の命令が下り、矢を番えていた者たちの指が解き放たれた。

 それをスピードと認識する暇も無く、空を裂く凶弾は一瞬で烏丸くんを針山のように変えるのだと、誰もが疑っていなかった。


 疑ってはいなかったが、それが利くとも思ってる者もいなかった。

 どうせ復活するんだろお前ぇ! みたいな面持ちで、せめて少しでも私刑を逃れたい一心で、きっと彼らは矢を放っていたのだ。



 ――その気持ちすら、裏切られていたわけだが。



「それだけじゃ、ないだろう」



 矢は、全て防がれていた。


 烏丸くんを覆う、ヒトガタの『何か』。

 透けて覆いかぶさる、筋肉質の剛腕が全ての矢をその表皮で中空に留めていた。


 ……いや、なんぞ、それ?



「いっかい死んだお蔭で、コイツを掌握するのに手間がかかった。

 もういちど希釈する前に、こうして具象化させないと手順がずれるんだ。

 なので今は超常現象みたいな防御性を備えちまう。悪く思うなよ?」



 それは恐らくだが、銃弾を止めるように性能を発揮させた成果なのだろう。

 例えばスタープ●チナみたいに、物理現象を伴える幽霊のような存在。

 ……自分で連想して、ダメだろこれ、って思ったけど……。



「領域名【悪意あ(ゲシュペンスト)る亡霊(・シュラーグ)】。

 見てわかる通り、物理作用も齎せられる『空間』だ。

 ――かっこよくドイツ語で命名してみた! 著作権の問題さえ無ければスタ●ドだろうがペ●ソナだろうが、好きなように呼んでもいいんだけどな!」



 いやダメでしょ!?

 連想してこっちが口にしてないんだから本人が言葉にするなよ!?


 喩えるならば、それはランプから呼び出される魔人。

 筋肉質な上半身に比べて、腰から下は何処にあるのかうっすらと消えたまま伺えない。

 広間の天井にも届くような長身だから、全体像が無くて逆に良かったのかもしれない。

 顔は獣骨のような頭部にすっぽりと覆われており、空虚な眼窩には表情の一切が伺われない。


 そんな姿の巨人が、兵士らを、王を、感情の無い骨の顔で見下ろしている。

 魔王だ、これ。



「さて。

 簡単に終わってくれるなよ……?」


「「「……っ、あ、わあああああああああああああ!?」」」



 無茶を言いおる。


 というか、もう嗤い方が完全に悪役だよ。

 ニタァ、と加虐趣味を隠そうともしない微笑だもん。

 そりゃあ兵士たちだって、悲鳴を上げて逃げ出すさ。


 ていうか、やっぱりキミが魔王だったじゃないか!

 こんなの討伐できるかよ馬鹿か!?



「ま、まてぇ、にげるな、たたかえぇええ……!」



 玉座から立ち上がれない、多分腰が抜けているのだろう。

 王様が命令するも、パニックに陥り逃げ惑う兵士たちは、当然の如く応えることも無い。


 というか、王様にももう覇気がない。

 もう本当に酷い。


 酷い、可哀そうな状況に陥ってしまってるよ。

 これが因果応報なのだとしても、こんなに組織が崩壊するような悪いことをそこまでしたの? って問いかけたい。


 そしてそれらを見渡して、烏丸くんはため息を一つ。



「えぇ……、立ち向かおうとも思わないの……? 仕方がないなぁ……」



 ……。


 いや、キミ、仕方がないな、と言いつつ、そっちの魔王。

 ……なんで片腕を振り上げておるのん……?



「仕方がないけど、いっぱつはいっぱつだし。これで、仕舞いってことにしてやるよ」



 ちょ、ま。



「――【銀の鉾(アガートラム)】」



 ――斯くして、魔王の片腕は振り下ろされ、城に巨大な風穴を開けた。

 後に城下から届いた噂によると、『魔王の降臨で王が崩御寸前まで追い詰められた』『勇者も勝てなかった』『世界オワタ』などなど。

 これがこの国の『詰み』の始まりであったのは、いうまでもない。どっとはらい。





鏡の門(ルッキ●グラス)

 『アリスと蔵六』より抜粋

 無から有を生み出せる半永久機関みたいな現象。搭載した『存在(もの)』は原初であり最強である『赤の女王』に准えて『アリスの夢』とカテゴライズされる

 体力やカロリーと引き換えに『それ(本人)』の内側(世界)から何か一つだけを顕現させ続けることが出来るようになる。しかし『女王』は例外で、鏡の門の源流である『ワンダーランド』と直接繋がっており、顕現させられる『もの』に限りは無い

 死を体験しても、自身をも再構成できるらしい



~GAN●Z&●人

 どちらも実写映画化した



~フルフラットキンジョーちゃん先輩

 実際、盛りが微かなのでほぼ間違いはなiうわなにするやm



~人為変態おっぱいさん

 ヤンジャン読め



~『ボクは悪くない』

 悪くは無いけど、ねぇ…?

 あと流れるようにヒロインっぽいことやってるから読み飛ばすなよ皆!



~話は夢で聞いていた

 人造人間退治に赴かんとする仲間たちに告げられた心臓病から復帰したZの時の悟空の科白

 特に説明もその後無かったのだけどあれほんとなんだったんでしょうね



~ス●ンド使い烏丸ソラ!すんませんフザケスギマシタ!

 解りやすいイメージで例えるなら最近若奥様を嫁にした某魔法使い。アレを筋骨隆々にしたら一番近い



~城下町にネラーが潜んでいる件について

 キンジョーちゃんら異世界人にとっては意訳された言葉が自然と馴染むので大丈夫(震え




キリが良いのでこの辺りで

ではまた明日

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