№011 ハーレム推奨から始める異世界生活(仮) 【人格と性癖は中々別個に見られない】
此処に至るまでを多少編集しました
話の展開は変わっていませんが、あとがきや前書きや副題を変更してあります
あと9話辺りのあとがきに謝罪も(小声
ボクたちがこの世界に召喚されて、今日で一週間が経過した。
何を言っているのかわからねーと思うが、そういうことだ、と承諾してほしい。
ぶっちゃけ、3日前の烏丸くんとの遣り取り以降、状況に然程の変化もなかったのだ。
そんな平坦でボケも騒動も起伏もない日常を綴られても、正直なんだそれ、としか言いようがないと思うので自主的にカットさせていただいた。
別に誰に言っているというわけでもないけど、異世界だというのに本当に平坦に日々を送ってしまったのだから仕方がないよね?(威圧。
ボクからしてみればドクシャのような第三者が実在するかどうかはさておいて、俯瞰されているという自意識は自己の擁立に対しては上手く機能させられていると思う。
元の世界における宗教観の存在意義、例えば三̪尸の虫などに見られる『天上への報告』という意識を育んだ下地は、過去より連綿と続く人類の倫理観に基づいた心理だ。
インガオホー、天網恢恢疎にして漏らさず。
下の者に善であれ、と抑えつけるのではなく、悪を成せば罰が下るという意識を植え付けることは、根本的に集団生活を上手く立ち活かせるための下地としては必須な認識だ。
個人的には善であろうという意識なんてないが、中庸であろうとするだけでも心理的にも身を律せさせられる。
実際のところ、悪いことをして心苦しくなる奴は結構いるわけで、そういう部分を自己正当化で逃げ道を作る行為だって珍しいモノでもない。
その正当化を他人からの視点で見られた場合、どう思われると思うのか。
そんな客観視を育むのがボクが体現している【俯瞰意識】というわけだ。
ちなみに『擁立』という言葉は『自分の方の君主としてその人を戴へ就かせること』を意味するのだが、自分自身こそが自分という国の王である、という言葉があるくらいだし、強ち間違った使い方はしてないのではないかな。いや、この辺りはでっち上げの自己理論だけど。
長々と語ったけどぶっちゃけ、ここら辺読まなくっても問題ないのだけどね!
それこそ話としては進展していない、当たり前を語ったに過ぎないので、【これまでのおはなし】と大差ねえ。
まあ一種の区切りだとでも思ってくれればいいのだよ。
さてそんなわけで、改めて新しいお話の始まり始まり。
「ソラさま、あーん♪」
のっけから出ました、シャーロット姫の微笑み&あーん攻撃です。
金髪美少女を膝の上に優雅に座らせて、微笑ましい遅れた朝食の一幕。
烏丸くんは若干うろたえつつされるがままですね。
……ボクが冒頭から現実逃避した理由、わかりました?
す、すげぇ、これが即落ち二コマのチカラか………! と戦慄すら抱かせられるお見事な姫様の態度の様。
これがカイチョーの言った、国に対する『シャーロット姫を懐に引き入れた』と認識させる策であるならば大成功間違いなしなのだが、そんな前提を把握していたとしても如何わしさが拭い切れない。
何より、歳に言うほどの差異もないはずなのに、烏丸くんも割と少年相応な見た目であるはずなのに、その中身のリベラルな人格を知ってしまっている所為かどうしても『事案』の単語が脳裡を過る。わーにんわーにん。
実際に、快楽堕ちで得ている結果だろうからボクの言い分もそれほど酷いわけでもないとも思うの。
で、だ。
そんな事態を達成させたご本人が、何故にそんなに狼狽えているのかな?
「へい、烏丸くん。集合」
「……いえっさ」
シャーロット姫を膝から下ろし、ちょい屋上まで面かせや、と言われるがままにやってくる烏丸くん。
その顔はやや引き攣っているようにも伺える。
何かな、その表情は。ほら、スマイルスマイル。笑えよ、こうやるんだよ。
と、ボクはボクでニッコニッコなご機嫌笑顔で迎えているというのに、彼の引き攣った笑みは鳴りを潜めない。
何も怒っていることもないのに、多少美少女に懐かれているからと言ってソレが羨ましいだなんてことは僅かにしか懸念していない『ささやかな』内心だ。
ちなみに膝の上から降ろすときに、何やら離れたがらない姫様と新婚っぽい砂糖吐きそうなやり取りがあった気がしないでもないけど文章に興すのもアレなので再び自主的カットのジツ。
「何なのアレ? キミ、姫様に催眠術でも施した?」
「とんでもねぇ言いがかりですぁ」
お上に上申する農地開拓民みたいに訛った口調で言い縋る、褐色肌の白髪少年が其処に居た。
珍しいことにその顔つきは普段の笑みも鳴りを潜めたドン引きの真顔なのだが、そんな後輩に物申す。
「相変わらずキャラの方向性が定まってないなぁ。キミがそんな風に曖昧だからこっちに人も居なくなってくるんじゃないの?」
「根本的な問題点は別にありそうな気もしてきますが……」
「ふたりともなんのはなしをしとるんや」
と、口を挟むカイチョーにやや窘められたような目線を受ける。
え? やだなぁ、普通に現状の話ですよ?
仮にも王女様の会食だというのに、この部屋に控えていてもおかしくないメイドさんやら衛兵さんやらがボディガードに就いていない時点でお察しなのでは?
そんないつもいつもメタメタな話題を振るほど第四の壁は易くないですよ。
「で、話を戻すけど、姫様にしたのって調教くらいだよね? あんな一朝一夕に結果出るモノなの?」
「本格的に人聞き悪ぃ!? キンジョーちゃん先輩、何気に俺のこと嫌い過ぎません!?」
「好かれるようなことしないで何を申す」
烏丸くんがボクたちに施したことと言えば、異世界転位モノには付き物の『特典』と、元の世界の裏事情を細々と暴露される『余計な知識』程度しかない。
それが完全な善意であると言えるのならば言えばいいが、経緯もあるので素直に喜べないわけだ。
『あって当然』と思っているわけではないけど、ふたを開けると余計なモノが大半を占めているからむしろ要らない価値観に比重が傾く。
好感度、そうそう稼げるとは思うなよ後輩。
そんなボクの内心はさておき、慌てふためく様子をひとしきり見せて、彼はため息をつく。
「……いや、とは言われましても、調教もしてませんからね? というか、痛いことも無いですよ。気持ちいいことだけですよ、精々」
「それは、結果的に気持ちいいことになった、と……?」
「どれだけ悪人に仕立て上げたいんですか。改めて言いますけど、俺は子供相手に酷いことをするような人間になる気は無いんですからね」
ええー、ほんとでござるかーぁ?
「でもエッチなことはしたんでしょ?」
「食い下がりますね……。まあしましたが」
「ほら!」
「なんでうれしそうなんですか」
それは挿絵に挟んで喜ばしい読者サービスが用意されたから……、ってわけじゃないですよ、うん。
というか、うれしかったことでもないからね。
ちょっと烏丸くんを言い負かせられたのがキモチヨカッタだけだよ。言わないけど。
「これで嬉しい? 何を言ってるのかな烏丸くんは。こういう情事で喜ばしい感情を露わにするなんて、まるでロリで始まりコンで終わる特殊性癖みたいじゃないか。ボクはそんな人種であったことなんて一度もないよ。カナちゃんじゃあるまいし」
「そこで俺を引き合いに出すな!」
何処かの括弧付けて喋る某裸エプロン先輩みたいな格好付けた口調を心掛け、気持ち早口気味に捲し立ててみた。
己のキャラ的にも『そうじゃない感』は否めないのだが、口にしているうちにちょっとばかり愉しくなってきたこともまた否定しきれないのは仕方のない話だ。
あとステータスに特殊性癖認定された幼馴染は黙っていてください。
「いや、違うからな? そういうモノが俺の趣味だとか、そんなのは根も葉もないデタラメだからな? 大体アレを造ったのも烏丸だし、そう! むしろそういう性癖を持っているのは烏丸だろ!」
「……衣装箪笥の引き出し、下着の重なった奥のパッケージが裏返ったDVD」
「なぜ、それを……!?」
尚も言い縋るカナちゃんにこちらの把握しているトップシークレットを囁くと、絶句して漸く大人しくなっていた。
別にボクはそういうモノを悪いとは言わない。人格と能力と性癖が別物なのは理解しているし、一部が歪むことくらい誰にだってある裏事情だ。
小●4年くらいの金髪の女の子が局部を際どく隠した水着ではしゃぐDVDなんて興味もない。
「さて、何の話だったっけ?」
「いいんすか、アレ放置して……。 えーと、まあ子供を、とは言いましたが、シャロの場合言うほど年も離れてませんし、むしろ開き直っているんじゃないですかね? そもそも14歳って綾波●イと同じ年齢でしょ」
「そこを一緒くたにするのはどうかと思うけどなぁ……」
そこを一緒くたにするのはどうかと思う、と同意見を、しかしやや癖のあるイントネーションでカイチョーにツッコまれる烏丸くん。
確かに設定上歳は同じだろうけど、シャーロットさんの見た目が幼いのでどうしたって彼女を子供扱いしてしまいそうになるのは致し方無い。
というか、同じだからなんだというんだ。
アレか、ウス=異本によくよく取り扱われるキャラだから容赦もないと言いたいのか。
異世界だからふわっとした意味で【成人】の定義が薄れることは承知してるけど、それでもだからといって転位してきた日本人が自ら倫理の壁を突破するのはどうなのかなぁ、と個人的には思うのだけど?
って、こんな話は前にもした気がするなぁ、カットカット。
「というか、女子の言う『どっかに良い男いねーかな』というのは『自分を養ってくれる都合の良い男いねーかな』と同義でしょう? 比較的安牌を引いたと判断したから、猶更自分から尻尾振ってるんじゃないですかね、アレは」
「烏丸くん、むしろキミがシャーロットさんのこと嫌い?」
予想以上に辛辣な評価が率直に漏れて、思わずドン引きするボクたち。
その歳でそこまでリベラルに割り切れる、って……キミ、どれだけ周囲の人間関係酷かったのさ、と問い糺したい。
それなのにハーレムとか造ってる、って、もうわけわからん。
……いや、逆説的に言えば、そもそもハーレムって資本が無くちゃ成立しないのか。
ラノベ主人公みたいな将来性があやふやな状態で関係性を曖昧に濁すのならクソ野郎だけど、相応に相手を満足させているっていうのならその辺りの関係は傍から口出しするまでもなくむしろどうでもいい問題だろうし。
そもそも、烏丸くんの言う『女子』にも納得はいくしね。うちにも桃園さんがいるし。
そういえば、カナちゃんにカイチョーはこうして同席してるけど、件の彼女は此処3日ほど都合がつかないな。
いや、いっしょに過ごしたいわけじゃないけど、何処で何をしてるのかしら。
そんな風にのんびりと、思考の滑るブランチの最中。
ドバン、と扉を開け放って入室してきたのは――、
なんか、遅れまくって申し訳ございません