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№010 現実的な考察 【ファンタジーに目が眩む前に】

血界戦線おもしろかったです


なお今回、過去最長



「さて、じゃあ次に【Status】について説明を、」


「その前にちょっといいかな?」



 待ち望んでいた話ではあるけれど、突っ込むべきことは色々とある。

 出鼻を挫くようで悪いけれど、このまま彼の独壇場を占有されることは見過ごせないので手を挙げ注目を集め、許可を得る前にボクは口を開く。



「聴き手に興味を向けさせるためだとは思うけれど、中途半端なパロネタは場を白けさせるだけだと思うよ? むしろ内容の濃厚さとキミの語り口の軽薄さで違和感が酷いからけっこう逆効果」


「……え?」


「ていうか見てよこちらの桃園さん、すでに興味なさげにスマホを弄るかの如く手元の刻印を操作中」


「うぐぅ……!」



 そこはかとなく鋭角に言葉の矢は突き刺さったのか、ぐうの音も出せぬご様子で呻く魔導学士様がそこにいた。

 ぐうの音も出せてはいないが、何処かのたい焼き天使みたいな鳴き声で呻く姿には微塵も萌えられない。



「由良ちんナニやっとんの?」


「ん、自分用になんか調整できるみたいね。この【System】っていうの? 文字通り『設定』を弄れるみたいよ」



 カイチョーに問われた桃園さんはカスタマイズに夢中っぽい。

 カイチョーの言葉には反応しつつも、左手の甲に浮かぶ立体映像をタップすることを辞めやしない。

 JKは携帯を弄るのもデコるのも大好きだから、仕方ないね。

 というか、その『ながら操作』って何故かボクできないんだよね。まあだから歩きスマホもしないけど。『しない』というよりは『できない』だけど。


 ちなみにボクの場合は、手持ちのスマホは購入当時から大して変更も活用もできていない。

 良くてソシャゲと、ケータイ小説の流し読み用。

 多少使い道が増えた電話以上の扱いには至らず、今時JKにしては若干申し訳なくも思う時もある。思うだけだが。



「ま、まあ気を取り直して……。では、」


「それと質問があるんだけど」



 自力で立ち直り、講義を再開しようとする烏丸くんに、もういっかい待ったをかける。

 小技で昇竜を阻止する感じ。

 それにしてもこの子、自力で立ち上がれる辺り精神的にかなりタフだな。



「この【Status】に肝心なモノが載ってないよね? その辺りどうなの?」


「……肝心なモノ?」


「いや、ボクらに用意された刻印? めんどくさいから魔法みたいなものだって認識してるんだけど、」



 烏丸くんの長々とした説明を灰燼に帰させる省略っぷりだけど、それで合ってるのだと普通に思う。

 だってよくわかんなかったんだもん!

 魔法と魔術が実在してそれ以外の技能ですとか言われても! パンピーには判別不能ですわ!



「あー、まあ、それでいいですけどもね」



 しかし諦めたように相槌で応えられる。

 そこで諦められたら本気でキミの働きが無に帰すけれど、本人がそれでいいんならもういいや。



「それでね、魔法だとすると、使うために必要なモノが、どうしたってあると思うんだよね」



 さて、此処でもう一度ボクの【Status】を開いて見る。




 ◇◆◇



 生命力 : 12


 腕力  : -5


 敏捷  : 8


 器用度 : -9


 感性  : 14


 知性  : 9


 精神力 : 18



 ◇◆◇




 おわかりいただけたであろうか。

 以前に開示した情報に比べて大幅に削ってはいるけど、ゲーム的な『ステータス』と呼ぶべきならば必要な部分のみを抜粋したと言っても過言ではない。

 それでもこの中には、烏丸くんが言うような『魔法』を扱うとしたら、どうしても必要だと推測できる部分がまるごとスカッと抜けているとしか思えないのである。



「【魔力】だよ、または【MP】? それともこの【精神力】っていう項目がそうなの?」



 尚もこちらの意図を汲んでくれないかのように、ボクの詰問に小首を傾げている烏丸くんへ、問題の核心を晒した。

 『魔法』が実在して行使する、っていうのなら、どうしたって其処の問題は先に挙げなくちゃいけないと思うのだけれどもどうかな!?


 しかし、烏丸くんの返答は辛辣なモノであった。



「魔力? そんなんねーですよ」


「「「え」」」



 その返答は誰もが予想外だったらしく、カイチョーとカナちゃんも同音で言葉に詰まっていた。




  ◇    ◆    ◇    ◆




「明白に言うならば、実在を確認されてないだけで非実態エネルギーとしては何処かの宇宙に存在しても良いですけれども、俺たちの知る限り世の中に『そんなモノ』は存在しません。 概念としてはまた別ですけどもね」



 なんかむつかしげな言い回しで、やはり何処か講義染みた説明を再開する烏丸くん。

 こう切り出した直前にも、「相応の専攻を選べば知れることなのですがね、」と前置きを据えることを忘れない。


 だから一般認識のワンステージ上がった情報、要するに大学とかでならば知れる内容を先駆けて語っていることに連なりそうであるが、下級生にそれを語られているから桃園さんは聞く気がないんじゃなかろうか、と邪推してしまう。

 まあいいか、パッションピンクだし。



「本物の魔法は存在を削りますし、ひと昔前の魔術は魔導刻印と分けられる前のモノも一緒くたの場合もありましたので学術サンプルは少ないのです。 が、何らかの力が消費されて疲労感を覚える者がいるのだからそれこそが魔力だろ、というのが専門家の見立てでした。 でも、何かが自身から消費されて疲労感を覚えるのなら、それは使われているのは生命力とか体力とかのマテリアル(物質的)なモノじゃねーのか、というのが現在の見方です」



 相変わらずひと言が長いなぁ。

 いや、結構大事なこと言ってるのはわかるけどね?



「生物としての未知な領域がまだあるのだという可能性の話をするだけなら良いんですけども、それは結局のところ単なるオカルトの領域から逸脱しない、信仰という側面だけでしか支えられていない理論でした。技術革新に文化進歩を推し量っている現在では、すでに廃れた技術を見直すためにオカルトを科学で解析することだけでは足りないんです。つまり第三信仰は、」


「ヘイストップ。それはたぶん畑違いの話や」


「――ああ、そうっすね。じゃあ魔女の話は投げましょう。俺だって好き好んで語りたくはねぇ」



 カイチョーが停めたけど、魔女?

 件の『話』をクシャクシャ丸めて明後日の方へポーイっ、という仕草で閑話休題(それはそれとして)と切り替えられるも、話の中身に推測が利かない身としては疑問符で応える以外の選択肢がない。

 ほんとに何の話をする気だったんだ。



「掻い摘んで言いますと、少し前まで言っていた【魔力】とかいう概念は一種の共感覚性から共振で得られる錯覚波動という答えが大学では語られます。 要するに皆さんが最初に認識した、『魔法』に関わることで思い浮かべるであろうイメージの根源、今や世界中に蔓延ったサブカルチャーとしての『魔法』ですね。 人によっては『魔術』もまた同じような『技術の根源』があるのだ、と誤認されてもいますが。 そういう筋道を立てて、そういうものだ、という解答(納得)を出してるんです。 大体、その『特殊なエネルギー』を感じ取れる人が選別される、という時点で選民思想に偏った文化狭窄に他なりませんしね」



 身も蓋もないけど、逆に危なくない? そういうこと大学じゃ教えてるのが。

 思想誘導は犯罪だけども、それに気づけないサブカルチャーの氾濫があった、っていう事実を語っちゃったらなおのこと危ないと思うんだけど?

 そしてそれを知っちゃったボクらの身の安全的にも。



「というか、廃技能に関するイメージが偏る原因になったのもそこの辺りなんですけどもね。 実際講義を聴くと価値観が変わりますよー。 魔術師は呪文を唱えないし、陰陽師は式神を使わない。 錬金術師は金を作らないし、忍者は印を結ばない。 変なチカラではなく、それなりの技術を身に着けるために必要なことは漫画的な修行ではなく現実的な勉強です。 だから大学でも『専攻』という形に進路が備えられているのでしょうし、国家資格に備えられたのでしょうけどもねぇ」


「いや、今の時点でけっこうイメージ変わってるよ」



 まあ、考えてみれば大学で専攻されてるのだし、変な学問に走るわけがないか。

 忍術専攻と最初に聞いたときは、大蝦蟇を召喚するところとか見たかったけど、少しだけ。



「どちらにしろ、そういう認識は専門の方が改めて知る『一般認識』の一歩先なので、それこそ本来はより多数に知られることは無いんです。 むしろわざわざ語る必要性を持っていない認識ですし、サブカルが主題ですからね、そんな世界。今回教えたのだって、特別ですよ?」



 なるほど。

 言われてみれば敢えて中二病な世界に片足突っ込むことだって、本来の一般人には不必要な選択肢だ。


 ボクらは異世界転位なんていう非日常にぶち当たってしまったので小耳に挟むことになっているが、元の世界なら高校生だ。

 大学に進学したってその先を選ぶ段階に至らない限りは知る必要性も伺えない知識、つまりは専門知識に当たることを烏丸くんに長々と説明させてしまっているわけだ。


 喩えて言うなら考古学や、薬学、基盤の設計なんかの専門分野を、要点抑えられずに語られる感覚。

 そりゃあ講義みたいになるし、聴いていて退屈にもなってくるよ。


 ところで、今更だけど魔術とかって文系? 理系?



「あれ、そうなるとこの世界の【魔法】ってどないなっとんのや? 王様は魔力がどうのこうのと説明しとらんかった?」


「いえ、こっちのもほぼ俺が付与した【刻印】と同等の代物でした」



 え? それおかしくない?

 至極当然にカイチョーから出た疑問に当たり前のように応えられるけど、それは普通に矛盾しているような解答だ。


 なぜ、キミが開発したとされるモノと同等のモノが、異世界にあるのさ。



「……説明次第では怒るで?」


「いや、なんも難しい理屈じゃないみたいですがね」



 ボクが内心で句切ったように、会長もまた似たような感想を抱いていたらしく、(ずい)と烏丸くんへと詰め寄って居る。

 こちらからは見えないが、メンチを切っていても可笑しくない。



「先にも語りましたが、こいつは俺が開発したというよりは、先駆けて存在していたモノに名付けたようなものでした」


「そんなん言うとったか?」



 そんなこと言ってたっけ?



「……言いましたァ! もともとあったモノを表層化・評在化させて、下手に手出しされないように名付けたのがこれですゥ!」



 こちらが話を聞いていなかったわけではないが、おそらくは理解が及んでいないことを若干ながら把握してしまったのか、やや拗ねるように応える烏丸くん。


 なんだ今回は、烏丸くんフルボッコ回か。

 まあ前回かなりはっちゃけたから妥当な扱いかもしれない。



「裏側も把握されてるのでまた言っちゃいますけど、教育政令指定都市は能力的に発現した子供たちを収集して抑制しつつ教育を施すための箱庭です。 その中でも俺の居た多宝天壌は女子のみという限定的な育成機関でしたが、だからこそその本質として解析してしまった【魔導(シュタゥンバゥム)刻印(エンティクォン)】のサンプルとして他の研究者に不当に人材を回されることは嫌でしたから。 こういう『商標登録』をしておけば表向きは管理するのは俺ですし、下手な手出しだってされませんし、妙な軋轢や違法に絡まれることも無いので名付けた意味合いもあります。 でも本質的には、現象として既に在るモノを一定の解読法で評在化させたことにしかならないんですよ。 まあ、市販技術を流用する悪の科学者みたいな真似ですが」



 おお、なんか内心がボロボロ剥がれてる。

 けっこうダメージが溜まっているっぽいな、前回冒頭にはっちゃけた時にもなんとなしにそうだった気配が伺えたけど。

 だから自分を奮い立たせるためのアレでしょ? まあ割と方向性間違えてフルスロットル賭けた感が無くもないけど。


 最後に自分を悪く喩えて「へっ」と自嘲っぽく誂えた烏丸くんだが、正直溜まったダメージが言うべきことと言わなくていいことを綯い交ぜにして発言しているようにしか見えていない。

 多分、カイチョーに対する答えとしては最後二行分くらいだろう。


 しかしなんか久々にルビを視た感。

 ……って、ちょっと待て。



「……いや、キミが何気に自悪的に元の同級生なんかを守ろうとしとるのも伺えたんやけど、それよりもちょいと気になる言葉が引っ掛かったで」


「――ん?」



 あ、我に返ったっぽい。


 カイチョーの言う通り、烏丸くんは自分本位っぽく説明したが、その行間を読んでみると多分もっと人道的な理屈が働いている。

 けど、今はそこではなく、ボクらが気なったのはとある『喩え』だ。


 『サンプル』とか言ったか?



「刻印が元より日本人に在るモノでも、評在化して使える人材がキミの周囲には居った。それで? うちらに施したのもそれと同等のそれやよな?」


「というか、違法な研究がはびこる程度には革新的な技術だ、って言ってるようなものだよね」


「……それって、会長やタクも同じように、元の世界では狙われる可能性がある、っていうことか?」



 カナちゃんが要点を締めくくったが、うん、その通り。

 元の世界に戻れるかどうかはまだ確定ではないし、むしろ不可能事項っぽいけれども。


 烏丸くんは全員の視線に晒される中で、にこやかにひとこと。



「てへっ☆」


「「「オイコラァ!?」」」




  ◇    ◆    ◇    ◆




「一蓮托生になっちまいましたが、まあ敢えて見せびらかさない限りは隠蔽できる(しるし)ですから、少しばかり良い目を見れるのですしそこまで怒らんでくださいよ」


「どのくちが言うかなぁ」


「ウス=異本みたいに隷属刻印とかつけなかっただけマシだと思いましょうよ」



 読んで字のごとく他人を従えさせられそうな展開を予想し得る『何か』を悪びれて喩えに出す後輩。

 そんなもん本気でつけてたら軽蔑どころじゃないよ、評価っていうか人間的な部分でドン引きだよ。

 ていうかできるのか、やめてよね、フリじゃないからね? マジで。


 どうにも話の方向性が明後日へと滑るのだが、この子の語りはそういうものだ、と思っておかないと精神衛生上よろしくない。

 あと物語の都合上婉曲に進ませられる原因と見ても良さそうだけど、まあ小説ってそういうものだよね。口出ししなくても一般上必要のない小噺をちょいちょい挟むのだよ。もっとすっきりさせてもいいと思う。



「ちゅーか、キミはどうやってそこまで事情を把握したんや。何某かの研究者だ、とかよりいっそ裏方の人間だった、って説明してもらえた方がすっきりするわ」



 話を戻すで? と前置いて問い質したカイチョーの言い分はそれである。

 事実、元の世界では政府預かりという裏方の人間であった気配が濃厚な烏丸くんだが、カイチョーの言う『裏方』はまた別方向だろう。

 この事態が「どっきりでしたー(デッテレー」と明かされた方が、ずっと話が易く済む、という意図もこの言葉には含まれている。

 そうしたら諸々の説明も一発で片が付くのだから。



「俺の刻印が何か、は先ほど言ったでしょう」


「……何かの情報を『掌握』した、っていうこと?」


「正確には俺たちを此処に呼び寄せた魔法陣です。アレの動力源は魔力という名目ですが、実際は地殻変動のエネルギーを蓄熱することで召喚のための術式起動に充てられるっぽいですよ?」



 何処かのアニメの裏設定みたいな事情をあっさりと明かす。格の違いを見せてやる!

 いったい何の錬金術師なんだ…! と戦々恐々ともするが、そうすると王様がそんなに召喚を多用もできない、と言い切れた理由にも説明がつく。

 恐らくは何年か分貯め込んで、ようやく使えるくらいには燃費の悪い魔法なのだろう。

 何処かで夢想した予想が的中した気がしなくもないけれど、そこらへんは黙っておこう。


 それはそうと、烏丸くんの先ほど、明確には前回に口走った、自らを才能無しと嫉む気持ちがよくわからない。

 汎用性に乏しいなどとも言っていた気がしたが、こうして大事な情報を手にされるというのなら其処まで無能でもないと思うのだけど。



「つまり、この世界の人間には何故か日本人と同じ要素があって、それを扱えるようになっているから『こういう魔法』が文化&技術としてある、っちゅーことか? てか、そうすると此処も日本に関連する何処かっちゅうオチが付きそうやな」



 とにかく、こうして手綱を握るひとは必要になってくる。

 実際カイチョーもそこを自覚している節があるけれど注釈する気はなく、しかし話を詰めなくてはならない部分を追求しないことは良しとはしない。


 そうして彼女なりにもボクたちなりにも納得がいきそうな理由を挙げ話を戻したモノの、それを烏丸くんはノーと否定した。



「要素が同じかとは言い切れませんが」


「なんでや。【掌握】とやらで個人情報も握っとるんやないん?」


「実際に遺伝配列を測定しても、人種の違い程度は僅差ですし。 だからこそこうして【刻印】っていう形で評在化させているわけです。 そこまでしないとさすがに俺でも個人で何が使えるのかまでは把握しきれませんよ。 ていうか俺はそこまで万能じゃ無いです」



 ああ、ヒトゲノム解析?

 さらっと【掌握】の出来る範囲の広さを垣間見た気がしたけど、遺伝子に関する何某かにまで何処までも掌握されているご様子ではないらしい。

 そこまで行かれたら元の世界の研究者なんかも立つ瀬がないから、まあ技術力としては妥当なのだろう。



「シャーロットさんの情報を暴露しとったやん。あれってそういうことちゃうん?」


「それでも範囲がありますから。ぶっちゃけて数メートルくらいしか届かないので、この城全域を把握することもできませんし」



 あったなぁ、そんな話。

 ふたりは体感上やや懐かしい話に花を咲かせつつ、次の話題へとシフトする。



「嶽本先輩が懸念しているこの世界で言語が通じている理屈は、どうにも『そういう法則』が働いている節がありますが」


「法則?」


「自分の言いたいことを相手へと伝えられる伝達空間、とでも言いましょうか。 個人の使っている言語のどうこうにかかわらず、相手へと伝える意図があればその通りに伝えられるような宇宙法則に則っています」


「え、なんやそれ」



 おいまて。

 そこはどうやって検証したんだ?


 というか、宇宙法則とかいう胡乱げなモノを推し出されると納得しかけていた妥当性がいきなり破綻しそうなのですが。



「いくつか実験してみましたが、ほら、ルビとか伝わったでしょ?」


「どんな副音声やっとんのかと思うとったわ……」



 え、あ、アレ!? アレとかこれとかそれとか!?

 アレらって物語としての過剰演出じゃあなかったの!?



「あと自分の言いたい意味合いでの言葉の使い方とか、漢字の僅差とか、かなりスムーズに伝わっていたと思うんですが」


「に、西尾節かと思ってた……」


「此処は物語シリーズの中でも週刊少年誌の世界でもありませんぜ」



 うん、現実なのは知ってるけどね。

 でも嘘みたいな話が実在するのだから、此処も何かの物語の中だ、って言われた方が精神衛生上悪くなさそうなんだけどもなぁ。



「とりあえず、元の世界でもそうでしたがこっちでも中々に革新させてしまっているのが【魔導(シュタゥンバゥム)刻印(エンティクォン)】です」


「ここぞとばかりにルビを振るなぁ」


「そして少なくともこの世界の技術は、俺が皆さんに施したものよりも数段階遅延気味の技術です。お披露目は控えるつもりで扱って頂いた方が、精神衛生上は健全かと」



 異世界魔術が遅れてる、とか胡乱げな脳裡でボケを呟く。

 例えば現状、独立国家宣言されていたりする元の世界の北九州一帯を思い浮かべて遠い目をしつつ回顧するボクを他所に、烏丸くんは自分から話を戻すのであった。




  ◇    ◆    ◇    ◆




 さて、元の世界よりも先に、この世界でも中々に身の安全を危ぶまれる状況を再確認したボクたち。

 しかし、その点は烏丸くんのご同類、という認識が下されている時点でもう逃れようにも無いので、だからこそ一蓮托生を逝くことは今更ながら不満はない。


 ていうか、元よりそこの辺りの話の詰めを確認しよう、っていうのがそもそもの始まりであったことだし。


 そんな状況での最終確認が、今回先に提示した【Status】についてだ。



「今更言うことじゃないと思いますが、現実はゲームではないのでそちらのステータスは事実、自分の『状態』を再確認するためのモノです」



 ああ、そうだった。



「そこについてはモノ申したいよ」



 烏丸くんのざっくばらんな言い分に再度挙手。

 改めて、ボクのステータス低すぎじゃないかな、と詰め寄るとまではいかないが問いかけてみた。



「マイナスとか入ってるんだけど。過負荷? 箱庭学園なの?」


「集英社は辞めなさいって……」



 怒られますよ、と言われるがキミに言われるのは釈然としないなぁ!?



「はあ、しかしマイナスですか。俺もまあ、器用さに関しては人のこと言えないレベルで低いですが……」



 皆さんはどうです? と話が、聞いていた他のメンツにも振られる。

 納得がいかないよねぇ!? と振り返れば、……何処か気まずげに視線を逸らされた。何故?



「あー……、見た方が早いな。これ、私のステな」


「そう、ですね。これが俺のです……」




 ◇◆◇



 名前  : 嶽本 サヨ


 年齢  : 16


 性別  :  女


 状態  : 腱鞘炎


 根幹  : 馮河


 生命力 : 15


 腕力  :  8


 敏捷  : 12


 器用度 : 18


 感性  : 18


 知性  : 17


 精神力 : 12


 備考  : 勇猛果敢



 ◇◆◇



 名前  : 卜部 カナエ


 年齢  : 16


 性別  :  男


 状態  : 隠れ肥満


 根幹  : 勁草


 生命力 : 16


 腕力  : 14


 敏捷  : 14


 器用度 : 12


 感性  :  8


 知性  : 12


 精神力 :  8


 備考  : 幼女趣味



 ◇◆◇




「ん?」


「いや待て最後は違う」


「いやそっちはどうでもいいけど」



 どうでもいいって……、とやや落ち込むカナちゃんはさておき、あれれー? おっかしいぞー?

 ――うわっ……、ボクのステータス低すぎ……っ?(三度目。



「ちなみに、この【Status】って最高値が25で最低値が-25の50段階評価です。キリが良く」


「いや、25~-25やったら51になるやろ。0はどうした」


「あくまで状態の認識ですから、()っていう状態は文字通り無いですよ。どちらにしろ、天元突破したら普通に世界レベルですね」



 世界が取れるとな。

 って、そこじゃねえ!



「ちょ、ちょっとまってよ! じゃあマイナスって逆に何!? ボクの何を以ってマイナスと評価するのかなぁこの令呪モドキは!?」



 思わず詰め寄るのも仕方がなし。

 令呪モドキ言うな、と突っ込まれつつ、目線を逸らされるボク。



「言いたかないですが、日々の生活で伸びしろが無かった結果ですよね。基本的に十代ですと平均値いきますから」


「ああ、タクは部屋の片づけとかできないもんな。家事も酷い」



 いつの間にか復活していたカナちゃんの援護射撃に、今度はボクが目線を逸らす番だった。

 りょ、料理へたくそでもコンビニで買っちゃえばいいし……っ。



「そういえば筋肉も無いな、私より力無い子初めて見たで」


「そ、それは昔取った杵柄ってやつです!」


「意味合い間違ぉとるよ」



 斯く云うカイチョーは学園に侵入してきた大型犬を追いかけて抑え込める程度の実力を持つ。

 それと比べたら掃除の時間に机を椅子と一緒に運べないくらい平均値だと思うんだ!



「だ、だったらパッションは! パッションピンクさんならわかってくれるはず!」


「いや、あたしもうつきあってられないから帰るわ」


「逃げる気か学園のアイドルぅ!」



 あたしこんなのもてなーい、と普段同級生男子を誑かしている癖して科学実験部が制作し暴走したミニチュア鉄人●8号を片手で捻じ伏せた実力を今こそ見せてよ隠れゴリラ!


 そんなボクの叫びも空しく、桃園さんはひと足先に自室へと戻っていった。

 事実、そろそろ議題も無くなって来ていたので解散の運びとなったのだが。


 ――まさかこの一連の遣り取りがあんな事態を引き起こすとは、この時のボクたちは微塵も気づいていなかったのであった。




毎度あまり長いあとがきを書いているとそのうちあとがきが本編とか言われそうなので、今回は手短に

次回、シャーロットさんを出す予定です


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