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20kHz  作者: 水谷一志
2/6

二 20kHz

「もしもし、こっちは聴こえます。応答どうぞ。」


「やった、うまくいったぞ!」


亜美子の応答に、相手の声の主の方は、喜んでいる様子である。


 「あの…、状況が、全く飲み込めないんですが、あなたは一体、誰ですか?」


「あっ、申し遅れました、僕は『トシ』って言います。一応、ラジオネームということで。あなたの名前は、何ですか?」


亜美子は「トシ」と名乗る人物から、名前を訊かれ、咄嗟に、


「私…ですか?私は『アミ』って言います。私も、その、ラジオネームということで。」


と答えた。


 「なるほど。アミさんですね。はじめまして!」


「…はじめまして。」


亜美子は、なおも不信感が拭えない。


「すみません。質問があるんですが、どうして私のヘッドホンから、その、トシさんの声が聴こえるんですか?」


「そうですね。びっくりしますよね。


 その質問に答えるのも兼ねて、軽く自己紹介しておきます。


 さっきも言いましたが、僕は、『トシ』って言います。本名は…今は内緒です。それで、僕はとある大学の2年生で、大学では、フランス文学を専攻しています。」


一瞬、亜美子は、私と専攻が同じだ、と思ったが、すぐに気を取り直した。また、大学2年生ということは、私と同い年か、少なくとも同世代だ、亜美子はそうも思ったが、途中で口を挟むことなく、トシの話を聴いた。


 「それで、ここからが肝心な話なのですが、僕は、趣味でアマチュア無線をやっています。ちなみに、ご存知かもしれませんが、アマチュア無線は、それを運用するための国家資格と、電波法に基づき許可を受けた無線設備が必要なんですよ。


それで、少し自慢になるかもしれないのですが、僕の無線の腕はなかなかのものだと、自分では思っています。もちろん、資格は持っていますし、無線技術の方も、同じくアマチュア無線をやっている友達からも、


『お前、やっぱりすげえな!』


と、よく言われたりもします。アミさんは、無線に興味はお持ちですか?」


「いえ、無線はよく知らないです。あの、私の質問に、答えて頂けませんか?」


亜美子は冷静に、そう答えた。


 「おっと、そうでしたね。すみません、僕、すぐに話を脱線させてしまう癖があるんです。


 それでなんですが、僕、友達に自慢したいのと、純粋な無線に対する向上心とから、無線の、新規開拓をしようとしていたんです。それは、現在アマチュア無線で使われている


周波数とは、全く異なるタイプの周波数を、開拓する、という行為です。


 そして、その新規開拓をしている時に、たまたま、いい周波数を見つけました。それが、この、アミさんとの通話につながったわけです。どうです、これでヘッドホンから僕の声が聴こえてくる理由、お分かりになって頂けましたか?


 もちろん、このやり方は、少し複雑な所もあって、全部を説明していたら、専門知識がないと、理解できないかと思います。でも、一応、説明しておいた方がいいですかね。えっと、まず周波数の合わせ方ですが…」


「いえ、結構です。ありがとうございます。」


亜美子は、ついさっき、トシが話を脱線する癖がある、と言っていたのを思い出し、トシの話を遮ろうとした。そして、まだよく分からないこともあるが、とりあえず、トシは無線が得意で、その無線による通話がこれである、という所まで理解した。


 「おっとすみません。また、いつもの癖が出てしまいそうでした。


 ちなみに、アミさんは、今は何をされていますか?」


「私も、トシさんと同じ、大学2年生です。」


「なるほど。ちなみに、失礼ですが、アミさんの通う大学は、どこの大学ですか?ちなみに、僕は、○○大学に通っています。」


 ここまでトシの話を聞いた瞬間、亜美子は、はっとした。


「…どういうつもりか知りませんが、それは嘘ですね。なぜなら、私もその、○○大学の学生だからです。あなたさっき、『大学での専攻はフランス文学だ。』って、仰ってましたよね?私も、その○○大学で、フランス文学を専攻しています。それで、同じ専攻の同級生、大学2年生は、私を含めて6人ですが、今の2年生は、全員が女子学生です。だから、あなたみたいな大学2年生の男子は、今、うちの大学にはいません。


 何でそんな嘘をつくんですか?って、訊いても仕方ありませんね。あなたが、無線が得意だっていうことは、今日の一件でよく分かりました。でも、これからは私に、話しかけないでください。


 では、さようなら。」


亜美子は、「トシ」と名乗る人物は、もしかしたらストーカーかもしれない、と思い、ヘッドホンを外そうとした。


 「ちょっと待ってくださいよ!僕は本当に、○○大学の、フランス文学専攻の学生ですよ。ちゃんと、学生証も持ってますし…


 って言っても無線じゃ見えないですよね。とりあえず、僕は1984年入学の、○○大学の学生です。」


「…は?」


亜美子はそれを聞き、あきれて物も言えなくなりそうになったが、とりあえず一言、トシに言ってやることにした。


 「何わけの分かんないこと言ってるんですか?今は、2015年の12月16日、水曜日です。あなた、大学2年生なわけないじゃないですか。


 それとも、卒業生の方ですか?…どっちにしろ、私に関わるのは、もう止めてください。


 では、失礼します。」


そう言った亜美子を、トシはもう1度、引きとめた。


 「ちょっと待ってくださいね。なるほど。僕の実験は成功したわけか。」


「はい?」


「僕の話、もう少し聞いてください。


 ちなみに今は、僕のカレンダーでは、1985年12月16日、月曜日です。さっき言いそびれたことがあるんですが、実は僕は、未来へ通話できる周波数を、探していたんです。」


「…未来?」


 「はい。未来です。ちなみにそのやり方は…」


「あの、話逸らすなら、ヘッドホン外しますよ。」


「すみません、またいつもの癖が。


 実は、アマチュア無線をずっとやっていくうちに、僕、気づいたことがあるんです。


『もしかしたら、未来の人間と、話をすることができる周波数が、あるんじゃないか?』


ってね。


 それで僕は、実験に実験を重ねました。そして、ある方法を編み出しました。その方法、聞きたいですか?」


「いえ、結構です。」


「ですよね。それで、30年後、2015年の12月16日に照準を合わせて、無線を開始したんです。あと、その相手は、やっぱり同じ大学の、同じ専攻で、今の僕と同い年の人がいいかな、と思いまして…、まあ、正式には、僕のだいぶん下の後輩に当たる人、ということになりますが…。」


亜美子は、予想外の話の成り行きに驚いたが、冷静になるように努め、こう切り返した。


「その話、はっきり言って信じられないです。あなたが無線が得意なのは分かりましたが、まさか過去から未来へ、無線ができるなんて。


でも、どうしても信じて欲しいって言うなら…、そうですね。あなたが1985年の人だっていう、証拠を見せてください。私にもはっきり分かる、動かぬ証拠をです。


それがないなら、やっぱり私は失礼します。」


「分かりました。一応証拠は、残してありますよ。


うちの大学の文学部には、専門の図書館がありますよね?」


「はい。あります。」


 亜美子は、この人は学部の建物内を、よく把握しているなと思った。だとすると、これは卒業生のいたずらだろうか。


 「良かった。まだ建物は、変わっていないみたいですね。その図書館の、フランス文学の所に、サルトル全集があるはずです。その第1巻に、1985年の日付入りの朝刊と、僕のサインとが入った、写真を挟んでおきました。一応、現像に時間がかかったので、今日、12月16日の日付ではなく、1ヶ月前の11月16日の日付ですが…。


 確か、あの本棚は、滅多に人は触らないので、今でも写真はあるはずです。多少古くなってはいると思いますが、確認してみてください。


 あと、規約が変わっていなければ、あの図書館には卒業生も含めた部外者は入れないことになっていますので、僕が卒業生、という線は消えると思います。それでも、大学の教授がいたずらをした、という線は残りますが…。でも、そんな手の込んだいたずら、普通はしないと思います。


 とりあえず、明日でいいので、図書館に、確認しに行ってください。それでもしその写真がなければ、僕の負けです。僕との通話、止めてもらって結構です。でも、もし写真が残っていれば…、僕との通話、これからも続けて頂けませんか?未来の話、いろいろ聞かせてください。」


 「写真がなければ、通話をしなくていいんですね。約束ですよ。分かりました。」


亜美子はそう言い残し、その日の通話を終えた。





 翌日、亜美子は、文学部の図書館に向かっていた。確かにあの人の言う通り、わざわざそんな偽造写真を用意してまで、亜美子にいたずらをする理由は、ないに等しい。だとすれば、「トシ」と名乗る人物は、本当に過去の人なのだろうか…?とりあえず、写真さえ見つからなければ、もう通話はしなくていいんだ、亜美子はそう思いながら、フランス文学・哲学の、サルトル全集の所へ向かった。


 亜美子の通う大学の、文学部の図書館は、本館の図書館とは違い、利用する学生が少ない。それもあってか、館内には、例えば古書の匂いなど、独特の雰囲気が漂っている。亜美子は、最初この図書館に入った時は、この雰囲気が苦手であったが、学生生活を文学部で過ごすうちに、この雰囲気にも慣れ、今では、


「これが、文学の香りなんだ。」


と、誇りを持つようにもなっていた。(ちなみに、亜美子は、レポートをまとめる時など、この文学部の図書館を、頻繁に利用していた。)


 そして、サルトル全集の、第1巻のページをめくり、少しした瞬間…、亜美子は驚き、危うく声をあげそうになった。そこには、昨日の無線の主が言う通り、「トシ」と書かれたサインと、「1985年11月16日」と書かれた朝刊が一緒になって映っている、古びた写真が、あったのである。


 「やっぱりこれは、いたずらではない。ということは、トシさんは、本当に30年前の、この大学の学生…。」


そのような声にならない思いが、亜美子の頭の中を反芻していた。


   


   ※ ※ ※ ※


 「あの、すみません、私、謝らないといけないと思っています。」


亜美子はその日の夜、トシと通話していた。そして、今までのトシに対する非礼を、詫びようとした。


 「いえ、いいですよ。いきなり話しかけたのはこっちの方ですし、それに、


『過去から無線で通話しています。』


なんて言われても、ピンと来ないですよね?ちなみに、このやり方を開発するまでには、色々あって…」


「あ、また話、脱線しようとしてません?」


「あ、いや、その、すみません。」


そう言って2人は、笑った。どうやらトシは、例えば無線など、自分の好きなことになると、話の脱線が多くなるらしい…、亜美子は、そう思った。


 「それで、アミさん、これから、僕と通話仲間になってくれませんか?」


「分かりました。前に約束しましたもんね。私の負けです。いいですよ!」


「ありがとうございます!僕、未来の話を、色々聞きたいんです。もちろん、80年代の話で、アミさんが聞きたいことがあれば、教えてあげますよ!」


 そう言ったトシは、本当に嬉しそうであった。亜美子はトシの表情を見ることはなかったが、声のトーンで、その嬉しさは伝わってきた。


 「そうですね…。もちろん、80年代に興味はあるんですが、何から訊けばいいのか分からないので…、とりあえず、スマホで検索して、予習してから訊きますね。」


「ス、スマホ?何ですかそれ?」


どうやら、「スマホ」の3文字は、トシには理解できないらしい。


 「あっ、ごめんなさい。トシさんは80年代の方ですから、スマホは知らなくて当然ですよね。


 スマホは、正式名称を、『スマートフォン』って言います。簡単に説明すると、『パソコンと同じ機能を持った、携帯電話』といった所でしょうか。ちなみに今も、そのスマホにヘッドホンをつないで、通話しています。」


「は、はあ…。ちょっと待ってくださいね。」


 どうやらトシは、にわかには亜美子の言うことを理解できないらしい。


「僕もパソコンは知っていますよ。ワープロみたいなやつですよね?あと、携帯電話も、持ってはいませんが知っています。その、パソコンの機能が、携帯電話のサイズに収まっている…、ちょっと、小さすぎないですか?」


亜美子は、スマホで「80年代」と検索しながら、こう答えた。


 「あっ、今、そのスマホで、80年代について検索しました!パソコンと携帯電話、確かに80年代にも、ありますね~。でも、その携帯電話と、スマホは全然違います。…画像の送信ができないので残念ですが、スマホは、80年代の携帯電話よりもっと小型です。そう、手のひらサイズですね。」


「画像の送信?そんなこともできるんですか?それに、手のひらサイズ?その中に、パソコンの機能がある?


 …ちょっと、信じられないです。まあ、その、スマホは高性能、ということは、何となく分かりますが…。


 自分では一応、流行の最先端を行っているつもりでしたが、未来の人から見たら、僕なんて古い人間なのかもしれませんね。」


トシの発言に、亜美子は素早くフォローを入れた。


 「そんなことないですよ!だって、30年後の未来ですから、仕方ないですよ。私だって、逆の立場だったら、理解できないと思います。」


「ありがとうございます。アミさんは、優しいですね。」


「いえいえ。」


「おっと、もうこんな時間だ。今日の所は、これで失礼します。また、いろいろ話、聞かせてくださいね。」


「分かりました。私もトシさんとの話、楽しみにしています!


 さようなら。」


 こう言って、その日の通話は終了した。亜美子は、最初は警戒していたものの、トシさんは本当は優しい、いい人だ、そう思った。そして、トシさんは未来のことを知りたがっていたので、これからはできるだけ、トシさんの要望に応えてあげよう、とも亜美子は考えていた。


 その日、2015年12月17日、木曜日の夜は、昨日の雲がなくなり、きれいな星空を、亜美子の家からも見ることができた。そして亜美子は、30年前、1985年の12月17日の空は、どんな模様だろう、そんなことも、ふと思った。





※  ※ ※ ※


 「へえ~。2020年には、東京で2回目の、オリンピックが開かれるんですね!」


「そうなんです。私、こう見えてスポーツ観戦も好きなので、すごく楽しみにしています!まあ、こう見えてって言っても、トシさんには姿は見えないですけどね。」


「僕もスポーツ観戦は好きですよ!こっちは今度、1988年に、ソウルでオリンピックが開かれます。まあご存知かとは思いますが…。でも、ちょっと、見ることはできないかもしれませんね。」


「え、どうしてですか?」


「いやまあちょっと、忙しかったりして…。」


「ふうん、そうなんだ。何なら私が結果、教えましょうか?」


「それは止めてください。楽しみがなくなっちゃいますから。これ、未来のことを必要以上に話さないってこと、過去の人と話す時のマナーですよ!」


「そんなマナー、誰が考えたんですか?」


「もちろん、僕が今考えました。」


「何ですかそれ!そのマナー、絶対ここ以外では通用しないですよね!」


「まあ、そうかもしれませんが…。冗談ですよ。」


「分かってます!」


2015年12月22日。(1985年12月22日)亜美子とトシの2人は、オリンピックの話題で、楽しそうに話をしていた。ちょうど、たまたま話題が好きなスポーツのことになり、亜美子がトシに、東京オリンピック開催について、伝えたのであった。


 2人は、亜美子がトシの写真を見つけ、トシに謝ってから、毎日、夜の時間に通話をしていた。そして、2人の話は弾み、話題は2人の通う大学のことや、今流行っている映画、音楽など、多岐にわたった。(そしてそれらの話題で、2人はお互いに過去、また未来のことについて伝え合うので、2人は普通の友達との会話では得られない、新鮮さを感じていた。)


 そして、オリンピックのことで会話が弾んだこの日、亜美子が、トシにある提案をした。


「そういえばトシさん、この通話に、コミュニティネーム、つけません?」


「?コミュニティネーム?何ですかそれ?」


そうか、トシさんには分からないか、亜美子は瞬時にそう思い、SNSの説明を、トシにしようとした。


「私がいる2010年代には、SNSというものがあります。これは、『インターネット上の交流を通して社会的ネットワークを構築するサービスのことである。』…ネットの辞書にはそう書いてあります。すみません、うまく説明できなくて。


 要は、『インターネット』という、パソコンとパソコンを繋ぐようなシステムで、私たちは通話をしたり、手紙のようなものを送ったりできる、ということです。ちなみに、この『インターネット』では、辞書を見たり、好きな芸能人のことについて調べたり、いろんなことができます。トシさんは、インターネットについても、知らないですよね?」


「そうですね…。ちょっとピンと来ないですが、要はパソコンで、情報のやりとりができる、そういうことですかね?」


「すごい!私の拙い説明で、そこまで理解してくれて、嬉しいです。


 それで、『コミュニティ』の説明なんですが、これはパソコン上の、サークルみたいなものです。私たち2010年代の人間は、その、パソコンやスマホ上の『コミュニティ』に入って、お互いに情報のやりとりをしたりしています。そのコミュニティの名前を、『コミュニティネーム』って言います。」


「なるほど。何となく分かりました。要は、サークルネームと似てるってことですね。」


「そうですね。」


亜美子は、トシの説明に対する飲み込みの速さに、少し驚いた。自分が逆の立場で、例えば30年後の、2040年代の人から説明を受けた場合、ここまで理解できるだろうか?そう思うと、亜美子は自信がなかった。


「それで、もちろん無線とパソコンは違いますが、私たちも一応通話しているわけですし、その『コミュニティネーム』、欲しいなと思いまして。どうですトシさん、いいアイデアありますか?」


そう訊かれたトシは、少しの間黙り込んで考え、こう答えた。


 「そうですね…。では、『20kHzキロヘルツ』っていうのはどうですか?」


「『20kHz』ですか?名前の由来は?」


「そうですね。実は、20kHzっていうのは、超音波のヘルツなんです。もちろん、諸説あるのですが、超音波は、一般的に20kHz以上のヘルツ数の、音波であると言われています。ちなみに、僕は一応無線をやっているので、ヘルツに関しては詳しいですよ。超音波は、ご存知かもしれませんがコウモリが使っていて、…」


 「あ、また話が脱線してますよ!」


亜美子は、夢中になるとすぐに話を脱線させるトシを、かわいいと思った。


「すみません、つい…。


 名前の由来でしたね。それで、その、超音波みたいに、本来は聴こえないはずの、過去・未来の声同士で、僕たちは通話をしている、これってすごいことだと思うんです。だから、超音波になぞらえて、『20kHz』!どうです、格好よくありません?」


「なるほど。超音波ですか。私はその辺は詳しくないので、素直になるほど、って思いました。いいですね、『20kHz』!よし、それにしましょう!」


「気に入ってもらえて良かったです。ありがとうございます!」


 亜美子は、新たに決まったトシとのコミュニティネームに、ご満悦の様子である。トシも、そんな亜美子の様子を、ヘッドホン越しに感じ、嬉しくなった。


 「ところで、超音波の話、もっと聴かせてくれません?さっきの話の続き、お願いします!」


「え、いいんですか?脱線した話ですよ?」


「もちろん!」


「では遠慮なく。…」


亜美子は、トシの話を、楽しそうに聴いていた。実際にトシの顔は見えなかったが、いきいきとしゃべるトシは、きっとキラキラした目をしている、亜美子はそう思った。


 そして、2人のコミュニティ、「20kHz」は、この日から、本格的にスタートした。


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