大桑城攻め 〜初陣〜
「相手は打って出たようだな」
自分たちが城に入ってから3日後の昼頃、痺れを切らしたのか土岐頼純の軍勢の五分の三に当たる600ほどで伊自良城の前に布陣していた。
あくまで防衛をするためなのか城を包囲はされていなかった。
だがそこそこの練度を誇っているようで統制がしっかりととられていた。
「夜まで待つとするかな」
初陣を前に恐怖と高揚感が入り混じった感情を抱いていた……
「光秀隊、出陣するぞ!」
包囲されてはいないなめ裏口からすんなりと外へ出られた。
手勢は鉄砲隊だけであり、自分を含めて五十である。
その後ろに続くのは広忠殿が率いる槍兵八十である。
まだこの年には火縄銃は普及していない。
理由はいろいろあるが先ずは値段が高いのである。
現代で言えばおよそ二百万円である。
自分の軍勢には火縄銃が五十丁あるのでおよそ一億円になる。
また弾込めに時間がかかるので撃ったあとに反撃されると全滅する可能性がある。
しかし良い点も多い。
先ず、初心者でも使えるところである。
最低でも二週間訓練すれば誰でも使えるのである。
初期投資は高いが長い目で見てみると弓兵を育てる方が値段は高くつく。
さらに弓兵を一人前にするには最低二年はかかるので即戦力になりやすいのである。
他の理由には罪悪感の大きさがある。
部隊のほとんどは農民である。
そのため訓練もほとんど受けていないので人を殺める事に抵抗がある。
例えば弓の場合は自分の放った矢の軌道が見え、相手に当たるのが見えるので罪悪感を感じやすい。
しかし火縄銃はとても速いので相手に当たったのかが分かりにくいので罪悪感が軽減されるのである。(ちなみに速さは秒速四百二十m)
他にも筋力がなくても飛距離が安定するとか、煙の量が多いので煙幕の代わりにもなるなど利点は多いのである。
相手の右翼に回り込むことができた。
「弾込め用意!」
今、合戦の火蓋が落とされようとしていた。