大桑城攻め 〜軍議〜
自分達は今、斎藤家の支城である伊自良城に入り陣を敷いていた。
伊自良城は大桑城の南西に位置し、距離はおよそ4.7kmの位置である。
いかんせん真夏の行軍であったため兵の消耗が激しく休んでいる状況である。
「この城に入城しているのは相手方の耳に入っているだろうがいつ攻める?」
と叔父である光安が尋ねた。
今回の合戦での明智家の総大将は光安である。
こちらの軍勢の主な将は妻木広忠、藤田藤次郎、三宅重利と自分達明智勢である。
「相手はこちらの数が少ないので油断をしているのではと思います」
と左馬助は発言した。
実際こちらの兵力は相手の三分の一にも満たないのである。
城攻めは相手の三倍の兵力がないと落とせないとよく言われている。
「相手の城とこちらの城を遮るのは堀と二の丸、三の丸だけですので相手はこの城を取りに来る可能性もありますね」
確かに広忠殿の言うとおり近くに相手の居城があるのは嫌なものである。
ならば兵力に物を言わせ打って出る可能性は高い。
まだ道三殿の援軍が期待できない今仕方がない。
「援軍を待っているように見せかけて打って出たところを叩きましょう!」
城に籠っているのであれば引きずり出すしかない。
「でもそれでは兵力的に無理ではないか?」
叔父上の反応は至極もっともである。
「なので自分達なりの戦い方をしましょう!」
「それは何だ?」
「はい!奇襲戦、いや夜戦で挑みましょう」
人数が少ない方は夜の暗い中を奇襲するのが一番である。
何故なら夜は月明かりしかなく見にくいため兵が少なくても立ち回りができるはずだ。
さらに相手は恐怖を感じていたずらに武器を振り回すであろうから同士討ちもさせることができる。
「それだけで相手を追い込めるのか?」
それだけではもちろんない。
「他にも策と言う程ではないですがさらに兵を減らす方法がありますよ」
と自分は不敵な笑みを浮かべた。