長良川の戦い 開戦
「これを信長の元へ届けよ」
四月十九日、美濃を譲るという書状を書き上げて尾張へと持って行かせた。
これが到着した時には既に儂はこの世におらぬかもしれぬがな……
予想はしていたが、やはりこちらには余り兵が集まらなかったようである。
いっそのこと降伏するか?
いや、それは道三の選択技にはあってはならない!
書状が届けば、信長は援軍を出してくるであろう。
だが、奴らに損害を出させるわけにはいかない。
ならば、早く決着をつけねばならぬな……
四月二十日
「義龍軍が長良川の南岸へ移動したようです!」
先に動いてきたか。
「儂らも山を下り、北岸へと本陣を移す!」
人数が少ないから、開けた土地で戦をするのは不利だ。
だが、川を挟めばまだ小ましであろう。
「道三軍、対岸に陣を敷きました」
「そうか」
予想外であった。
美濃の蝮と呼ばれている道三がわざわざ不利な場所まで来たぞ。
何か策でもあるのか?
「竹腰道鎮に四千の兵で攻めさせ、様子を見よ!」
明智は抑えているから道三の兵数は、およそ千八百にすぎない。
何を企んでのやら……
とりあえず相手の二倍以上の兵で攻めるかの。
「道三様、およそ四千の兵が川を渡ろうとしております」
とうとう来たか……
「弓を構えて前に出よ!川の中を歩く時に動きが鈍くなるからそこを狙え!」
たが、それも大軍の前には無力であった。
倒れてはいくが、それよりも速く、次から次へと敵が沸いてくる。
「十兵衛から鉄砲隊を借りておくんじゃったな……」
そうこうしているうちに、続々と川を渡り終え、白兵戦になる。
「道三の首を取れ!」
次第に本陣の周りにも敵の兵がチラホラと見えるようになってきた。
だが、こちらも奮闘していてほぼ互角の戦いをしておる。
「お久しぶりですね、道三様。首を頂戴に上がりました」
「道鎮……」
そこにはかつての部下の姿があった。
しかし、こちらは分かっている。
「この部隊の隊長のようだな、道鎮よ!ならば、お前の首を貰い、勝負を着けさせてもらうぞ!」
奴もジリ貧のはずだ。
周りの護衛も少ない!
一人、二人と味方が倒れていく。
流石は美濃の武士といったところか……
だが、
「周りを囲め!そいつは既に孤立している!」
道鎮は槍で胸を貫かれ絶命した。
「道鎮の首を討ち取ったぞ!皆の者、盛り返すぞ!」
これで兵の士気も上がった。
さてと、まだまだ暴れてやろうではないか!




