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桔梗紋  作者: 翠泉
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冬が過ぎ……

 「伝令でございます!」

 1556年4月、雪が溶け春の暖かさを感じられる季節になったというのに、美濃国内の空気は冷たく重いものだった。

 「道三様は本陣を長良川の近くにある鶴山においたとのことです」

 左馬助はそういった後に、顔を俯かせた。


 「どうした?続きがあるのではないか?」

 叔父の光安は問いかけた。

 「義龍の軍勢はおよそ一万七千五百、こちらの軍勢は二千七百余でございます……」

 「何っ……」

 叔父は驚きの声をあげた。

 予想していた事とはいえ、まさかここまで兵数の差がつくとは……


 我々が籠城する長山城には一族の者が沢山集まった。

 妻木広忠を筆頭に、溝尾庄左衛門(みぞおしょうざえもん)三宅弐部之助(みやけにぶのすけ)藤田藤次郎(ふじたとうじろう)肥田玄蓄(こえだげんちく)可児才右衛門(かにさいえもん)森勘解由(もりかげゆ)などおよそ八百七十人が集結した。


 「お久しぶりですね広忠殿」

 「久しいな十兵衛殿」

 懐かしさを覚えるぐらい久しぶりに会ったがこんな形になるとは……

 それを察したのか広忠殿は、

「戦国の世なのですから、こうなったのも仕方のないことです……」

 分かってはいるが納得はできないものである。


 今ここにいる軍勢は道三側の勢力の約三割にあたる大軍勢になる。

 義龍からしたら、必然的にこの城に多くの兵力をかけてくるだろう。

 これまでの明智家の功績を考えればとうぜんではあるが……

 そうなってくると直接援軍を送ることはできない。

 相手からすれば道三様の首を取るまで時間を稼いでくるだろう。


 「はぁ……どうにかならぬものか……」

 情報では織田家へ援軍要請をしたらしいがまだ宛にならない。

 相手の兵力が余りにも多すぎる!

 美濃国の殆どが義龍側についてしまった。

 いつものように策を練っても厳しいであろう。


 「それでも……」

 生きるためには勝つしかない!

 勝てる可能性を見出すためひたすらに考えるのであった。

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