道三の隠居
1554年、道三様は隠居することとなった。
半ば追い出される形で義龍様へと家督を譲ることとなった。
これは自然な流れである。
道三様は見る目は確かだし、戦の才能もある。
しかし、内政に関してはほとんどと言っていいほどに何もできていない。
特に木曽川と長良川が氾濫し、周辺の町が荒廃しているにも関わらず改善するための政策を打ちだす事ができなかったのである。
他にもこまごまとしたものはあるが大きな理由はこれである。
今日は隠居した道三様に会いに来ていた。
今の居城は標高八十六mの山にある鷺山城である。
そこまで大きい城ではないがその城からは稲葉山城が見えた。
「十兵衛よ。来てくれたか」
そこには剃髪をした道三様がいた。
まさか仏門に入るとは正直びっくりした。
「道三様、家督を譲られたのですね」
まぁ理由は分かっているのだが……
「少し俗世から離れてみたくなっての」
言い訳にしか聞こえないが剃髪をしたのはそれなりに考えがあってだろう。
「これからはどうなされるのですか?」
美濃の蝮がこのまま引き下がるとは思えないからな……
「義龍に家督は譲ったがあいつは身長が高いだけの老耄じゃ」
会ったことはあるがそうは思えなかったけど……
少し大人しい印象は受けたけどもね。
「それよりもこの城に連れてきた次男の孫四郎、三男の喜平次の方がよっぽど利口者だ」
義龍様が自分の息子ではないから多少贔屓目な気はするがどっちもどっちな感じかな?
「あんな軟弱者に国を任せてはおけん。義龍を廃して二人のどちらかに跡を取らせるか……」
「道三様、滅多な事を口にするとのではありませぬ!」
家督を譲っておいてそれはないだろ!
いくら自分が主導権を握りたいからといってそれはないだろ。
「冗談じゃ。そう怒るな……」
そうは言ったが嘘とは思えない様子だった。
これはまた一悶着ありそうな気がするぞ……
鷺山城から見える稲葉山城はこちらを注視しているように感じられた。




