お見合い
今大変な窮地に立たされている……
婚約してほしいと言われていることを昨日教えられ、今日には返事をしなければならない。
しかも既に別室で待機しているそうだ。
困ったな……どう返事をしようか?などと考えていると
「失礼しまする」
と野太い声が聞こえてきた。
とうとう来てしまったか……
入ってきた男は30代程であろうか?生気に満ち溢れておりまだまだこれからというような人である。
続いて入ってきたのは目鼻立ちがしっかりしていて端正な顔立ちのいかにも美人という女性であった。
とても大人っぽくて自分には不釣り合いではないかと思えてきた……
「初めまして、煕子と申します」
とこちらを向いてニッコリと微笑んでくれた。
うん。これは、あれだな。一目惚れというやつだな。
こんなにもドキドキしているのは初めてかもしれない……
「は、初めまして広忠殿、煕子殿、ようこそおいで下さった。」
動揺が隠せていないか?
すると広忠殿が
「そうかしこまらないで下さい、十兵衛殿」
と言ってはくれたがお義父さんになる可能性がある方に無礼は働けないよな……
「それでは十兵衛よ、煕子殿と二人で遊んで来なさい。儂は広忠殿と話したいことがあるのでな」
と叔父上はニッコリと笑った。
「煕子殿、どこか行きたい場所はござらんか?」
現代でデートなどしたことがないのでどうしたらいいか全く分からん!
「十兵衛様、煕子殿ではなく煕子と読んで下さい」
と言われた。余所余所しかったかな?
後、行きたい場所があるか聞いたが山城なのであまり楽しいところはない。
「では外に出ましょうか」
外に出たはいいが周りは森しかない……
何か話題になりそうなものはないか?
「そういえば煕子は夫になる人が自分なんかで良いの?無理してない?」
と怖いけど聞いてしまった。
少しびっくりした様子で
「私が婚約したいと思っているのは十兵衛様だけですよ」
と笑ってくれたがどこか嘘っぽいのである。
この時代は政略結婚は当たり前なので望んでいない人と結婚しなければならないことも多々あるのであろう……
いろいろと考えていたら何かを蹴ってしまった。
「これはなんだ?」
それは木彫りの置物のようであった。
「それは大黒天の像ですね。大黒を拾えば千人の頭になれるそうですよ」
と煕子は喜びながら言った。
そんなものがあるのだなと思いながらも自分はこう言った。
「ならばこれは必要ないよ」
すると煕子はびっくりした様子で何故ですかと聞いてきた。
「自分は千人の頭になることくらいで終わるつもりはない。もっと大きくなってみせるよ」
と笑ってみせた。
広忠殿と煕子は自分達の城へと帰って行った。
今日は非常に疲れた……
慣れないことはするもんじゃないな!
取り敢えず寝ようかな……
目覚めると朝になっていた。
ちょうどそこへ、
「十兵衛入るぞ」
と叔父上がやってきた。
「今日朝一に広忠殿から伝令が来てな煕子殿がどうしてもお前と結婚したいそうだ」
えっ?嬉しいけど何かしたっけ?向こうから頼まれるなんて……
「勿論その話受けさせていただきます!」
やったー!こんな事現代では絶対にありえなかったな……
「そうそう式は一週間後におこなう予定だ」
早くないですか?
人生の最大の幸福の一つをこんなにも早い段階で迎えることになった。