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桔梗紋  作者: 翠泉
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稲葉山城防衛戦 〜後編〜

 もうすぐで稲葉山城へと辿りつきそうではあるが長山城を出た時から兵は半分に減っていた。

 馬一頭に二人乗っているため、速さがでないので何度も追いつかれ危ない目にあった。

 だが強みも確かにあったのでなんとも言えない……

 「皆、すまない……」

 亡くなってしまった兵を思うとそう呟いていた。




 「道三様、こちらに向かってくる兵達がいます!」

 誰だと思ったが掲げている旗ですぐに分かった。

 あれは明智ではないか!しかも光秀だ!さらに後ろから付いて来ている兵は……

 織田のところの毛利だな。

 「明智兵を殺させてはならん!なんとしても救い出せ!」

 あいつはこれから重要な存在になっていくからな……

 

 稲葉山城のふもとまで来たが追手の勢いは増していた。

 「このままだと合流する前にやられる……」

 すると前方からたくさんの弓を射る音が聞こえた。

 待ち伏せされていたか終わりだな……

と思ったのだが、その矢は相手の兵に刺さっていた。

 「助けに来ましたぞ!」

 あれは斎藤家の者だな。助かった……

 相手の兵は退却していった。


 損害はあったが稲葉山城へやっと入城することができた。

 「無事だったか十兵衛、良かった良かった」

と胸を撫で下ろした様子で道三様は言った。

 「ですが自分の兵達の半数は……」

 悔しくて堪らない……もっと良い方法が他にあったのではないかと思ったがもう遅い……

 「確かに戦は辛いものだ。だがその兵達は皆お前のために戦ったんだ!ならばお前が今やらねばならぬ事は何だ?」

 そうだな……

 この世を変えるためにまずこの戦に勝つ!

 「道三様、実は織田勢には弱点といいますか隙を見せる時がありまして……」




 「信秀様、このまま戦っていても形勢は不利になります」

 これは困ったな……やはり稲葉山城は堅固な城だ。

 なかなか落とせそうにないか。

 この策は使いたくなかったが仕方あるまい……

 「城下町に火を放て!」




 「町が燃えている……」

 道三様は肩を落としながら言った。

 眼前は火の海に呑まれていた。

 それは当たり前だ。これ程までの町をつくるのにどれだけの苦労があったのかは良く分かる……

 関係の無い民まで巻き込むとはなんて奴らだ!

 「道三様、燃えているのは残念な事ですが今はどうしようもありません……」

 自分でも薄情だと思うような発言だったが決着をつけるためにも勝機を逃してはならない。


 織田勢の弱点とは夕方に兵を引き返す時にある。

 夜は奇襲などをされるのは怖いからある程度の距離を取る人は多い。

 そこは全く問題ではないのだが、引き返す時に問題がある。

 何故かは知らないが陣形を組まずに崩壊してるかのような状態で毎回引き返しているのだ。


 自分達は城を出て敵陣に襲撃する準備は出来ていた。

 「突撃!」

と道三様は声を張り上げた。

 



 「何だ?この地鳴りは……」

 「これはもしや馬では?」

 するとどこからともなく悲鳴が聞こえてきた。

 信秀はゆっくりと自陣に戻りながらこれを聞いた。

 もしやこれは斎藤勢の奇襲か?

 火縄銃を撃つ音も聞こえてくる。

 このままだと命が危ない。

 後ろからはとてつもない勢いでこちらに迫ってくる斎藤勢の姿が見えた。

 「皆の者、引け!引け!」

 自分は必死に馬を走らせた。




 ここでの戦いはやっと終わった。

 あたりには織田兵の骸ばかりが転がっていた。

 無情な世界だ。これを自分達がやったと考えたら気分が悪くなった。

 「相手を壊滅状態に追い込めたな」

と道三様はこちらを向いて言った。

 「これからはどうするのですか?織田を追走しますか?」

 まぁ殆ど決着はついているようなものだが……

 「儂は和睦しようと思うとる。将来的にもその方が良いじゃろう」

 えっ?和睦するんですか?

 ここまでやられたのに許すというのか……

 だが道三様を見ると戯れ言を言っているようには見えない、妙な説得力があった。


 これにて稲葉山城防衛戦は集結した。

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