稲葉山城防衛戦 〜前編〜
織田の軍勢が挙兵してから一日たち、長山城の眼前には織田の陣営ができていた。
毛利敦元を筆頭にするおよそ六百余の軍勢である。
その中に毛利藤九郎もいるので織田信秀の家老が二人もいることになる。
予想以上の強敵がきたので城中はどんよりと沈んでいた。
「まずいな……」
と叔父上は苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
全くの想定外であった。
「大桑城攻めでの成果がありますので注意されているのかもしれないですね……」
と左馬助は言った。
こうなってしまってはなす術はない。
捨て身の覚悟で突っ込むか?
それとも火縄銃を用いて遠くから撃ちまくるか?
だがどれも有効とは言えない……
せめて相手の主要人物を一箇所に集めれれば……
もしかしたら、どうにかなるかもしれないぞ!
「左馬助、馬は何頭おる?」
「100頭程はおりますが……」
と訝しげにこちらを見た。
なぜ家老がわざわざ二人もこの城を落とすためだけにきているのか。
それは業績があるからだ。
狙いは自分、叔父上、広忠殿であろう。
ならば叔父上に城は任せて、広忠殿と自分で相手を引き付けながら稲葉山城へ向かう。
敦元か藤九郎のどちらかは絶対に追ってくるはずだ。
上手くいけば、二人ともである。
斎藤勢と合流できれば手が無いわけではない。
織田の戦の仕方を聞く限り、隙は必ずできる。
その時に壊滅状態に追い込んでやる。
そのためにも家老の一人でも多く倒すのが敵方への打撃が大きいので、敦元か藤九郎には稲葉山城で倒されてもらうぞ。
準備は整った。
「馬一頭につき、後ろに鉄砲兵を乗せろ!」
また戦場へと赴くことになるのか……
「叔父上、城は頼みましたよ」
大きく息を吸い込み、高揚感と恐怖が感じられる声を自分は放った。
「明智兵、出陣!」




