平和な日々
時は天文14年(1545年)、戦乱の渦中にある時代である。
明智十兵衛光秀として転生した自分は少しずつこの暮らしに馴染んできていた。
年齢は17歳であり転生する前と同じ年齢なので多少びっくりしている。
今のところは戦は起こっていないがいつ起きるんだろうな……
いざ起こったと考えると恐怖で震え上がってしまいそうだ。
でも今はとても平和で長山城という少し小さいかもしれないが尾根や谷に囲まれている城で暮らしている。
君主は斎藤道三で美濃の蝮と恐れられており、未来でも有名である。
父はこの長山城を落とすための戦で亡くなってしまったらしい。
そのおかげで今こうしてのんびりと生きているのであろう。
この城の城代は光安といい、父の弟である。
父が亡くなったときまだ7歳とまだ幼かったため叔父である光安が城代を務めることになったという訳だ。
叔父は優しい人物だが稽古の時などはとても怖い人である。
か、考えただけで背筋が……
そんな日常を叔父の息子である左馬助とともに稽古をしたり勉学に励んでいるのだが……
勿論自分は刀を振り回したこともなければ当時の字を読むことも書くこともできないのである。
そんなことがあるため家中からは、
「明智家の次期当主はうつけになりもうされた。この先どうなってしまうのか……」
と陰口を叩かれ、悲観されているのである。
俺は確かにそこまで頭は良くないし運動神経も良くないかもしれない!
だがこの時代にきてさほど時間も経ってないのに時期早計ではないか?と思うのであるがそんなことを言うと、
「何を言っておられるのですか?明智家ももう終わりでございます……」
などと泣かれてしまうのである。
そんなある日叔父上に呼ばれた。
何を言われるのだろうか……とても不安だ……
「おぉ来たか十兵衛。お前に話があるのだが」
興奮した様子で話をしている。何が起こるのであろうか?雷が落ちるのか?
「お前は婚約をする気はないか?」
「えっ?」
間抜けな声が出てしまった。婚約だと?まだ17歳なのに?でも戦国時代では普通らしいが……
「まだ気が早いのではないですか?」
心の準備ができていない。
「親しくしている妻木広忠殿がな、娘をお前に嫁がせたいそうだがどうかな?」
戦を経験する前にまさかの結婚だと!そんなことが……
「少し考えさせていただけませんか?」
「別にすぐに婚約せよと言っている訳ではない。先ずは付き合ってみるだけでもどうかな?」
まぁそれならいいかな?
「広忠殿は娘を連れて明日訪れるらしいから返事は早めに考えておくのだぞ」
えっ?猶予が短くはないですか?
まさかこの若さで人生の大きなターニングポイントを迎え更に選択するのが明日までって……
どうしたらいいんだ!