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1. 物語の始まり

 自筆の【神出鬼没の異端術師】を設定や話の軸を固めて、再度書き直したものとなっております。

設定などはまた新しく作っていくと思いますので、今後ともよろしくお願いします。


 それでは、生まれ変わった今作をどうぞ。



 ――とある酒場にて、私は吟遊詩人をしております。私が歌う話の中には、誰もが知っているものから聞いてさえもらえないものも数多く存在します。その大半は神話の話であったり、他の吟遊詩人から聞いた話などばかりで、実際にこの目で見てきた話はほとんどありません。


 ですが…私には一つだけ、実際に自分の体で感じ、この目で見てきた本物の――伝説(ものがたり)――があるのです。今日はその伝説(ものがたり)を皆様に聞かせて差し上げましょう。


 私がその伝説(ものがたり)に加わったのは、とある国の城下町――。今回は私が加わる少し前のお話をすると致しましょう。そうですね、話は二人の魔術師が登場する所から始めましょう…。


 ==========


 もうすぐ桜の花が開く頃、鬱蒼とした森の中を歩く二人の魔術師がいた。


 一人は男で髪は黒のボサボサ、腰にボロボロの鞘の剣を下げ、膝下まである薄くて茶色い革コートを羽織り、常に暑そうに前を開けている。右手には大きな麻袋を持っている。


 一人は少女で髪は腰まである銀のロングヘア、片手に木から削り取ったような錫杖を持ち、黒いシャツに白いフリルスカートといういかにも女の子という服装、しかしその幼い容姿とは裏腹に、とても落ち着いた雰囲気を纏っているように感じる。


これを通りがかりの旅人などが目にすれば、何故こんなところを歩いているのか、という疑問を抱かざるを得ない。男一人ならまだしも少女を連れて薄暗い獣道を歩けば当然盗賊などに襲われてしまうだろう、と。だが、獣道を歩く二人にそんな心配や不安は一切感じられないのだ。ワイワイと喋りながら薄暗い道を歩けるものなどそう居ない。とてつもない楽観主義者か、もしくは盗賊を退けるほどの実力者か。野盗も馬鹿ではない、その雰囲気を感じ取りこの考えに至るのも然り。攻撃を仕掛けて命を危険に晒すなど、盗賊であっても嫌なものなのだろう。


 そして理由は他にもある。この世界――【ウィルガルム】――には魔法が存在する。そして魔法を扱える人間である【魔術師】も存在する。【魔術師】は多数の魔法を操り、時には灼熱の地獄を、時には天の恵みを与える。だが、【ウィルガルム】において魔術師の数は全人類(、、、)の約4割しか魔法を使えないため、この二人が魔術師である確率も高くはないと言える。それでもこの二人が魔術師であれば、魔法使いではない盗賊にとって、絶対に襲いたくない相手だろう。


 もちろん盗賊に身を置いている魔術師だって数多く存在する。組織化されている盗賊ギルドでは魔術師が大半を占めているとも言われているし、無法者の集まりである盗賊団にも、一人か二人魔術師がいたとしても不思議ではない。つまりこの二人がこの獣道を歩いていられるのは、この付近に構えている盗賊の中に実力のある魔術師がいないということであり、要するに単に運が良かっただけという事もあるかも知れない。


 …一番の問題点は、二人は盗賊に狙われるというあたりまえの事でさえも、眼中になさそうな雰囲気だったが…。そろそろ二人が鬱蒼とした森から出てくるだろう、日の光を全身に受けている平原へと――。


 ==========


 今までの暗くじめじめした空間から外に出たと思うと、目にたくさんの光の波が押し寄せる。体に吹き付ける心地よい春の風、小動物が草原に穴を掘り巣穴を作っている。ようやく抜けたのだ、森のとても長い獣道を通り抜けて。


「っしゃあ!やっと抜けたぁ!ってどこよここ…?目的地どこ?」

「はぁ…やっぱり馬鹿ね、どこに向かってるかわかってなかったの?」

「い、いやまぁ分かってたけど森から抜けだけでどこか判断できねぇだろ…?」


 森から抜けるとすぐに威勢のいい声が響き、それに続いて呆れたような声。ここで主人公となる二人を紹介しよう。気の抜けた声の主である男の名はエドウィン・バルド。そして冷静な声の主である少女の名はリズリット・チェルハ。二人は数年前から行動を共にして生活をしてきたが、数日前にとある目的を果たすため村を飛出した。その目的を果たす為、ある国の城下町を目指している。


 ある国というのは――【アルラード帝国】――という歴史のある、礼儀を重んじ国の為を思う騎士の国なのだが、このような印象が付いたのはここ数年である。それより前は、悪名高き魔帝と呼ばれた男が君臨していたのだが…。それはさておき、リズリットがあるものを見つけたらしい。


「あ、あれってアルラードの旗じゃない?あの山のちょっと向こうに見えてるのじゃないかしら」

「…ん?あー言われてみればあれっぽいなぁ…。それにしてもよく気付いたなリズ、『望遠瞳』(テレスコープ)でも使ってんの?」

「たまたまよ。まったく…魔法に頼らないと国さえ見つけられないエドとは違うのよ?」

「お、おう…。なんかさっきから俺の心がガリガリ削られていってる気がするんだけど、なんだろうな?」

「気のせいよ、気のせい」


 リズが遠くに見つけたのは帝国の旗、赤地に2本の黒剣がクロスした絵が描いてある。以前は、黒地に破壊の象徴である赤龍が描かれていたが、ある事件により旗が新しくなり今に至る。赤地の旗というのはとても見つけやすく、戦時に掲げれば士気も上がり力強く見える。そのため、血の気の多い国の旗は大抵赤色が取り入れられている。


「それにしても遠いなぁ…。飯も尽きて腹減って来たし、そろそろきつくねぇか?」

「そうね…。それならこの森で小動物でも捕まえて、お昼にしましょうか」

「そうしようぜ!んじゃリズには料理頼むから、俺とってくるぜ…ジュルリ」

「まぁほどほどにしときなさいね、深追いしすぎて迷子とか笑えないわよ?」

「分かってるって。ちゃちゃっと捕まえて戻ってくるからなっ」


 そう言うが早いか、一瞬で森の中へと駆け込んでいった。

「はぁ…何事もなく帰ってくるといいけれど…。とりあえず私は火でも起こして待とうかしら…」

森から少し離れた平原に、簡易的なキャンプを設置すると、旅の疲れを少しでも癒すために腰を下ろした。


 数時間後、森の中から大きな爆発音と燃え盛る劫火が見えた。知らぬ間に寝てしまっていたリズも、この大きな音と普通ではありえない現象に跳び起きる。が、直ぐに原因を察して呆れ顔になった。エドが腰に下げていたボロボロの鞘に入った剣。あれはリズとエドが魔力を込めて作った魔法の剣なのだ。宿る精霊は炎で、もちろん使える魔法はすべて炎に関するものだ。炎が操れればできることは大幅に増えるのだが、エドの場合むやみやたらに剣を振り回すために、大抵爆発するか対象を燃やし尽くすかなのだ。


 つまり先ほどの大きな爆発音と劫火はおそらくエドが魔法剣を振り回している反動なのだろう。リズはそれを見るたびに、もう少し魔法の練習をしろとか剣術を磨けとか言うけれど、返事はしても動かないといういつものお決まりのパターンなのだ。いつか困難に直面した時、生きて帰って来れればその後に技を磨こうと自主的に動くはずだ、とリズは信じているので、あえて一度言うだけで放っておく。


 そして帰ってきたエドを見て、リズはさらに呆れ顔になった。エドが手に持っていたのは、もともとはウサギのような小動物であったであろう炭の塊だった。

「それ………何かしら?」

「えぇーっとですね…その、こいつがすばしっこいんでぇ…燃やしたら早いかなぁ…と思ってですね?」

「あのねぇ……もう少し頭を使いなさいよ頭を…」

 

 元は兎だったであろう炭の塊を食べるわけにもいかず、辺りを見渡してみればいつの間にか夕暮れ時なので、また炭を持ってきそうなエドを送るわけにもいかず、結局リズが捕まえてくることになった。リズが森の中に入ってわずか10分で、大きめの兎を2匹捕まえて帰ってきた。実に気まずい空気。


 捕まえてきた兎のメニューはじゃんけんで決めようという事になり――ここでリズがキレかけるもなんとか説得に成功――三点先取じゃんけんで勝ったエド――リズがキレてエドの髪が若干焦げた――が兎は丸焼きだ!というので丸焼きに決定。キャンプに作られた焚火に吊るされた肉から滴る肉汁と、辺りに漂う肉の焼ける匂いに腹が唸る。いただきますを言うや否や即座に手を伸ばして頬張った。二人はあっという間に食べ終わると、盗賊避けとしてリズが警報の魔結界を張る。そして、麻袋から取り出した毛布にくるまると、二人はすぐに眠りの世界へと誘われたのであった――。

 

 同刻、アルラード帝国城下町の闇の中を歩く影がいた。市場や商店街では夜になってもまだまだ活気があふれている。そういったところから少し離れた薄暗い裏通りの、屋根の上を隊列を組みながら移動している。数は十程度。目の前に壁があってもお構いなし、何もかも無視してまっすぐ進む。まるで幽霊のようにすり抜けて進んでいる。そいつらの目的はある男、そこそこ名の通った商人だった。影は街を走り回り、男を見つけると上から飛び降りて、男の周りに円を描くように囲い込む。


「な、なんだ君たちは!私は忙しいんだ、そこをどきたまえ!」


 影に囲まれた商人は動揺し、どけと命令する。影は微塵も言葉を発さずじりじりと距離を縮めていく。ある程度近づいたところで、商人は影に顔が無いことと、手が刃の様に鋭くとがっていることに気付き、自分は殺されるのだと分かり命乞いをする。普段から他人を見下す男の命乞いは、誰がどう見てもただの衛兵逃れに過ぎず、暗殺者に対してする対応ではなかった。

「ひぃっ…も、目的はなんだ!金かっ女かっ!ああそうだ、荷車にいいものがあるから通してくれないか。頼む…やめてくれぇ!うわああああああっ――」


 男の命乞いもむなしく十方向から切り刻まれ、男の体は無残に崩れ落ちた。影達は、男の荷車から武器防具と金品を抜き取り、5つの影が持ってきた麻袋にすべてを入れると、残りの影は姿が霞んで消えて(、、、、、、)いった。残った5つの影はそのまま、帝国のトレードマークである、大陸一の大きさと美しさを兼ね備えた時計台へ向かって、再度屋根伝いに走り去っていった。


 影が立ち去った数分後、しばらくして悲鳴を聞きつけた付近の住人がこの惨状を発見する。その後も数日間連続で衛兵が数名消えたり、その後遺体が発見されたりして、夜間外出禁止令が帝国全体に発令された。この事件は、二人(エドとリズ)に深く関わっていく事になるのだが、この時の二人には知る由もなかった。


 どうも、狼兎と申します。今作は書き直しとなっておりましたがいかがでしたでしょうか?

前は自分が書いててあの設定どんなだったっけ?と思ってしまうぐらいこんがらがってしまったので、いっその事、今の考えで一気に書き直してしまおうという私の安易な考えです…。


 これからは自分の中でも整理しつつ、読者の皆様にもわかりやすく書いていこうと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。 なお、今までよりも分を読み直すなど考えてから投稿しようと思っておりますので、投稿期間が開いてしまうことが多いと思いますが、気長に待っていただけると嬉しいです。


 今作は読者の皆様からたくさんの意見をいただきたいと思っておりますので、文章のミスであったりとか、分かりにくい表現だとか、作品に対しての良くも悪くも意見をくださると大変勉強になりますので、よろしくお願いします。

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