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魔王が紡いだ御伽噺(フェアリーテイル) ~tutelary編~  作者: シオン
~tutelary編~ 第四章「過去と運命」
28/42

~The legendary hero~

「……なあ海里華、今の俺気持ち悪い?」


「ええ、すっごくね。理由は分かるけどにやけすぎ」


「楽しみで仕方ないんだよね。私も分かるよ」


「今の私達ならぁ、互角以上の戦いが出来るはずですぅ」


「モノクロはまだまだ本気じゃなかった……次は越える」


「兄貴はまだまだ遠い存在だけど……必ずブッ飛ばす」


 〈tutelary〉との決戦はもう間近に迫っている。

 十日後には梓乃がレーティングを施し、入れ替わりに海里華が|完成〈・・〉する。

 それまでの間はこれまでと同じ特訓の繰り返しだ。

 幸いドラゴンエンパイアには過酷すぎる自然の猛威が渦巻き、六芒星のドラゴンがうじょうじょといる。

 特訓相手には困らないし、体を鍛えるにも申し分のない環境だ。

 黒音はヴァンキーシュの支配する谷底へ、無茶苦茶な重力と桁外れの力を持ったドラゴンと戦う日々に明け暮れる。

 海里華はレーティングが体に馴染むまでの時間を、水属性のドラゴンが集う隔離された湖で過ごす。

 梓乃は雷属性のドラゴンが凌ぎを削る鉱山の上空へ、律子から学んだ剣術を完成させる為に。

 璃斗は地属性のドラゴンが集う鉱山の奥地へ、ただひたすら足場の悪い場所を駆け回って身体能力を伸ばす。

 遥香はシルヴィアの聖力が回復し切るまでの間、先端が雲を突き抜けるほど長く尖った岩山が無数に立ち並ぶ|雲上の山脈〈エリュシオン〉と呼ばれる場所で、ひたすらアダマスを振り回す。

 焔は火山の梺にいる人の姿をしたドラゴンと自給自足のサバイバルをしながら、特訓の相手をしてもらっている。

 それぞれが己のスタイルでドラゴンエンパイアでの日々を過ごしている中、シルヴィアはある人からの連絡を受けていた。

 久しぶりだがとても聞き慣れた声だ。だがまさか、彼女から連絡が来るとは思わなかった。


「……どうしたの? ……うん、こっちは順調。リーダーから話を聞いたの? そっか。で、わさわざ連絡してきた理由は?」


 シルヴィアの左耳に展開された小型の通話用の魔方陣から、微かに水の音が聞こえる。

 何かと聞くまでもない、どうせ風呂の中から魔方陣を繋いできているのだ。


「……へッ……!? ちょ、ちょっと待って、それは本当? ……確かに、そんなことで嘘をついても仕方ないけど……信じられない……で、調子はどうなの? ……そう、ならいいけど……」


 まさか自分がドラゴンエンパイアに行っている間にそんなことが起こっていたなど、黒音達のことで頭が一杯になっていた為に人間界で起きていたことの情報はほとんど遮断されていた。

 だがシルヴィアが休む暇もなく、さらに彼女から驚愕の事実が告げられる。


「つまり……生きてるってこと……? 二人とも(・・・・)……まさかあの人が……へ、リュッカが? そうなんだ……分かった、じゃあもう少し日本ココにいることにする。貴女も会いに来てくれるのよね? そう、よかった」


 伝えることをすべて伝えて満足したのか、相手は勝手に通話を遮断した。

 萎むように消えた魔方陣の音とともに、シルヴィアは芝生の上へ仰向けに転がった。

 今以上にワクワクしている時など、あの時以来。

 六つのチームが一つになり、チーム〈heretic〉を結成したあの時以来だ。


「楽しみだな……私もまだまだ引退出来ないみたい……」


 覇権を握るのは果たしてどのチームなのか、シルヴィアでもいよいよ予想が出来なくなった。

 魔王を護る選りすぐりの精鋭〈tutelary〉か、無法者と恐れられる〈soul brothers〉か、未だに謎に包まれた存在〈despair phoenix〉なのか。

 覇権にもっとも近い女帝〈strongestr〉か、四大勢力を脅かす新星〈avenger〉か、頂に君臨せし生ける伝説〈heretic〉なのか。

 はたまた、これらのチームを覆す新たなチームなのか。

 契約者の頂点へ君臨する覇者は、だがやはり〈heretic〉だ。

 次の世代に譲ろうと思っていたが、契約者の本能はそんな建前で押さえられるほどのものではない。

 大人げないかもしれない、でも何年経とうが負けるのは嫌だ。

 シルヴィアは高鳴る胸を抑えきれず、ドゥルガーと一体化して草原を駆け回った。

 いつか自分達の前に辿り着くであろう、選ばれし六人の顔を思い浮かべながら。

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