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金魚すくいの金魚

作者: 白山 銀四郎

縁日に金魚すくいがある。近頃はでないことが多い。それは金魚にとってよいことなのか悪いことなのか。はてさてどうなのでしょうか。


「また客が来たぞ」

「来た来た」

「疲れるからいやだね」

「逃げきってやるぜ」

人間がぽいを片手に見つめる水中ではこのような言葉が流れている。大きい金魚はよく狙われる。しかし体力もあるので人間との競争を楽しんでいる。小さい金魚は追いかけ回され疲れるのが嫌で仕方がないのである。

「ねぇ捕まらないでね」

「俺がそんなへまするわけないだろ」

端の方で2匹の金魚が寄り添うようにして泳いでいた。1匹は黒の出目金、もう1匹は尾が艶やかな赤の美しい金魚である。出目金は案外人気でよく人間に狙われる。

「ほらきたよ」

「俺はあっちに逃げる」

出目金は赤の金魚を巻き込まないために離れていった。赤の金魚は追いかけようとしたが足手まといになるし出目金を信じて待つことにした。出目金はひたすら捕まらないように泳ぎ続けた。

「捕まるわけにはいかない

あいつが悲しむ」

しかし出目金の体力も切れてきた。少し気を抜いた瞬間何かが体を持ち上げた。

「俺は捕まるわけにはいかないんだ!

あいつのもとに帰るんだ!」

暴れてぽいが破れたが出目金の体は狭い碗にはいった。

「まって!

私も!私も!

つれていって!」

赤の金魚はすぐに端から泳ぎでて目立つように動いた。しかし人間はぽいが破れ出目金を手に入れて満足したように消えた。

出目金と赤の金魚は離ればなれになった。赤の金魚はいつも出目金といた端で悲しんだ。流れることのない涙が水につけるようであった。

そして次の日赤の金魚は抵抗もせずに捕まった。出目金がいないのに逃げる必要はなかったのである。

赤の金魚は揺れるビニールの袋の中で何をするでもなくただただ漂い泳いだ。


「お前!」

「あっ!」

赤の金魚は人間の家の金魚鉢な中に入れられると慌てたようにすでにいた金魚に泳ぎ寄った。


そして赤の金魚は人間の家の金魚鉢の中で幸せに暮らした。

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