4, 先生と熱血気味な先輩
いきなり目標と違う日になって、すみませんでした。
手当てが終わると、これまた雨坂の腕を引っ張って教室に連れてった。
雨坂は諦めたのか、溜め息は付いたが、抵抗はしなかった。というか、面倒くさいのか?
教室には、だいだいの生徒が揃っていて、先生も居たため、けっこう注目されてしまった。実にいたたまれなかった。
そう言えば、担任はさっきの担任(仮)の人だった。いや、もう(仮)は要らないな。
もう、部活動紹介のに行くのか、皆こっちを見ながらも行く準備をしていた。かのいう雨坂もちゃっちゃっと準備して、さっさと行こうとしてるので私も急いで準備して、雨坂のところに行こうとしたら、誰かに首根っこを掴まれた。
「ぐわっ!!」
「あ、すまん」
いきなりやられて、変な声出してしまったではないか!
後ろを振り向くと、担任かっこか.....担任がいた。えーーと、名前なんだっけ?
「........先生、何ですか?」
「今お前、俺の名前忘れただろ」
「ソソソソソ、ソンナコトハ.....」
「目、泳いでるし、片言だぞ。...はあ。先崎 風馬だ。今度はちゃんと覚えろよ。あと、先崎が名字な人がけっこう居るから、風馬先生な」
「そうですか。風先生ですか」
「風船みたいに言うな」
なんだろうこの人、からかいがいがあるな!!
「で、用件は何ですか、風先生。雨坂に置いてかれちゃうんですけど」
「だから....。まあ、いい。用件はその雨坂についてだ。他の先生の話だと、あいつはこの学校の中等部で結構有名な不良らしくて、行事はもちろんのこと、教室に来るのも1年に数回らしい。どうやって、連れて来たんだ?」
「.....それはですね、彼が屋上でホモな不良に襲われそうになっていたところを、偶然居合わせた私が助けて、友人になったからでふほっ」
今度は誰かに後ろから口をぐわっと塞がれた。
「ふがふがー!!」
「うるせー黙れ。行くぞ」
怒りに震える声が上から降ってきた。上を見ると、凄まじい形相の雨坂がいた。
そして私は、口を塞がれたまま、引きずられるように連れてかれた。
「ふぁふぁー!!」
「くすぐったいから、喋るな」
「ふぁ、ははへはひひはん」
「........」
遠く離れた先生の顔は、呆気にとられていた。
そりゃそうだ。いきなり当事者が現れて、怒りの形相でいたいけな少女を連れていくんですもの!
「ふぁはははほへひへ先生に変な目で見られたじゃないか!!」
やっと、手を離してくれたみたいだ。
「...あれは勝手に行ったお前がわりぃ」
「口止めされてないしぃー」
「........」
今度は無言で殴られた。
いってー。こいつはまた、いたいけな少女になんてことを!!
++++++++++
体育館、実に広いな。第一体育館だからか?
えー、確かうちの学校は第五まであるんだったな。すげー、さすが私立だぜ。
そんな私は、今クラスごとに並んでいる中にいるが、この並び順、背の順らしい。そして私も雨坂も背が高いほうで、そして偶然隣になったのだ。ふぉーーーーー!!!
「前向け」
私が隣の彼を見ていたら、頭掴まれて無理やり前を向かせられた。
痛い。
まったく、何なんだ君は、さっきから。
『プログラム8番、演劇部さんどうぞ』
おーっと、もう8番ですか。何々-。演劇部、演劇部ーーっと。
私はパラッと部活動紹介のしおりをめくった。
確か此処の演劇部ってすごいんだっけ? 賞とかいっぱい獲ってるっぽいし。
ん? 期待のエースのところの名前どっかで見た気が....。
「----そして演劇部の期待のエース、炎崎 梨火君」
「「きゃぁぁぁぁぁ!!!」」
突然、女子の黄色い声が上がった。
あ、やっぱり。
実は私は、この人と知り合いなのだ。炎崎先輩は、私が通っていた公立の中学の一つ上の先輩である。先輩、ここに通ってたのか。
この先輩、確かにいい人だし、演技上手いし、声はいいし、何より声がいいけど。
「俺等と青春したい奴は、入部してこいよーー!!」
性格ががとてつもなく、熱血なんだよなー。体育系だし。
私が中2の時、文化祭で準主役な役やって、先輩に目付けられてもの凄く勧誘されたっけ。「君ならできるーー!!」って追いかけ回されたんだよね。
今となっては良い思い出です。
あ、ショート劇やるんだーー。先輩は-...王子役か! さすがエース!
相変わらず、上手いなー。
つーか、色んな芸能事務所からスカウトも来てるらしいし、人気者は大変だよな。
私もスカウトしちゃおうかな。なんちて。
+++++++++
「ふはーー、すげーいっぱい部活あったなーー」
さすが私立と言ったところか。二人で同好会、5人から部活だもんなー。
こりゃー、取材のしがいもあるかもな。
そんなことを考えながら、雨坂と教室へのんびり帰る。
「雨坂ー、放課後の部活見学さ、演劇部最初行ってもいいかー?」
「......何で」
「実は知り合いが居てさ。ちょっと挨拶に行こうかと」
「.....別にいいけど」
あれ? 雨坂が急に素直? っというか、上の空?
「どうした、雨坂?」
「いや、...知り合いって誰だ」
話ずらすの女子並みに下手だな、こいつ。って私も女子か。
「炎崎 梨火先輩。中学が一緒でけっこー仲良かったんだー」
ズコッ
雨坂が突然派手にずっこけた。
「お? お?」
「.......いってー」
どうしたらいいかよく分かんなくて、とりあえず手を差し伸べたら、普通にスルーして、普通に立ち上がった。
ひどい。
すると今度は、私のことをじっと見てきた。何故かキラキラした目で。
「お前、実は凄い奴なのか」
「は?」