僕は死なない
僕は死なない。
死にたくない。
生きているから死にたくない。
いつだってそう思ってきた。
死ぬのだけは真っ平御免だ。
やり残しがある。
まだ最終回を書いてない。
まだプロになれてない。
目標を達成できないまま死んでたまるか。
生きてやる。
だが僕は死ぬかもしれない。
死にたいと思えば思うほど自殺願望が高くなるような気がする。
いま思っている「死にたくない」が、未来の僕を追い詰めてしまうかもしれない。
死んだら負けだ。死ぬのは逃げだ。
そう思えばこそ、僕は戦いに疲れた時、強く死にたいと思うかもしれない。
死にたくない。
死は怖い。絶対的に怖い。
だから死にたくない。
だがもしも死が怖くないものだと知ったら、どうなるのだろう。
やはり死にたがるのだろうか。
そう思うかもしれない自分こそが最も怖い。
頼むから僕よ、死なないでくれ。
天国なんてない。
地獄もない。
神様も死神も閻魔大王もいない。
天使も悪魔もいない。
死んだら無だ。
土に帰るのだ。
その時、僕の意思はどこに行くのだろう。
無くなるのだろう。
小説のことを考える僕は、消えてしまうだろう。
疲れと痛み、それさえ無ければ人は生きていける。死にたいなんて思わない。
今の僕はその両方に苛まれている。
誰かこれを消してくれよ。
辛くてしょうがねえよ。
体が邪魔なんだよ。
何が何でも生きてやる。
人殺ししようが迷惑をかけようが生きてやる。
そんな気概は、今となっては風前の灯となった。
今はただ、皆に謝りたい気分だ。
せめて最終回だけは書きたい。
それが生きる目的だ。光だ。
しかしもしも書いてしまうと、目的が無くなるわけだから、死んでもいいと思うかもしれない。
悔いは残しておくべきか。その方が生きたいと思えるか。
死にたくないのは、最終回を書きたいからかな。
難儀だ。
この下らない詩集は、どんな風になるのだろうか。
遺書か。それとも未来の僕へ向けた参考書か。
ここまで強く死にたくないなんて滅多に思わない。もしも生き延びたら、この詩集は大きな財産になる。
そんな強欲な自分がいることを、今だけは誇るべきだろう。
僕は独りだ。
それが問題だ。
独りで生きていたら、独りで死ねてしまう。
誰かと一緒に生きるのなら、その誰かに止めてもらえるし、その誰かのために生きようと思える。
独りとは強いものじゃなかったのか。本当は頗る弱いんじゃないか。
僕はお姉ちゃんと一緒に生きたいな。そう思わないと、きっと死ぬだろうな。
人に迷惑をかけたくないのと死にたくない気持ち、その二つが強烈な二律背反だ。
お姉ちゃんに好きだと言いたい。
足が痺れるたびに恐怖する。もしかしたらこのまま歩けなくなるんじゃないかと。
歩けなくなったら、人はすぐに朽ち果てる。前に進めないのは苦痛だ。
運動が出来なくなるとすぐに不健康になる。不健康になったら生きる気力がどんどん失われる。
なんでもっと運動してこなかったんだよ。
後悔ばかりだ。
本をもっと読みたい。
小説も漫画も面倒だけど、今となっては、どんなつまらないものでも読み漁りたい。
笑うためか。孤独を紛らわすためか。もったいないからか。
下らねえや。
この詩集を書くことで元気を取り戻したい。
びっくりするほど詩が思い浮かぶ。
これが最期の輝きでなければいいのだが。
僕は最終回を書きたい。
最終回以外の目的といえば、プロになることだ。
けれどもプロになるのは現実味がなくて、諦めてしまいそうだ。
もっと手短な目的がいい。
たとえばお姉ちゃんと愛しあうとか。
お姉ちゃん。
声が聞きたいよ。
この不安感を取っ払ってくれよ。
大好きなんだ。
いい子にするから、嫌わないで。
僕の生きる目的となってくれ。
僕は、自分のためだけじゃなく、お姉ちゃんのためにも生きていきたい。
偽善的感情だと分かった上で、お姉ちゃんのために生きていきたい。
胸が張り裂けそうだ。
お姉ちゃんに会えたらどれだけ心地よくなれるだろうか。
お姉ちゃん。好き。
愛してくれ。
僕も愛したい。
大丈夫だ。
ここまで書いたら、気分がスッキリしてきた。
僕は死なない。
死ぬもんか。今となっては笑いながら言える。
人がそう簡単に死ぬかよ。
生きていくよ。
人生、大好きだ。
明日も明後日も光がある。
愛もある。
独りは嫌だから、これからは甘えん坊になろう。
ちゃんとした人間になろう。
きっちり治療しよう。
大したことじゃない。心因的な理由が大きいだけ。それはここまで書くことで軽くなった。
僕は生きていける。
これからも生きていこう。
愛と光。
そして信頼
お姉ちゃん。
生きる。