第七話「THE 鬼ゴッコ」
最新話です。
どうぞ。
ズドオォン!! ドゴオォン!!ドガアァン!!
「きゃああああああ!?」
「ワーハハハハハハハハハ!!」
「ひゃー♪」
只今絶賛鬼ゴッコ中である。
夜宵達は愉快にドラゴンとの鬼ゴッコを繰り広げていた。一人夜宵に抱えられドラゴンに追いかけられ血相を変えている少女が居る。所謂鬼ゴッコの被害者だ。
「ちょっとおおおおお!? 正気なの!? このままじゃ食い殺されるうぅぅぅぅ!!」
「実際になってみるか?」
「嫌よ!?」
冗談交じりの会話をしつつ走る走る。その後方ではドラゴンが森を破壊しながら迫って来ていた。ご立腹の様である。
「ワハハハ!! 最高だなこりゃ! 後二時間ぐらい続けようぜ!」
「さんせーい!」
「私も賛成……ってアホか!! 誰が賛成なんかするか!!」
「小雪がいる」
「いやそれはあんた達が異常だからじゃん!? 高ランク冒険者でも賛成しないっちゅーの!?」
「じゃあお前は低ランクって事だな」
「ストレートに痛いとこを突くねあんた!?」
「じゃあ次は変化球を織り交ぜてやれば良いのか」
「そうじゃねーよ!?」
夜宵のマイペースに最早キャラ崩壊してしまい、素に戻った少女。さりげなくツッコミポジションとなっていた。
「どうするのよ! 益々凶暴化してるじゃない!?」
「はっはっはっ。鬼ゴッコだけに鬼になったと言う訳か」
「上手くないしそれはあんたが原因でしょうが!?」
「それもそうだ」
「あっさり認めやがった!?」
中々夜宵達に追い付けない事に更に凶暴化したドラゴンだが、夜宵達は何処まで行ってもマイペース。寧ろコントと化して来た。
すると目の前には先程より木が生い茂っており、木々を潜り抜ける隙間があまり無くなっていた。しかし夜宵達は止まる事なく進んで行く。
「ちょっと! どうするのよ!? 木にぶつかるわよ!?」
「違うな。ぶつかるんじゃなくぶつけるんだよ」
「へ?」
「道が無いなら作れってなぁ!!」
夜宵はそう言うと走りながら近くに生えている手頃な木を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた木は音速の五倍の速度を誇りながら目の前の木々を次々と薙ぎ倒して行き、道を作っていた。これには少女も驚かされざるを得なかった。
「えええっ!? あんた本当に人間!?」
「ああ! とんでもねぇ人間様だぜ!!」
「そんな事が……高ランク冒険者でもこんなの見た事無い!」
「そりゃあ俺だからだ!!」
「何て理屈!?」
無理矢理切り開いた道を高速で進んで行く夜宵達。その後を鬼と化したドラゴンが口から火を吹きながら走って来る。余程頭に来ているらしい。
まあ無理もない。『特級魔物』であるドラゴンが見ず知らずの人間に見向きもされず頬を叩かれ吹き飛ばされたのだ。一種のプライドが有るドラゴンからしたら侮辱されたと同等なのだ。
暫くして突き進んで行くとその先は奈落の底となっており先に進む事が出来ない。
とは言ってもそれは普通ならばの話だが。
「おっと、次は奈落の底かよ」
「幾ら何でも空は飛べる筈が」
「よし飛ぶぞ」
「うん♪」
「ええっ!? それこそ正気なの!? てゆーか小雪ちゃんも笑顔で賛成しちゃうのってひゃあああああああああああ!?」
先程から喚く少女が言い終えない内に夜宵と小雪は跳躍し音速の速度で一気に空へと飛び上がる。すると喚いていた少女も空からの絶景に言葉を失ってしまった。
「何これ……凄い……」
「ハハッ! 鳥になった気分にでもなっときな」
夜宵は空中を蹴りながら前へ進み、小雪は飛行魔法で空を飛んで行く。そして追って来たドラゴンは凶暴化していた為にそのまま奈落の底に落ちて行った。
「ふぅ……どうやら落ちていったみたい」
「そうか? 俺にはそうは見えないがな」
「うんうん」
「あんたは兎も角、小雪ちゃんまで何言ってるのよ。現にあのドラゴンは奈落の底に……」
少女は奈落の底の方向に指を差そうとした時、言葉を失った。その奈落の底から火を吹いた様な火柱が上がっていたのだ。
そしてその奈落の底から翼をはためかせ上昇するドラゴンの姿が。
「生き、てる……」
「何だ? アイツが生きてるのがそんなに可笑しいのか?」
「違うわ、ドラゴンの翼は有るだけの飾り物で基本的には飛べないのよ。でも流石は『特級魔物』、空を飛べる事も出来るなんて……!」
「そうか? ドラゴンは皆飛ぶモンじゃないのか? と言う事は空を飛べるのはアイツを含めた上級の魔物だけって事か」
「そうみたい。とは言っても実際にドラゴンが空を飛んでいる姿は始めて見たんだけど」
少女にとってこれは予想外の事態らしく、焦りを隠せなかった彼女とは裏腹に夜宵は森が山岳地帯を抜け平野を見つけた。
「おお、森を抜けたら平野か。しかもその先に王国が有るじゃねぇか」
「ほんとだ! おっきーい!」
「良かった……兎に角彼処まで逃げ切ればドラゴンも追って来れないと思うからそこまで……って何してるのよ?」
夜宵は急停止し平野に向かって一定の力を脚に込める。少女には夜宵が何をしようとしてるのか分からなかった。
「よし、鬼ゴッコは終了だ」
夜宵がそう言った瞬間、脚に込めていた一定の力を一気に解き放ち、音速の五倍の速度で地上へと急接近した。
「ええぇえぇえぇぇ!? またあああああぁぁぁぁぁ!?」
少女の叫びはドップラー効果で一瞬にして遠くなって行き、ドラゴンと少女の間に着地した時の様に地割れと土煙を一気に上げた。
「まあここら辺で良いか。ってオイ、何グッタリしてるんだ?」
「あ、んたの……せい、で、しょう、が……」
「おねえちゃんだいじょうぶ?」
夜宵の規格外のポテンシャルに散々振り回された彼女はちょっと魂が抜けかけていた。小雪は瞬間移動でやって来て取り敢えず彼女を心配していた。
「じゃあソイツを頼むぜ小雪」
「うん♪」
「頼むってあんたまさか……」
少女は嫌な予感がしていた。この少年は真っ正面からドラゴンとぶつかるつもりだ。いくらこの少年が規格外の力を持っていたとしてもドラゴンに勝てるかどうか分からない。彼女は夜宵を止めようとしたが夜宵は一瞬で姿を消した。
夜宵は先程までとは違いマッハ600という凄まじい速度でドラゴンに肉薄する。一瞬にて肉薄されたドラゴンは驚愕し動きを止めた。
そして夜宵は動きを止まっているドラゴンの角を掴み、真下に放り投げた。
「オラアアアアアアアアアッッ!!!」
「GAAAAAaaaaaa!!?」
圧倒的な力で真下に無理矢理投げられたドラゴンはマッハ600の超速度で地面に叩きつけられる。その衝撃はその一帯の土地を大きく揺り動かし周りに半径500mのクレーターを作り上げていた。
「GA……Aa、aa……」
生涯浴びせられた事の無かった一撃を受けたドラゴンは叩きつけられた衝撃だけで既に満身創痍となっていた。そしてドラゴンの近くに夜宵が降り立ち、獰猛な笑みを浮かべて見下ろした。
「オイオイ、この程度でくたばるのかよ。案外『特級魔物』も脆いんだな。ワハハ」
夜宵がそう言うとその力に完全に屈服したドラゴンは先程までの凶暴さは何処へやら、満身創痍故に致命傷も追っておりそのままゆっくりと目を瞑り息を引き取った。
「ま、いいか。俺が強いのは元々だからな。くたばるのは無理も無ぇか」
そう呟き、踵を返そうとしたその時だった。
十m以上もあるドラゴンの身体が突如光に包まれたのだ。これには夜宵も振り向かざるを得なかった。
「……何だ?」
ドラゴンの全身が光に包まれて数十秒も経たない内にその光は四散する。そこで夜宵が光から現れたモノを見た。
「……これは……精霊なのか?」
ーーーそこに現れたのは焰を纏った小さな精霊であった。
どうやらこの小説家になろうから出て来た大作『魔法科高校の劣等生』のアニメ化が決定した様です。
僕個人としては嬉しいですね。あの兄妹の動き回る姿を見れる時が楽しみです。