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異世界に超越者が招かれました  作者: 井戸の岩
第一章『超越者と魔神』
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第五話「その後」

夜宵が魔神を助け出した後の話です。

どうぞ。

『な、何!? 勝手に魔神を釈放したじゃとぉ!?』

「ああ、その通りだ」


 電話越しでニヤリと笑う閻魔王はちら、と横を目だけで見る。そこには誰かが通った跡の有る白い光を放った扉があった。

 魔神を助け出した夜宵というと地獄に帰って来た後、閻魔王と少し話をしただけでその後は地上界へ向かって行った。勿論、その光の扉は閻魔王が開けたものだ。

 その際に魔神である少女の様子を見たが、完全に夜宵に懐いている様子で夜宵の腕をがっちりホールドしていた。あの短時間で此処まで魔神を手懐けさせた夜宵に驚愕したが、夜宵は純粋無垢な奴だったからやり易かっただけだと言っていた。


『閻魔王貴様! どういうつもりじゃ!』

「どうもこうも。貴様ら神々がさっさと話を着けないからこうなっただけだ」


 夜宵が魔神を助け出す前、閻魔王に耳打ちをしていた時だ。夜宵なこんな単純かつ大胆な提案を出した。



『だったらこっち側が勝手に釈放させれば良いじゃない♪』



 こんな提案だった。これには最初は戸惑ったものの、夜宵の話を聞くと納得がいった。



 一つはこれをすれば強制的に神々の話し合いを終了させる事が出来る。


 一つは魔神よりも夜宵の方が強いと言う事。


 一つは神々の困り果てた顔を拝められる事(笑)



 一つ目は閻魔王の山ほど有る書類がこれ以上来ないと言う理由だ。当然、閻魔王も快諾した。

 二つ目は夜宵が魔神の保護者になる事で後顧の憂いを絶つ事が出来る。つまり神界を再び襲う様な事は無くなる。

 三つ目はまあ遊びだ(笑)


 二つ目の事だが、夜宵は世界を一撃で破壊出来る荒唐無稽の力を持っている。だがそれでも全体の二割程度しか発揮していない。もし三割の力で暴れると世界の二つや三つは一瞬で滅ぶだろう。

 対して魔神も圧倒的な力を持ってはいるが夜宵程では無い。精々夜宵を除いて世界最強なぐらいだ。

 閻魔王でもはっきり分かる力の差故に夜宵が魔神の抑止力とも言って良いだろう。

 後始末の方だが仕事に対する処理能力が非常に高い閻魔王なら朝飯前である。毎日の様に送られて来る山ほど有る書類すらも一刻も経てば全て処理し終える程だ。


『貴様! 魔神がどれ程恐ろしい存在なのか身を持って知っておろう!』

「そうかな? 今の魔神は一人の人間に懐いている可憐な少女にしか見えないがな」

『……待て、人間、じゃと?』

「ああ、その人間が魔神の保護者、つまり抑止力になっている」

『……冗談のつもりか?』

「私が仕事以外で冗談を口にした事があるか?」

『……む、うぅ』


 はっきりとした口調で話す閻魔王に神は口を噤む。そして困惑する。


 ーーーまさか魔神を扱いきれる人間が存在するのか?


 冗談にしては笑えない話だ。人間は非力な存在、故に神々が人間に対し恩恵を平等に与えるお陰でこの世界は魔法が放てるのだ。

 だがその魔神を扱いきれる人間は神々の常識を大きく遺脱している事になる。

つまり、神々の恩恵を何一つ受け取っていない(・・・・・・・・)側の人間と言う事になるのだ。


『(……まさか、自力で魂を神格化させ、それを更に昇華させたと言うのか?)』


 有り得ない。それが存在すれば神の奇跡すら覆る奇跡だ。そしてこう思った。



 ーーーその人間は魔神よりも遥かに危険だと。



 だが夜宵はそれを見越していたかの様に閻魔王にある事を言っていた。


「そうだ、その彼から伝言が有る」

『その人間は何と言っていたのじゃ?』

  「『神サマには悪いが魔神は貰って行くぜ。まあ安心しろ、別に神サマに恨みが有る訳でもねぇし魔神の方も俺にすっかり懐いている。一切そっちには危害は加えないが俺達を監視するつもりなら魔神と一緒にあんた達の世界を即座に破壊してやるから覚悟しとけよ』……との事だ。私からも言うが、監視は絶対に止めるのだな」

『……う、うむ、そうだな』


 完全なる脅し。神は知らないだろうが夜宵はやると言ったら必ずやる人間だ。だがそれは一切手を出さなければ良い話だ。神は思わずそれを呑んだのだった。


「まあ魔神を解放したのは此方として良い話だ」

『まさか冥界軍の事か?』

「そうだ。最近冥界が何やら怪しい動きを取っていてな。恐らく魔神奪還だろう」

『うむ、それなら儂も納得がいく。魔神を解放したとの旨を伝えれば冥界軍も此方に侵攻する事は無くなる筈。流石にあの惨劇は二度と見たくないものよ』

「なら、私達はその人間に感謝せねばなるまい」

『同感じゃ』


 神はその人間に恐れを抱いたと同時に感謝もしていた。何せ神界と冥界の緊張状態を崩す切欠になってくれたのだから。

 しかし神は不安が残っていた。それは冥界軍の目が神界では無くその人間に向けられる事だ。


『だがその人間、冥界の者共に目を付けられる可能性は高いぞ』

「なぁに、あの少年なら問題無い。冥界軍が全戦力を持って掛かったとしても勝てないだろう」

『それ程凄まじいのかその人間は……』

「それに神界側から脅しを掛ければ良い。『その人間は魔神を遥かに凌いでいる存在、手を出せば貴殿達も唯では済まない』とな」

『うむ、そうしておこう。その人間、敵に回れば末恐ろしいが味方ならばこれ以上に頼もしい存在は無いじゃろう』

「良きに計らってくれ。それでは」


 そうして閻魔王は通信を切る。ふう、と一息着くと光の扉の有る方向に顔を向ける。既に光の扉は消えており、闇だけが残っていた。




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