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異世界に超越者が招かれました  作者: 井戸の岩
第二章 「キリカとギルド」
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第九話 「入国とキリカの事情」

お待たせしました。待ってくれていた読者様には申し訳無かったと思います。この話がかなりの難産という事もあったのですが、色々と事情がありまして……


では、どうぞ

 ーーーインディストレア王国


 そこは様々な産業が発展している王国であり、過去の歴史からその高い生産力を持って繁栄して来た。現在では数ある大国の中でも一、二を争う経済大国である。


 そしてこの国は中立を掲げており様々な国との貿易がなされ、他国との交流も深い。


 だが、中立国と言ってもこの国の軍事力は強大である。軍国主義国家すらも迂闊に手を出せば逆に滅ぼされてしまうぐらいなのだが、それには訳が有る。


 この国には冒険者が所属している『ギルド』の支部が幾つか存在しているからだ。


 冒険者は王国の兵よりも強力な者達が多数存在し、実力によっては様々で強者もいれば弱者もいるが、その存在は貴重だ。


 何故なら冒険者達には国から直接依頼が来る事も有る。その場合、報酬は多額なものになる。しかし、国からの依頼はそう出回っている訳では無く、第一難易度が高い依頼ばかりだ。下手をすれば命を落としかねない。


 だが、危険かつ凶悪な依頼だからこそ得るものがあるのだ。


 高ランクの冒険者は勿論、一発逆転を狙う冒険者はその多額の報酬を求めて危険な依頼に契約する。そして、それを成功させる事が出来れば冒険者だけで無く、互いの利益にもなるからだ。


 例えば、入手困難な素材が国で不足しているとしよう。そこで国は冒険者達に依頼を出す。


 当然、冒険者達はその依頼を受領する。寧ろ国から出された依頼を誰一人として受領しないのは滅多に無い事だが。


 そして、冒険者達が依頼を成功させ、その入手困難な素材を得る事が出来れば、それの素材を欲しがる国への貿易は更に活発化し経済力を強化する事にも繋がるという訳だ。


 当然ながらその発展した国には他国から同盟を申請する国や連合を組もうとする国、利益を得る為に条約を結ぼうとする国などが現れる。既にインディストレア王国は様々な国と同盟を結んだり連合を組んだりしており、非常に勢力を伸ばしている国だと言える。


 中立国だからこそ自国の技術を提供する代わりに他国の技術を得られ、それが軍事力の強化に繋がり益々発展して行くのだ。

 そしてその他国への橋渡しを担う冒険者の存在は必要不可欠なのである。


 さて、その異世界でも有数の大都市であるインディストレア王国だが現在、謎のクレーターが出来た事件に騒然となっていた。






 *






 さて、そのクレーターを作り上げた張本人である夜宵とその一行は無事にインディストレア国王へ入国する事に成功していた。


「よし、取り敢えずは入国出来たな」

『いやー苦労しましたね〜』

「ホント、どうなるかと思ったわ……」


 夜宵が引き起こした事態は予想以上に国内を騒然とさせていた為、入国は難しくなってしまっていた。しかし、そこはやはりギルドの権力なのだろう。キリカがギルドカードを門番に見せると容易に入国出来たのである。


「まあキリカが冒険者だった事が救いだったな」

「ま、ドラゴンから助けてくれたお礼みたいものだから感謝しなさいよね」

「おねえちゃんぼうけんしゃなの? すごーいっ!」

「ありがとね小雪ちゃん」

「えへへ〜♪」


 キリカが冒険者だと言う事に純粋に興味を示す小雪にキリカは小雪の頭を優しく撫でる。頭を撫でられ、頬を緩ませる姿は正に天使であった。


 対して夜宵は先程潜り抜けた門ーーー正確にはその巨大な外壁を見据えて少々驚愕していた。


「しかしこんなに巨大な外壁が聳えているとはな。30mぐらいは有るんじゃねぇか?」

「そうね、正確には32.6m。この国の文献や学園の教科書には必ず載っている必須事項よ」

「ふーん……」


 どうやら、この外壁は歴史的建造物の様なものらしい。まあ夜宵はどうでも良さそうに聞いていたが。


 その様子を見ていたキリカであったが、特に気にする事も無く夜宵達のこれからの予定を聞いてみた。夜宵達が冒険者では無い事を知ったので、冒険者になるのかどうかと言う意味も含めてだが。


「ねぇ、あんた達はこれからどうするの? ギルドにでも寄るの?」

「ギルドか……確か冒険者になるにはそこで冒険者登録しなきゃならねぇんだったか」

「そうだけど……(冒険者になった方が絶対良いと思うんだけどなぁ)」


 冒険者になる事を期待しているキリカとは裏腹に夜宵は正直、冒険者になるのか迷っていた。この世界で冒険者は一番メジャーな職業だ。だが、いまいち冒険者のメリットとデメリットが分からなかったのだ。そこで冒険者であるキリカに質問する事にした。


「そうだな、冒険者になればメリットは有るのか? 例えば危険指定区域に立ち入り出来るとか。出来ればデメリットも教えて欲しいもんだな」

「うーん、確かにその通りね。ギルドランクを上げればそれは可能よ。他にはさっきの外壁を潜り抜けた時に使ったけど様々な国に入国する為の通行証にもなるわ。デメリットについては命の危険は勿論だけど、依頼に失敗した時に違約金を支払わなければならないと言ったものも存在するわ」

「成る程……」


 質問の内容はメリットとデメリットの有無とメリットとデメリットの内容。有無の方はキリカがメリットとデメリットの内容について説明したので既に解決しているも同然だが。


 問題は内容。とはいえ命の危険は既に承知の上だ。違約金の方は依頼に失敗しなければ良い。他にも色々有るのだがデメリットはそこまで大きく無いと判断した。冒険者という職業でメリットとデメリット、何方が重いのか天秤に掛けた上での判断だった。


「……それで、ギルドに入って冒険者になるの?」

「そうだな、別にならなくても良いな」

「えっ……」

「嘘だよ」

「嘘なのかい!?」


 夜宵はメリットとデメリットの内容を理解した上で冒険者になる事を決めた。そこでキリカを弄るのも忘れない。


「何だ? 俺が冒険者にならないといけない事でも有るのか?」

「い、いや? そういう訳じゃないけど……その、何と言うか……」

「成る程、ツンデレか」

「何でツンデレになるのよ!?」


 夜宵はイフリートを封印していたドラゴンを駆逐した時点から既にキリカの隠している事に気付いている。弄りつつもそろそろだと思い、話を進める。


「ワハハハ! ま、冒険者も面白そうだし、やってみるか」

「ホント!?」

「まあな、旅をするにはそういう通行許可証みたいなモンも必要だろ? それに」

「それに?」


 ここで夜宵はキリカの隠している事をバラす為の核心を突いた。




「お前には何かしらの事情ってモンが有るんじゃねぇか?」

「!!」




 見事に核心を突かれたキリカは驚愕の表情を隠せなかった。


 ーーーバレていた。


「クハッ! その反応を見るからにして有るようだな」

「……っ」


 夜宵のそれに、キリカは答えなかった。いや、答える事が出来なかった。夜宵はその様子を見ながら話を進めて行く。


「沈黙は肯定と見なすぜ。まあ、あのドラゴンを倒した時点である程度気付いていたんだがな。まず、お前は何故あの山岳地帯に居たのか? って事だ」

「………」


 先程から沈黙しているキリカを余所に夜宵はキリカの隠している事に何故気付いたのか、どうやって行き着いたのか、その推測と経緯を語って行く。


「それに行き着く為の考察はお前の場合、大体限られる。何故なら、お前は見た目からして戦闘向きじゃないのは丸分かりだ。そのお前が冒険者になっている時点で、既に何らかの事情を抱えている事が考えられる」


 夜宵はあの森林の奥でキリカと遭遇した時から彼女の性格や体格、身体能力から戦闘能力、そこから何故冒険者だったのかという理由、その経緯、そこから明らかになる何らかの事情を抱えている事まで全て推測した上で知っていたのだ。後は彼女の反応で推測は確実なものになって行く。


「ま、ガキンチョのオマエだから失敗ばかりしていただろうよ。そして、切羽詰まったお前は起死回生を図ろうと一か八かで討伐の依頼を受け、現場に行けば運悪くあのドラゴンが居た。違うか?」

「その通りよ……ってまたガキンチョ言うか!?」


 夜宵の完璧とも言える推測にキリカは肯定する他、何も無かった。そして夜宵の弄りにツッコむ事も忘れない。


「さてどうする? 俺はギルドに入るがお前の事情に加担するつもりは無い」

「ま、待って! お願い!」


 夜宵はそう言いながらそこら辺にある木箱に腰掛ける為に移動する。その動作に一瞬、何処かに消えてしまうと思ってしまったキリカは必死に夜宵を止めようとした。


「ん? 充分待ってるじゃねぇか。なら、包み隠さずに全部言えよ。お前は俺にどうして欲しいんだ?」


 彼女の止めを聞かない夜宵は木箱に腰掛け、キリカを見据えながら言う。






 ーーーそう、夜宵は待っているのだ。どうして欲しいのか、その本心を聞き出す為に。






 キリカはその夜宵の様子に伝えるしか無かった。伝えなければならなかった。


 夜宵を利用しようとした哀れな自分に気付いていた。だが立ち去ろうとせず、自分が抱えている事情をどのように知ったのかその経緯を語り、本心を聞き出す状況にまで持って来てくれた彼の為に伝えなければならなかったのだ。


 キリカは俯き、詰まる声で、泣きそうな声で夜宵に伝えた。


「……私には、大切な家族が居るの……だけど今、私達の家族は危機に瀕してるの……お願い、私はどうなってもいい。だけど家族だけは助けて……! アンタの力が必要なの……っ!」


 必死に伝えた自分の本心。それを聞いた夜宵は腰掛けていた木箱から立ち上がり、キリカに歩み寄る。


 そして彼女の頭に優しく手を乗せた。キリカはその事に驚いた。


「え?」

「ワハハハ、最初からそう言えば良かったじゃねぇか。このツンデレめ」

「私はツンデレじゃないわよ!!」


 シリアスなシーンでもキリカを弄る夜宵。それに抵抗する彼女だが、少し恥ずかしくなりそれを隠す為だったりする。


 それすらも夜宵にはバレバレな訳だが、それを楽しみながら先程彼女の伝えた本心にこう返事した。


「良いぜ。完膚無きまでに救ってやる。精々感謝しろよ? キリカ(・・・)

「ふぇ?」

「ふぇ? じゃねぇよ。完膚無きまでに救ってやるってんだ。お前の家族の為だろ? お前の家族の事情は別に言わなくて良い。ただ、お前一人だけじゃあ無理なのは分かる。なら、その起死回生のチャンスを俺が完璧(パーフェクト)に活かして救ってやるよ」


 その返事にキリカは驚きを通り越して素っ頓狂な声を出してしまう。夜宵はそれを気にせずはっきりとした宣言を出す。キリカは後から込み上げて来た嬉しさに、しどろもどろに声を発する事しか出来なかった。


「……あの、えっと、その……」

「お礼なら俺がチャンスを活かした後にしな。それまではお前の面倒もその家族の面倒も見てやる。どうせ両親は居ないんだろ?」

「……うん」

「だったら尚更だ。俺は昔孤児だった子供達を世話したやった事もあってな、少々子供達に対して情があるんだよ」

「それって……」

「ま、要するにお前の家族を救う義理や義務は無いが、見捨てる道理は無いって事だ」


 キリカの頭を撫でながら言う夜宵の中に少し彼の過去に触れた気がしたが、夜宵自身は別段気にしている様子は無かったので、キリカも特に気にする事は無かった。


「おにいちゃーん!」

『マスター♡』


 そこにいつの間にか道端で遊んでいた小雪とイフリートが駆け寄って来る。どうやら此方も色々と見学し、満足している様だった。


「さて行くか! これからが楽しみになって来やがった!」

「あ……」


 夜宵は冒険者登録をする為、ギルドへと向かう。その際、頭を撫でていた手を放してしまい、キリカは残念そうな表情をする。


「おい、早く道案内をしてくれよ。ギルド何処に有るか知らねぇし」

「なっ何よもう! 人使いが荒いのよアンタは!」


 だが、そこでも雰囲気をぶち壊す夜宵クオリティが発動する。そんな夜宵にキリカは顔を朱に染めながらも文句を言う。それは怒りとか恥ずかしさとか色々混ざっている表情だった。やはり、彼女はツンデレ体質であろう。


 顔が紅いキリカだったが、夜宵達を追いかける前に顔を隠しながらも嬉しそうに呟いた。









「……ありがとう」


ヒロイン候補その一、キリカちゃん


特徴:ツンデレの美少女おぉっ!!


以上です。

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