体育祭とテスト
2011年5月
あっという間にもうすぐ6月だ。
5月は体育祭があったが怪我でもしたら大変だから軽く流して終わった…はずがない。
もちろん全力で体育祭全体をやりきった。
リレーの選手に選ばれたからリレー、綱引き、大縄跳び、他のクラスメイトの応援も力を抜くことはなかった。
それはなんのためか。五十嵐望結にアピールするためだ。
相変わらず俺は望結ちゃんのことを諦めていなかった。
だから無気力に体育祭を過ごすよりも全力を出したほうが望結ちゃんにとって魅力的に映るだろうと思って全力を出したのだ。
男って単純な生き物だと我ながら思う。
望結ちゃんも運動は苦手だが、体育祭の練習からハイテンションになってクラスの盛り上げ役になっていた。
意気投合した俺達は体育祭を一緒に思いっきり楽しんだのであった。
とまぁこんな感じで順調に望結ちゃんとの仲を深めたわけだが、問題は以前のまま山積みだ。
・ 紗那に二股を許してもらうこと。
・望結ちゃんに告白をして二股を許してもらうこと
別にこの2点をクリアすればいいだけの話だが、この2点が死ぬ程難しい。
そんなことを悶々と考えていたらもう前期中間テストの一週間前だ。
俺はこの人生で大学に進学する予定はない。
しかしもしかしたら大怪我でもしてサッカー人生を歩めなくなる可能性や、高卒で名古屋アハトのトップチームに昇格できない可能性がある。
それらを考慮し、保険として勉強を頑張る方針だ。
クラブチームにも試験勉強のための一週間の休みを貰った。
前世ではサッカー馬鹿で成績は下から数えたほうが早い方だったので、前世のアドバンテージは勉強においてはない。
ただ今世では父親と祖父母がオーストラリア人なこともあり、将来海外リーグに挑戦するときのためにも英語力を鍛えている。
父さんは日本語も喋れるが、俺の教育のため家にいる時は基本英語を喋ってる。
母さんも父さんがいる時は英語を喋るので俺もそれに合わせる形だ。
父方の祖父母とは自宅のパソコンのスワイプ通話という通信サービスで一ヶ月に一回連絡する程度だが、会話内容は理解できてるし祖父母にも英語が通じている。
というわけで英語力がそこそこある俺は学校の英語の授業では一目置かれてたりする。
日本の英語の授業では英語をネイティブ風に発音しようとするとクラスメイトに笑われる謎の慣習がある。
しかし今世の俺は顔がそもそも白人とのハーフなのでネイティブ風に英語を発音しても笑われることはない。
寧ろ隣の席の望結ちゃんが「発音かっこいいね」と笑顔で一度褒めてくれた。
今でもあの時を思い出すと「惚れてまうやろー!」と叫びたくなる。
もう惚れてるんだけどね。
「大雅君、大雅君」
「ん?望結ちゃんどうかした?」
望結ちゃんのことを考えていたら現実で本人に喋りかけられていた。
「あのさ、大雅君一週間クラブお休みするって言ってたよね?」
「うん、そうだよ」
「ちょっと耳貸して」
「え?」
望結ちゃんは俺の耳に顔を近づけて、コショコショと耳打ちをする。
やめてくれ。そんな可愛い顔を近づけられたらドキドキするじゃないか。
「私も美術部一週間お休みだからさ、放課後一緒に勉強しない?」
「ど、どこで?」
「市立図書館」
俺達の学校の近く(といっても徒歩30分くらいはある)には市立図書館があってその中に勉強スペースが設けられている。
理由は分からないが望結ちゃんは俺と一緒にそこで勉強がしたいらしい。
「どうかな?」
俺の答えはもちろん…
「いいよ。一緒に勉強しよう」
俺も耳打ちでそう返事をした。
ごめん紗那。俺はこんなビッグチャンス逃せない!
「良かった。一人だとなんか心細いなって思ってたから」
「勉強仲間がいると勉強捗ることあるよね」
そんな勉強したことないから知らんけど。
こうして俺達は休館日を除いて一週間市立図書館に通い詰めた。
嬉しかったのは学校から図書館への行きと、図書館から望結ちゃんの家に送り届ける帰り道、望結ちゃんと沢山話ができたことだ。
あと土日も図書館へ通ったので望結ちゃんの貴重な私服姿を見れた。俺はファッションのことは分からないが普通に可愛かった。
そして前期中間テストの結果は一週間勉強した甲斐もあって俺は220人中36位。
ちなみに紗那は23位、望結ちゃんはなんと3位だった。
望結ちゃんとはお互いに頑張ったねと称え合い、紗那からは「愛しの望結ちゃんと図書館で一週間も勉強したのに私より下の順位なんだ」と嫌味を言われた。
紗那本人には伝えてないのに、望結ちゃんとの関係の進展をなぜか知っている。
俺は噂の恐ろしさを改めて感じることとなった。
ともかく今回のテスト、俺にしては頑張ったほうだ。
この調子でこれからも勉強を頑張ろう。
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