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第九話:運命の管理者

 アイラの推理とヴァルターの裏取りによって、ルークスを毒殺しようとした犯人はセルゲイ伯爵である証拠がすべて揃った。


 ルークスは躊躇することなく、速やかにセルゲイ伯爵を捕縛し、関係者すべてを宮殿から追放した。


 彼の迅速で冷徹な処断は、宮殿内のすべての者に、彼が悪逆な人間であるという噂が真実であることを改めて知らしめた。


 しかし、その裏でルークスは、静かに、そして慎重に、ある決定を下していた。


「アイラ、君には今日から、大公専任の筆記官兼特別侍女の任に就いてもらう」


 ルークスの言葉に、皆、驚きを隠せなかった。


 使用人という身分で、これほどの地位に昇進する者は、前例がなかった。

 しかし、その実態は、彼女だけが秘密裏に大公の魔法書を管理・解読する「予言書」の管理者としての役割だった。


 これにより、アイラは他の使用人たちとは一線を画す役職を与えられ、彼女を軽んじる者は減った。


 彼女の宮殿内での地位は上がり、かつてのいじめから解放された。

 しかし、その肩には、ルークスの命と、予言書の謎を解き明かすという、さらに重い責任がのしかかっていた。


 ルークスは、アイラを特別侍女にすることで、彼女を自分の庇護下に置いたのだ。

 それは、予言書の解読をスムーズに進めるためだけでなく、彼女を狙うであろうさらなる陰謀から、彼女を守るための、彼なりの決意の表れだった。





 公的な場に同行するようになったアイラは、これまで噂で聞いていた「悪役大公」の真実を知ることになる。


 彼の冷徹な表情や厳しい処断が、ただの残虐性ではなく、腐敗した貴族社会と戦い、国を守るための「鎧」であることを理解していく。

 その孤独な戦いを目の当たりにするたび、彼女のルークスへの思いは深まっていった。


 一方、二人が予言書の解読を行う私的な時間では、アイラは彼の身の回りの世話をすることもあった。


 これまで感情を捨て、孤独に生きてきたルークスは、彼女の温かい気遣いを受けるたびに、長い間忘れていた安らぎを取り戻していった。

 彼の心の中に芽生えた感情は、もはや「予言書を解読する道具」としての彼女ではなく、「かけがえのない存在」としての彼女だった。


 二人の間には、主従関係を超えた、深く温かい絆が育まれていった。





「このままでは、大公のいいようにされてしまう」

「あの『予言書』を持つ娘を何とか出来ないものだろうか……」


 穏健派貴族は、ルークスの強大な力に対抗するため、彼の弱点であるアイラを利用することを考えていた。

 アイラが持つ『予言書』の力を知り、それを手に入れようと考えるが、直接彼女に接触することはできなかった。


「――ひとつ、良い案がありますぞ」


 アイラを利用できないのならば、せめて『予言書』だけでも。

 貴族たちは新たな企みを隠密に進めることにした――。

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