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Fantasy of Life  作者: 君影草
7/8

トゥールの草原

南門に到着した時にはすでにウィル、ロウ、ザキ、アリスが揃っていた。

「おっ、きたきた!」

「遅かったな」

「海の方まで行ってた」

囲むように集まってきたメンバーがそのままパーティ申請を飛ばしてきたのでサクサクと承認していきながら話す。

「ソロ?」

「そうだけど?」

「火しか使えないのに良くやるよ」

当然のことを聞いてくるウィルに首を傾けると呆れたように笑いながら返ってきた言葉に訂正を入れる。

「忘れてたけど光も取ってた」

「えっ」

「普通忘れるかぁ?」

アリスが驚きの声をあげ続いてロウも煽るように言ったのに肩をすくめた。

「普段魔法ジョブやらないからすっかりうっかり」

「まぁ草場でも使えるなら良いじゃん!ボス行こ、ボス!」

カラッと笑って一歩草原の方へ出たウィルに続いて集団で歩き出す。

「南のボスって何だっけ?もう初討伐はされてたよな?」

「牛鬼。今日の朝には討伐されてたよ」

「β版より強くなってはいるらしいぞ」

「とはいえ未討伐の評価だし俺たちが挑むのはβ版くらいだと思うが」

ぽんぽんと返ってくる言葉に頷きながらパーティの共有ボックスに解体ナイフと冒険の書を入れる。

「とりあえず前衛がザキとロウでウィルと私は遊撃、アリスが後衛だな」

「はいはーい」

「即席にしてはバランス取れてるな」

「遊撃2人も要らないでしょ」

「サボっていいって?」

「キリキリ働け」

簡単に役割を振るとウィルとロウ、アリスが(じゃ)れ始めたのを無視してウィンドウから新たに取得した雷魔法の説明を読んでいるとスキル一覧にポップが付いていることに気付いた。タップしてみるとスキル名が幾つも並んだウィンドウが展開される。

「なんだこれ」

「どうした?」

思わず声に出すと襲ってきていたバニットを切り捨てたザキが側に寄ってきた。

「スキル欄の横にアイコンがあって押したら知らないスキルが出てきた」

「ああ、未修得スキル欄か。条件を満たしてるスキルはそこに出て、スキルポイントを使って覚えられるぞ」

「ふぅん?普通にポイント使わず覚えてるのもあるけど何の差?」

「確か…ずっとスキルに応じた動きとかしてると自動的に取れるって話だったな。でもさっさとポイント使ってスキル取ってレベル上げた方が効率は良いぞ」

「魔法とかは自動じゃ取れないしな〜」

「ポイント節約したいなら取らなくても良いけどね」

ビッと刃を払って鞘に収めながらの説明にウィルとアリスが補足した。

「何も取ってなかったの?」

「ウン。勝手に増えてるなとは思ってた」

「雑〜」

ケタケタと笑ったウィルが横に並びアイテム欄から花を取り出した。

「はい、あげる」

「俺も取ってきた。ほらよ」

ひらりと揺れる白い花を見てロウも同じ物を取り出してきた。

「アマリーじゃん。良いのか?売れると思うけど」

「お前に取ってきたんだから別に良い」

「ふーん、じゃあ貰うわ。ありがと」

2人から受け取ってボックスに入れるのを見ていたアリスがロウに話し掛ける。

「東森ソロ?」

「まさか。ハカセ、ウィル、ヘレン、ミハイルのフルパ」

「ロウが前衛?」

「ウィルも」

「駆り出された〜。あ、鹿だ」

「ん?」

ひょいと会話に入ってきたウィルが草を食むエステーナを指差したのを見て頷く。

「ああ、アイツら面倒だよな」

「ソロで倒せたんだ」

「まぁ時間掛かったけど」

酷い泥沼戦を思い出して胸中でため息を吐く。

「充分。それじゃあボス戦、行ってみよー!」

ワクワクとした声色を隠さずウィルが砂浜へ足を踏み込んだ瞬間、身体の制御がシステムに取られる。

夜の海と月を背に黒い靄が形取って牛のような角の生えた鬼の顔に蜘蛛のような胴体のモンスターが姿を現した。南のエリアボス『牛鬼』だ。ガチガチと牙を鳴らして此方を視認し前足を大きく広げ威嚇の声をあげる。ビリビリと震えるような咆哮と共に牛鬼の周りの靄が散り身体の制御が戻ってきた。

「こわぁい!」

「顔厳ついな」

はしゃぎながらウィルが駆け出して前衛組が牛鬼の正面を陣取る。

後衛がウィルの反対側へ移動して参戦するのを見つつ左手から雷魔法を投げる。

「リィト!」

「ランズ」

アリスの使った聖魔法と同時に着弾した魔法に牛鬼が大ダメージを受けた。

「なにした?」

「雷使った!」

「聖魔法!」

「光弱点じゃね!?」

「勝ったな。風呂入ってくる」

「オッケー、海はすぐそこだぞ。良かったな」

「初見マップの夜海入水か?」

「おいおい死んだわアイツ」

「良いやつだったよ」

「エーン!」

始まったばかりのボス戦で舐めたことを言うウィルに雑なフリをすると皆がノッてきた。

雷魔法をメインで回しながら合間に炎魔法を投げクールタイムにはナイフを振るう。牛鬼は高ダメージを叩き込んでくるアリスとナーリアにヘイトがいっているようだが動き回るナーリアに狙いが定まらずザキとロウに抑え込まれている。

「ゴリ押し感すごいな」

「いつも通りでしょ」


氷魔法のバインドを撒きながらサポートに走っていたウィルと並走して牛鬼の前側面を通った瞬間、顔を此方に向け口から糸を吐いてきた。咄嗟に急停止して避けたナーリアに意識がいってしまったウィルが絡め取られ地面に倒れ込む。

「うわーっ!?!」

「!?硬ったい!」

悲鳴をあげたウィルを捕らえている糸を斬ろうとナイフを突き立てたが思わぬ強度に腕が痺れそうだった。

「ッ!やばい、抜けられた!」

「ナーリア!」

複数の足でザキとロウを切り抜けた牛鬼が此方へ前足を振りかぶったのを見て糸をどうにかするのを止めナイフを構える。

「ランズ!」

先制で雷魔法を当て振り下ろされる足を流し受けウィルから離す。

入れ替わりでアリスがウィルの方へ駆けていくのを横目に一本のナイフを適宜持ち替えて絶え間ない攻撃を捌いていく。

「前衛まだ!?」

「バインド食らってる!」

復帰して来ない2人を見ると叩き飛ばされた際に糸を撒かれたらしく動けなくなったようだ。

「アリス!」

「私のSTRじゃ厳しいっ!」

「魔法使えよ後衛!多少のダメージは誤差だ!」

「それ言って良いの当人だけではー?!」

「文句は抜け出してから言え」

「痛いことしないでぇ!」

「怪我したら治してあげるから」

フレンドリーファイア(FF)前提!っぎゃん!」

泣き真似をするウィルにアリスが聖魔法と闇魔法を使うがダメージが入ったのみで解決に至らない。バシュ!と糸が魔法をかき消すようなエフェクトを出したのを見てアリスが閃く。

「…属性か!ザキ、嵐魔法!」

「もう試した!」

「ウィル、氷は!?」

「出ない〜!」

「ああ、もう!ナーリア!」

「殺したらごめん、ヘラム!」

雷魔法は発動が速く弱点でもあるのでヘイト稼ぎと牽制に回しているため炎魔法の範囲攻撃を声の方へ見ずに投げる。

「きゃー!!!」

「カレット」

ウィルが(おど)けた悲鳴を上げて炎の中から飛び出してきたのを見てザキが風魔法を使い炎を延焼させて自身とロウの糸へ引火させた。

「チェンジ!」

細々とした回避から大きく踏み込んで至近距離から雷魔法を撃ち込みザキとロウに前衛を任せて前線から離脱すると間髪入れずにアリスから回復魔法が飛んできた。

「炎が正解だな」

「ダメージ痛すぎるんだけど!」

なんとか立て直すことが出来た現状を見て言うと炎魔法がほぼ直撃したウィルがポーションを使って回復しながらクレームを入れてきた。

「ちゃんと抜け出してから文句言ってら」

「火魔法でも良かったんじゃない?」

「振り返ってる余裕ないから範囲魔法しか択がなかったもんで」

全体の回復を回しつつアリスが問うのに返答するとザキも下がって話に入ってきた。

「火魔法は範囲攻撃無いんだったな」

「風はあるの?」

「火以外はあるぞ」

「まじか」

驚きの情報にアリス(二属性持ち)を見ると頷いていたので本当らしい。

「獣の本能」

ちょこちょこと魔法を投げながら回復し終え遊撃に戻るとロウがスキルを発動して牛鬼の足を叩き切った。

「できるの!?」

「ダメージ蓄積とSTR値のゴリ押しだ」

「ヴォルフ族はSTR高いからね」

ウィルが驚愕の声をあげナイフを構えるがザキとアリスから水を差される。

しかし、減ったのは8本もあったうちの1本だけだがよく攻撃してきていた足だったので前衛が随分と捌きやすくなったらしくそのまま倒すことができた。

「俺たちゴリ押してばっかだな!」

「こうなるともう1人ヒーラーが欲しいけどね」

息を整えながらナイフを鞘に入れたウィルがカラッと笑うのにアリスが頷く。

「ハカセが居るじゃん」

「そうだけど今は居ないでしょ」

解体ナイフを牛鬼なら突き刺し共有ボックスに入ったアイテムをランダムで配布しながらアリスに言うも当然の文句が返ってきた。

「今回はアリスとナーリアが重労働だったな」

「ああ、よく捌いたもんだ」

大剣を背にしたロウが後ろからぽんと頭に手を置いて言うのにザキが同意した。

「あれは私がやられてたら全滅だっただろ」

「アリス1人じゃどうしようもないもんな〜」

「見捨てて逃げてるよ」

「無慈悲ぃ」

全員を順番回復していくアリスから冷たい声が出たのにケラケラとウィルが笑う。

「糸に捕まって全滅のパーティ居そうだな」

「あー、確か居たな。食料エンド」

「なにそれ」

「糸でぐるぐる巻きにされて窒息死しかけてるときにアレに喰われる」

「ひぇー」

そこそこグロテスクな死に方にウィルが半笑いで反応しながらUIを弄る挙動をするとホログラムが宙に浮き妖精の形を作った。

「なんだっけ、録画フェアリー?」

「撮影フェアリー」

「それだ」

ロウからの訂正に頷くとその撮影フェアリーが消えた。

「なんで出した?」

「ボス戦撮ってたのを止めただけ〜」

「事前申告しろ」

無言でレーションを食べていたロウがクレームを入れる。

「アリスには言ったし」

「『ボス戦撮ろっかな〜』しか聞いてないよ」

バッサリと切り捨てたアリスがヒールを終え手を下ろしたのを見て歩き出す。

「さ、帰るぞ」

「はーい」

各々から了承の返事が返ってきたのでそのまま来た道を戻りながら喋る。

「撮影フェアリーって姿消しとけるんだな」

「うん?ああ。自分の視点で撮ってたら消えるぞ」

「なんで撮ってたの?」

「…アリスって掲示板見ないのか?」

「?うん。ナーリアもじゃない?」

不思議そうに頷いたアリスがちらっと此方を見て言うが黙殺するとウィルが大袈裟な返しをした。

「リーダーが見るなら天変地異を疑うね」

「言い過ぎだろ」

「…まぁ必要なことはお前たちが教えてくれるし必要性を感じないから見ないけど」

「それで、なんで掲示板?」

ほらなと肩を竦めたウィルにアリスが傾けた首のまま問いかけると姿勢を正して口を開いた。

「ああ。――実は、俺たちの専スレが出来ています!」

「な、なんだってー」

「専スレって?」

「あー、この場合は応援スレみたいなもんだな」

知っていたのか適当なリアクションをしながら草陰から飛び出してきたバニットを叩き飛ばしたロウからの返答にふぅんと頷いたが見ることはないと予想できるのでそのまま流す。

「で、そこにあげるのか?」

「そ!獣人は良いぞってね!」

「ヘェ、良いじゃん」

快活な返事をするウィルに笑うと同じように笑い返してきた。

「獣人の地位が下がり切ってんなら上げれば良いじゃないってね!」

「マリーアントワネット?」

「女王の地位を揺らがすな」

「おみくじみたいな考え方だね」

「ああ、大凶はもう下がることはないってやつか」

「ホルスにはうへぇーって反応されたけど!」

「あいつは割と面倒くさがりだからなぁ」

その時の様子が簡単に想像出来るのに笑いながら言った。

「まぁリーダーが肯定的だし大丈夫だろ」

「チーム方針決定」

サクッと決められた方向性に首を傾げる。

「指針必要か?」

「次のアプデからプレイヤーズギルド作れるようになるらしいし考えといても良いでしょ」

「ン?もうギルド実装されるのか」

ゲーム内のtips(お知らせ)には何もなかったが当然のようにギルドを設立すると思っているウィルに聞くと大きく頷いてきた。

「初めての大型アプデがくるぜ〜!」

「FoLの公式サイトに書いてたな」

「へぇ、見てなかったわ」

メニューからネサフも出来るので直ぐに開くとお知らせ一覧の上部にでかでかと書いてあった。

「初イベはワールドレイドか」

「楽しみだよな!」

肯定の意が返ってきたところで南門に到着した。

「解散?」

「そうだな、そろそろ生身(リアル)が御飯時だし」

「おっけーい。おつかれ!」

「おつ〜」

「じゃあまたね」

ひらっと手を振ってパーティを解散した。

レーションを食べながら路地へ入り適当にすいすい進んで行く。騒めきが遠く乱雑に樽などが置かれているところに座りそのままログアウトした。

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