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下僕の予見  作者: nainai15
9/14

贈り物

一ヶ月に一度、奴隷にも休みが与えられる日がある。


もちろん、自由に出歩けるわけじゃない。

信頼された数人の従業員と一緒に、指定された街の範囲内で必要な買い物をするだけだ。


それでも、“外の空気”を吸えるというのは、奴隷にとってほんの少しの自由だった。


「おい、あれじゃないのか?)


従業員の一人が指差す先には、小さな雑貨屋があった。

ガラス窓の中には、可愛らしいアクセサリーや手作りの小物がずらりと並んでいる。


(……リオン、こういうの好きそうだな)


ふと思い浮かんだのは、いつも明るくて、ちょっとおせっかいで――

だけど、俺の一番近くにいてくれる少女の姿だった。


「すみません、ちょっとだけここに寄ってもいいですか」


「……まぁ、時間内ならいいけど、長居すんなよ?」


了承を得て、俺は雑貨屋のドアをそっと押し開けた。

ちりん、と可愛らしい音が鳴る。小さな空間に、柔らかな日差しが差し込んでいた。


棚には小さな髪留めや、色とりどりの布で作られたブローチ、そしてささやかな宝石のついた指輪まで――

高価なものではないが、どれも可愛く綺麗に見えた


(何がいいかな……あいつ、ピンクより青が好きだったっけ)


迷いに迷って、俺は一つの髪飾りに目を留めた。

小さな銀の花があしらわれている

どこかリオンの金色の髪に似合いそうだった


「これ、ください」


俺は少ない自由時間の中で、唯一の自由を使って、それを手に入れた。


***


「ノアールー! おかえりー!」


夕暮れ時、買い物から戻ると、リオンが元気よく走ってきた。

それだけで、今日一日分の疲れが吹き飛ぶ。


「どうだった? 外の空気は!」


「まあ、変わらずにぎやかだったよ。人が多くて疲れたけどな」


「ふふん、でも少し顔が明るいじゃん。何かいいことあったでしょ?」


「……まあ、ちょっとな。はい、これ」


「え?」


俺はポケットから、小さな包みを差し出す。

簡単に紙で包んだだけの、小さな贈り物。


「お前に、買ってきた。……その、いつも世話になってるし」


「えっ……プレゼント?」


リオンは目を丸くして、ゆっくりと包みを開けた。

中から出てきた髪飾りを見て、彼女の目がぱぁっと輝く。


「これ、すっごく可愛い! ほんとに、私に?」


「ああ。似合うと思って、選んだ」


「……っ、ありがとう! ノアール、大好き!」


いきなり抱きついてきたリオンに、思わずぐらりと体勢を崩しそうになる。

でも、その笑顔を見てると、何も言えなかった。


「さっそくつけてみるねっ」


リオンは嬉しそうに、髪を整えて髪飾りをつけた。


「どう? 似合ってる?」


「……ああ。びっくりするくらい」


本当に、よく似合っていた。

あの時思い浮かべた“リオンに似合いそうなもの”そのままだった。


「でもまさかノアールがプレゼントくれるなんて、びっくりだなぁ」


「……たまには、こういうのもアリだろ」


「うん! ぜったい大切にするからね!」


こんな日常が、ずっと続けばいいのに。

そう思ってしまう自分が、少しだけ怖かった。


――だって、俺たちには“来月”がある。


あの、奴隷オークションという現実が、迫っている。


でも今日くらいは、未来の不安なんて忘れて――

ただ、大切な人が笑っていてくれる今を、胸に焼きつけたかった。


「……ノアール?」


「ん?」


「これつけて、次のお休みに一緒に外に行こうよ」


「……ああ。絶対、行こうな」


だから俺は、その笑顔を守るために。

やるべきとを、、、

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