窓のない部屋 【月夜譚No.336】
そこには八人の人間がいた。私がその部屋に足を踏み入れた瞬間、十六の目がこちらをじろりと見遣る。
立ち止まりそうになるのをぐっと堪え、中に入ってしまうと背中で扉の閉まる音が重く響いた。するとすぐに、興味が失せたように視線が一斉に外れる。
ほっと息を吐き出しながら、ぐるりと室内を見渡す。そこには窓はなく、大きな暖炉で薪が燃えている。壁際には本が詰まった棚が数台置かれ、空いた壁には花の絵画が飾られていた。
中は暖かいのに、心はざわついて冷えている。これからどうなるのか、不安が膨らんで押し潰されそうだ。
きっと他の八人も、ここに連れてこられた理由を知らないのだろう。老若男女入り交じった面々は、私と同じように落ち着かない様子だ。
「さて、皆様お揃いで」
扉の音と共に入ってきた声に振り返ると、仮面を被ったタキシード姿の男が折り目正しくお辞儀をする。不気味な笑みを浮かべた仮面に不安を強めながら、私はそっと拳を握った。